—訳者あとがきより———-
本書『パウロ・コエーリョ 賢人の視点』は、すでに世界的人気作家となっていた著者が、1998年 から2005年にかけて記したジャーナルや掌編エッセイをまとめ、2006年にイギリスのハー パーコリンズ社より出版された『Like the Flowing River』の日本語訳である。
■どんな葬儀を望むのか
わたしたちの誰もがみんな
「死の瞬間」へと向かっている。
だが死がいつ訪れるのかを知る者はいない。
だからこそ周囲に気を配りながら、
「この瞬間」に感謝して過ごす義務が
わたしたちにはあるのだ。
同時に、死に対しても感謝しなければならない。
なぜなら死こそが、
わたしたちがこの生を営むなかでおこなう、
もしくはおこなうことができなかった
決断の大切さについて
考えさせてくれるものだからだ。
だからこそ自分たちが「生ける屍」として
囚われてしまうことのないよう、
人生のすべてを賭けて、
ずっとやりたかった物事に挑まざるを得ない。
好むと好まざるとにかかわらず、
死の天使はわたしたちのことを
待ち受けているのだから。
■人間のおかしさ
我が友ジェイミー・コーエンが受けた質問。
「人間の性質で、もっともおもしろいのはなんでしょう?」
コーエンは答える。
「〝自己矛盾〟ですね。
背伸びして駆け足で大人になろうとするくせに、
いざそうなったら子ども時代に戻りたくてしかたがない。
心身を病んでまで働いて稼いだ金を、
治療のためにすべて費やす。
将来のことばかり考えて
いまこのときを大切にせず、
結果として現在も未来も思うようにならない。
まるで死ぬことなど考えずに生き、
生きなかったかのように死んでしまいます」
今朝、朝食をとったあとに、読み始め、
一気に読了しました。
『アルケミスト』の著者で知られる、
パウロ・コエーリョの85編からなるエッセイです。
途中、涙がこぼれたきた箇所が
いくつもありました。
愛とやさしさにあふれた文章が
次々とくりだされています。
スペインで物乞いにお金を渡さなかったことを悔やみ、
ブラジルに帰ったあと、
再度、スペインを訪れる話。
教会の神父が出版した本をその場で買わなかったことを
悔やみ、後年、再度教会を訪れた話。
「人生はいつだって、
2度目のチャンスを与えてくれるものなのだ」
そして、
二人の息子を交通事故で失ったラビの夫婦の話。
心の片隅にひっかかったトゲのようなものを
丹念にひろいあげ、
後悔したことをきちんとやり直していくことで、
著者が、丁寧に人生を生きていることが
伝わってきました。
そして、30年仕事人生に明け暮れ、
その後の退職した自由な時間を持て余す人の話。
人生とは、どう生きても自由ではありますが、
どう生きるのか、
そんなことを深く考えることのできる
すばらしい本でした。
朝から魂と語り合う時間ができて、
本当によかったです。
ぜひ、手にとって読んでみてください。
20210627 パウロ・コエーリョ 賢人の視点vol.3087 【最幸の人生の贈り方】