世界は「関係」でできている: 美しくも過激な量子論 

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Helgoland by Carlo Rovelli
カルロ・ロヴェッリ(著), 冨永星(翻訳), 竹内薫(解説)
NHK出版 (2021/10/29)

カルロ・ロヴェッリ Carlo Rovelli
理論物理学者。1956年、イタリアのヴェローナ生まれ。ボローニャ大学卒業後、パドヴァ大学大学院で博士号取得。イタリアやアメリカの大学勤務を経て、現在はフランスのエクス=マルセイユ大学の理論物理学研究室で、量子重力理論の研究チームを率いる。「ループ量子重力理論」の提唱者の一人。

世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論

量子論の産物は、爆弾だけではなかった。

この理論が応用された対象をあげていくと……
原子に原子核、素粒子に化学結合の物理学、
固体の物理学に液体の物理学に気体の物理学、
半導体にレーザーに、
太陽や中性子星のような恒星の物理学、
原始宇宙に銀河形成の物理学などなど、
いくらでも続けることができる。

さらにこの理論のおかげで、元素周期表から
何百万もの人命を救うことができる
医療への応用に至る、自然のあらゆる分野を
理解できるようになった。

そのうえ、かつて誰一人として想像だにしなかった、
何キロメートルも離れた量子同士の相関や、
量子コンピュータ、「テレポーテーション」
といった新たな現象を予言し……
そのすべてが正しいことが明らかになった。

世界は「関係」でできている

量子論の初期の議論について、砕いて説明してみると、、、

ボーアは、太陽系のように、
原子も原子核のまわりに、
軌道上に電子がまわっていると
提唱しました。

ハイゼンベルクは、太陽系の惑星のように、
どこにいるかということを突き詰めるのはあきらめて、
原子を外から眺めたときに、
とび出す光から、中の電子が別の軌道にどう飛び移ったかを
計算できるようにしました。

シュレーディンガーは、電子は粒ではなく波であり、
雲のように、どこかに存在していて、
どこに存在しているかは確率で示すことが
できると説明しました。

この考え方は一見良さそうに見えるものの、
実際に観察される電子は、
常にある1点の位置で観測され、
確率だけでは説明することができません。

あなたは、量子論について、どんなことが知りたいですか。

20211204 世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論(1)vol.3247【最幸の人生の贈り方】

この世界は連続ではない

この式こそが、量子論の核だ。

XPPX=ih/2π

Xという文字は粒子の位置を表し、
Pという文字はその速度と質量をかけたもの
(専門用語では運動量)を表している。

iという文字は-1の平方根を表す数学の記号で、
hは、プランク定数である。

世界は「関係」でできている

 

離散的な世界として、わかりやすいものは何かなと
考えてみました。

ピアノが奏でる音楽がそれに相当するかも
しれません。

本当は鍵盤と鍵盤の間にも音はあるはずなのですが、
その音は使いませんね。

ドレミファソラシドは、黒鍵をいれたとしても
とびとびの音階です。

そして、オクターブ違う音は、倍音です。

あなたが、連続ではなく、離散的だと感じることができるものは何ですか。

20211205 この世界は連続ではない_世界は「関係」でできている(2)vol.3248【最幸の人生の贈り方】

わたしにとっての現実は他の人にとっての現実ではない

量子論は、事物がどう影響し合うかについての理論である。

そしてそれは、現在わたしたちの手元にある
最良の自然の記述なのだ。

●相互作用なくして、属性なし

●事実は相対的である

ある対象物にとって現実であるような事実が、
常にほかの対象物にとっても現実であるとは限らない。

世界は「関係」でできている

同じ花畑にいても、
私が感じる世界と、イヌが感じる世界と、
チョウが感じる世界と、トンボが感じる世界は、
まったく別物です。

自分たちの五感は、非常に限られて情報しか
認知することができません。

それをたった一つの現実として、
一義的に決めつけるのは
おかしなことだと思います。

もちろん、五感だけでなく、
赤外線やX線などの測定装置を使ったとしても
同じです。

それは、対象物との限られた相互作用を
表しているにすぎません。

なんか、そういうふうに世界を眺めてみると、
とても興味深いですね。

あなたのまわりには、どのような世界が広がっていると感じますか。

20211206 わたしにとっての現実は他の人にとっての現実ではない_世界は「関係」でできている(3)vol.3249

遠く離れた二つの量子のもつれ

二つの対象物の全体としての属性は、
三つ目の対象物との関係においてのみ存在する。

二つの対象物が相関しているという言いまわしは、
三つ目の対象物に関する事柄を表しているのだ。

量子もつれ エンタングルメントは、二人で踊るダンスではなく、
三人で踊るダンスなのである。

世界は「関係」でできている

量子もつれの現象は、私たちの五感の世界の常識とは
かけ離れていて、理解しづらいものの一つです。

これを著者は属性という考え方を
とりいれることで説明しています。

1.もつれた状態にある片方の光子とその観察者
2.もう片方の光子とその観察者

これに加えて、
3.二つの光子の属性とその観察者

量子もつれという現象は、
三番目の観察者がいてはじめて成り立つという話になります。

これを著書の中では、
ケーキと温度計や、シュレーディンガーの猫で
説明しています。

あなたは、ものごとを、複数の視点で眺めることがありますか。

20211207 遠く離れた二つの量子のもつれ_世界は「関係」でできている(4)vol.3250【最幸の人生の贈り方】

哲学、レーニン、仏教

ナーガールジュナは、
独立した存在があり得ないということを、
「空」(śūnyatāシューニャター)という
専門用語で表している。

事物は、自立的な存在でないという意味で
「空」なのだ。

事物はほかのもののおかげで、
ほかのものの働きとして、
ほかのものとの関係で、
ほかのものの視点から、存在する。

世界は「関係」でできている

『中論』は、詩で構成されているので、
解釈がさまざまにあるとのことです。

日本人により馴染みがあるのは、
『中論』よりあとに作られた般若心経でしょうか。

般若心経は、空について書かれていて、
そして、五蘊(色・受・想・行・識)についても
述べられているので、
量子論がまわりまわって、
ここに行き着いたとも感じます。

物理学と哲学、宗教は、
世界の根源を考えるとつまるところ、
繋がらざるを得ないのかもしれません。

時間も空間も絶対ではない。
物質も絶対ではない。

本当に興味深い議論です。

あなたは、自分のまわりの世界がどのように成り立っていると感じますか。

20211208 哲学、レーニン、仏教_世界は「関係」でできている(5)vol.3251【最幸の人生の贈り方】

視覚の信号は脳から目に送られる

信号の大部分は目から脳にではなく、
逆に脳から目へと向かっている。

どういうことかというと、脳は、
すでに知っていることや以前起きたことにもとづいて、
見えそうなものを予期しているのだ。

目に映るはずのものを予測してその像を作る。

その情報がいくつかの段階を経て、
脳から目に送られる。

そして、脳が予見したものと
目に届いている光に違いがあると、
その場合に限って、
ニューロンの回路が脳に向けて信号を送る。

つまり、自分たちのまわりからの像が
目から脳へと向かうのではなく、
脳の予測と違っていたものだけが脳に知らされるのだ。

世界は「関係」でできている

 

セミナーでよく話すのは、アンテナの重要性です。

街を歩いている時に、
トイレに行きたくなったら、
トイレに関する情報が飛び込んでくるはずです。

一方、その途中にポストがあったかどうかは
気づきません。

ところが、郵便を出そうとしていたら、
ポストは目に入るけれど、
公衆トイレがどこにあるかなんて、
気づきもしません。

だから、アンテナをたてておくことが大切ですよ〜〜
という話なのですが、脳の信号の流れが、
脳から目へと向かっているならば、納得です!

私がメルマガの最後で必ず問いを立てているのは、
アンテナを立てるためです。

その場で答えを出すことができれば、
それはそれでよいのですが、
答えを出せないとしても、アンテナが立つので、
勝手に脳が活性化します。

そして、ある時、答えを返してくれます。

便利な機能ですよね。

あなたのまわりに、赤いものはいくつありますか。

20211209 視覚の信号は脳から目に送られる_世界は「関係」でできている(6)vol.3252【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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