樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声
Das geheime Leben der Baeume: Was sie fuehlen, wie sie kommunizieren – die Entdeckung einer verborgenen Welt
ペーター・ヴォールレーベン(著), 長谷川圭 (翻訳)
早川書房 (2017/5/24)
ペーター・ヴォールレーベン Peter Wohlleben
1964年、ドイツのボンに生まれる。子供のころから自然に興味を持ち、大学で林業を専攻する。卒業後、20年以上ラインラント=プファルツ州営林署で働いたのち、フリーランスで森林の管理を始める。2015年に出版した『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』はドイツで70万部を超えるベストセラーを記録。34カ国に翻訳された。アメリカでもニューヨーク・タイムズ紙で絶賛され、ベストセラーとなった。2016年、さまざまなアウトドア活動を通じて、人々に森林と樹木のすばらしさに気づいてもらうため、“森林アカデミー”を開設した
長谷川圭
ドイツ文学翻訳家。高知大学学士課程(ドイツ文学・語学)およびドイツのイエナ大学修士課程(独語および英語言語学)を修了。訳書に、『さらば、食料廃棄』(春秋社)、『流れ星に祈るよりも確実に幸運を手にする方法』『女装して、一年間暮らしてみました。』(いずれも小社)などがある。ドイツ在住。
樹木たちの生活について、とても優しい視点で、なおかつ長い時間軸で書かれています。
樹木たちのコミュニケーションについて、初めて知ることも数多くありました。
環境の変化に対して、動物とはまったく異なる戦略で対抗している植物から、学ぶことはたくさんあると改めて思いました。
木の言葉
■木の言葉
アフリカのサバンナで観察された出来事がある。
キリンはサバンナアカシア(アンブレラアカシア)の葉を食べるが、
アカシアにとってはもちろん迷惑な話だ。この大きな草食動物を追い払うために、
アカシアはキリンがやってくると、
数分以内に葉のなかに有毒物質を集める。毒に気づいたキリンは別の木に移動する。
しかし、隣の木に向かうのではなく、
少なくとも数本とばして
一〇〇メートルぐらい離れたところで
食事を再開したのである。最初に葉を食べられたアカシアは、
災害が近づいていることをまわりの仲間に知らせるために
警報ガス(エチレン)を発散する。警告された木は、いざというときのために
有毒物質を準備しはじめる。それを知っているキリンは、
警告の届かない場所に立っている木のところまで歩く。あるいは、風に逆らって移動する。
同じようなことがどの森でも行なわれている。
ブナもトウヒもナラも、
自分がかじられる痛みを感じる。毛虫が葉をかじると、
嚙まれた部分のまわりの組織が変化するのが
その証拠だ。樹木はまた、どんな害虫が
自分を脅かしているのかも判断できる。害虫は種類によって唾液の成分が違うので
分類できるのだ。害虫の種類がわかったら、
その害虫の天敵が好きなにおいを発散する。すると天敵がやってきて害虫を始末してくれる。
ニレやマツは小さなハチに頼ることが多いようだ。
害虫から身を守るために、
木は必ずしも特別な緊急信号を発する必要はない。化学物質によって、動物は木が攻撃されていることや
害虫がついていることを察知できる。害虫がいるのがわかれば、それを好む動物は、
どうしようもなく食欲をかきたてられる。樹木には自分で自分を守る力も備わっている。
たとえばナラは、苦くて毒性のあるタンニンを
樹皮と葉に送り込むことができる。ヤナギも、同じような働きをもつサリシンという物質を
つくりだす。だが、そのような防衛措置がうまく働くまでには、
ある程度の時間がかかる。だからこそ、早期警報の仕組みが欠かせない。
空気を使った伝達だけが
近くの仲間に危機を知らせる手段ではない。木々はそれと同時に、
地中でつながる仲間たちに
根から根へとメッセージを送っている。地中なら天気の影響を受けることもない。
驚いたことに、このメッセージの伝達には
化学物質だけでなく、電気信号も使われているようだ。しかも秒速一センチという速さで。
人間に比べたらこれでもずいぶん遅いが、
動物の世界であれば、クラゲやミミズなど、
木々と同じような速度で
刺激の伝達をしているものがたくさんいる。木の根はとても大きく広がり、
樹冠の倍以上の広さになることがある。それによって、まわりの木と地中で接し、
つながることができる。だが、いつもそうなるとはかぎらない。
森のなかにも、仲間の輪に加わろうとしない一匹狼や
自分勝手なものがいる。では、こうした頑固者が警報を受け取らないせいで、
情報が遮断されるのだろうか?ありがたいことに、必ずしもそうはならないようだ。
なぜなら、すばやい情報の伝達を確実にするために、
ほとんどの場合、菌類があいだに入っているからだ。菌類は、インターネットの光ファイバーのような役割を担い、
細い菌糸が地中を走り、
想像できないほど密な網を張りめぐらせる。この菌糸のケーブルを伝って
木から木へと情報が送られることで、
害虫や干魃などの知らせが森じゅうに広がる。衰弱した木は、抵抗力だけでなく
コミュニケーション能力も弱まるらしい。その証拠に、害虫は衰弱した木を選んで
集中的に攻撃する。わがままな一匹狼も、
仲間からの情報が入ってこなければ、
健康であっても害虫に襲われやすくなる。しかし、農耕地などでは、植物はとても無口になる。
人間が栽培する植物は、品種改良などによって
空気や地中を通じて会話する能力の大部分を
失ってしまったからだ。口もきけないし、耳も聞こえない。
したがって害虫にとても弱い。
樹木たちの知られざる生活
『植物はそこまで知っている』では、
感染症や虫に襲われた
葉っぱ同士のコミュニケーションについて、
書かれていました。
しかし、どうやら、助け合いをしているようです。
通常、切り株は枯れたり腐ったりしてしまうものですが、
周りの木の根から養分をもらうことで、
生き続ける切り株があるそうです。
そして、どの木も同じように恩恵を受けるわけでも
ないとのこと。
枝を伸ばすときも、自分の友だちの方には、
太い枝を伸ばさない。
なんとも、親しみの感じるやりとりが
行われています。
そして、コミュニケーションは、
地上だけでなく、地中でも行われていて、
そこには菌類が媒介しているそうです。
菌類のコミュニケーションも気になります。
人工的に植林された林と、
多様性のある林に入ったときに感じる気は、
まったく異なりますね。
人工的に植林された林は、
静かでひんやりしていて、
長居する気にならないのに対して、
多様性のある林は、
そこにじっと座っているだけで、
いろいろな物音が聞こえてきて、
癒されていきます。
人間の裁量で、間伐しても、
決して樹のためになるとは限らないことも
驚きでした。
森林のあり方の奥深さを感じます。
あなたは、どのような森が好きですか。
20220815 樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声(1)vol.3501【最幸の人生の贈り方】
樹木の子育て
■ゆっくり、ゆったり
木はゆっくりと生長する。
私が調べたブナの若木では、
二〇センチの長さの枝に二五個もこぶがあった。枝の様子から察するに、
その木は少なくとも八〇歳を超えていただろう。若木はどんどん生長したがる。
一年で五〇センチほど大きくなれるほどの力をもっている。
だが、母親がそれを許さない。
子どもたちの頭上に大きな枝を広げ、
まわりの成木たちといっしょに森に屋根をつくる。その屋根を通り抜けて子どもたちの葉に届く日光は、
数字にするとたった三パーセントといわれている。その程度の光では、なんとか死なずにすむだけの
光合成しかできない。これは子どもたちのためを思った教育なのだ。
教育の手段は光をさえぎることにある。
若いころにゆっくりと生長するのは、
長生きをするために必要な条件だという。植林された木は最高でも
八〇年から一二〇年で伐採され加工されるが、
この数字に惑わされてはならない。野生の樹木は一〇〇歳前後でも鉛筆ほどの太さで、
背の高さも人間程度しかない。ゆっくりと生長するおかげで内部の細胞が
とても細かく、空気をほとんど含まない。おかげで柔軟性が高く、嵐がきても折れにくい。
抵抗力も強いので、
若い木が菌類に感染することはほとんどない。そのかわりに、子どもたちはずっと我慢を強いられる。
少なく見積もっても八〇歳を超えていると
思われる私の森のブナの若木たちは、
樹齢およそ二〇〇年の母親の下に立っている。だが、子どもたちは一方的に
我慢を強いられているわけではない。根を通じて母親が子どもたちとつながり、
糖分をはじめとした栄養を与えるからだ。いつか親の木が病気になる、
あるいは寿命が尽きるときが必ずやってくる。一方、生き残った子どもたちには、
親がいなくなってできた隙間から
希望の光が差し込んでくる。ようやく好きなだけ光合成をするチャンスがきたのだ。
しかも息を引き取る瞬間、
母親が自分に残された最後の力を、
根を通じて子どもたちに託す。環境の変化にうまく対応してくれ、と。
子どもたちはその期待に応えようとする。
まず、変化した光の量と強さに合わせて
代謝を調節しなければならない。光合成をするには、強い光に耐えられる葉も必要だ。
こうした変化には一年から三年の年月がかかる。
それが終わればいよいよラストスパート。
子どもたちは競い合うように生長を始める。
誰よりも早くまっすぐ上に伸びたものが勝者だ。
樹木たちの知られざる生活
間が考えているよりも、
樹木は長い時間軸で考えているようです。
ブナに関していえば、
野生で育つと、樹齢100年でも、
人間の高さほどのようです。
そして、長く生きるためには、
若い頃にゆっくりと育つことが
重要なようです。
実際には、人類こそが、この考え方を
理解して、実践しているともいえます。
生まれたときには、
立つことも、自分で食べることもできず、
およそ18年かけて、
成人として認められることになります。
とても長い教育期間をかけます。
日本の状況について、改めて調べてみると、
林野庁の2019年の報告書
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/attach/pdf/index-7.pdf
日本国土の3分の2に当たる約25百万haが森林。
「針葉樹が優占している森林」が50%、
「広葉樹が優占している森林」が44%。
ブナについては、過去15年間にわたって
継続的に幼木が確認されたプロットが多い地域、
同期間において幼木が全く確認されなかった
プロットが多い地域があるなど、
地域によって差がある。
森林の約54%が天然林。
森林の総蓄積量は約49億m3であり、
1960年代の約2.6倍。
人工林の多くは、
1950年代後半から70年代はじめにかけて
造成されたものであり、
人工林の5割以上において、
一般的な主伐期である50年生以上となっている。
人工林のうち97%は、針葉樹であり、
44%がスギ、25%がヒノキ、
そのあとに、マツ類が続きます。
日本の国土の3分の2を占めるにも関わらず、
国民の間で、十分議論されているかというと、
そうではない気がします。
原生林はわずかであり、
歴史的にも、政策によって、森林の利用が
大きく変わってきました。
まずは、森について、もっと知ることが
大切なのではないかと改めて思いました。
ということで、
『九千年の森をつくろう!』を
読んでみることにしました。
あなたのまわりには、どのような森がありますか。
20220816 樹木の子育て_樹木たちの知られざる生活(2)vol.3502【最幸の人生の贈り方】
秋に向けて樹が行うこと
■冬眠
野生のサクラやナナカマドなどは、
まだまだ日差しの強い時期が続いているというのに、
八月になると早くも赤く染まりはじめる。樹皮の下と根っこのタンクが満たされたので、
それ以上糖分をつくっても蓄える場所がないからだ。ほかの樹種は貯蔵タンクが大きいのだろう、
秋の終わりまで光合成を続ける。だが、最初の木枯らしが吹くころにはそれも終わり、
すべての活動を停止する。なぜ、そんなことになるのだろう。
理由の一つは水分にある。
木は液体の水しか利用できない。
水が凍ってしまうと、体内の水の通り道が
凍った水道管のように破裂してしまうため、
多くの樹種ではすでに七月ごろから活動を弱めて、
体内に流れる水の量を減らそうとする。ただし、二つの理由であまり早い時期に
活動を停止してしまうわけにはいかない。一つは、晩夏に訪れる天気のいい日を光合成に利用するため。
もう一つは、葉に蓄えられた物質を幹や根に移動させるためだ。
特に重要なのは葉緑素だ。
翌年の春に新しい葉に送り込むために、
葉緑素を成分に分解して、
どこかに保管しておかなければならない。葉緑素の分解と保存が終われば、
葉の本来の色である黄色や茶色が見えてくる。この色はカロテンからきているのだが、
警告の意味もあるのではないかと考えられている。その木には免疫力があって
充分な防御物質が分泌できるということを
意味しているので、
アブラムシの子孫などの目には脅威に映るのだろう。だから彼らは、発色の薄い病弱そうな樹木を探す。
針葉樹は、緑色の針葉をずっとつけたままだ。
毎年葉を生え替わらせようなどという気は
まったくない。だが、かわりに、不凍液の役割を
果たしてくれる物質を葉のなかに含めることにした。また、乾燥した冬でも水分が失われないように、
針葉の表面をワックスの層で厚く覆っている。樹皮も硬く、呼吸のための気孔は
とても深い部分にある。どれも水分がなくなるのを防ぐためだ。
一方、広葉樹にはそうした仕組みがない。
だからブナやナラは寒い時期がくると、
大急ぎで葉を落とす。一〇月を過ぎたころから強風が増えてくる。
樹木にとっては生きるか死ぬかの大問題だ。
そこで広葉樹は対策を立てた。
風の当たる面を減らすために、
帆を、いや、〝葉〟をすべて落とすことにしたのだ。その結果、一本につき一二〇〇平方メートルもの面積に
相当する葉がすべて地面に消えてなくなる。広葉樹が毎年欠かさず葉を落とすのは、
風に対処するためだけではなく、別の理由もある。雪だ。
枝に積もるごく一部を除いて、
降ってくる雪の大半は直接地面に落ちることになる。雪よりさらに重いのが氷だ。
翌年も使う物質を葉から幹に取り込んだら、
樹木は葉と枝のつなぎ目に分離層をつくる。あとは風が葉を吹き落としてくれるのを待つだけだ。
この作業が終わると、
木はようやく休むことができる。活動期の疲れを癒やすためにも、
休息は絶対に必要だ。睡眠不足が命にかかわる問題なのは、
樹木も人間も変わりない。広葉樹にはさまざまなタイプの倹約家がいる。
基本的に、葉を落とす前に
翌年のために蓄える物質を枝に取り込むのだが、
樹木のなかには倹約する気など
さらさらない種類もあるようだ。たとえばハンノキは、
明日のことなどどうでもいいとばかりに
緑色の葉を落とす。ハンノキは主に湿った肥沃な土地に生えるので、
毎年あらたに葉緑素をつくる余裕があるのだろう。必要となる物質は、
足元の菌類やバクテリアが
落ち葉からつくってくれるので、
それを根から吸収すればいいのだ。窒素もリサイクルする必要はない。
ハンノキに共生する根粒菌がどんどん供給してくれる。
トネリコやニワトコも同じような特徴をもっていて、
秋の森林の模様替えには参加せずに、
緑のまま葉を落とす。黄色やオレンジ色や赤は葉緑素がなくなったあとに
見られるカロテノイドやアントシアンの色だが、
同じようにのちに分解される。ナラはとても慎重な木なので、
それらすべてを貯蔵してから
茶色くなった葉だけを落とす。ブナは茶色くなった葉もまだ黄色い葉もお年、
サクラは赤い葉を落とす。針葉樹の仲間にも広葉樹のように
葉を落とすものがいる。カラマツだ。
ちなみに、トウヒやマツ、モミやダグラスファーといった
針葉樹も葉を落とす。傷んであまり役に立たなくなった古い葉を捨てるためだ。
それでもモミは一〇年、トウヒは六年、マツは三年、
葉を使いつづける。枝が区分けされていて、
その葉が何年めかもわかるようになっている。マツは毎年四分の一の葉を捨てるのだ。
樹木たちの知られざる生活
地球の水の循環は、森の力がなければ、
海岸から数百キロ程度とのこと。
はるか昔、大陸移動によって、
超大陸が出現し、大陸内部が乾燥地帯を
つくりだしました。
それによって、乾燥に強い植物や動物が
生まれることになります。
日本は島国なので、国中に水の循環が行き届き、
砂漠は生まれません。
まだ、子どもたちが小さいころ、
次男が初めて海外に行くにあたって、
「砂漠に行ってみたい」
と言いました。
そこで、私たちが選んだのは、
オーストラリア中央のウルル。
しかし、観光ガイドが一番に教えてくれたのは、
「ここは、年間わずかに降水があるので、
砂漠ではありません。」
・・・・・
翌年は、リベンジとして、
中国の敦煌に出かけました。
こちらは、本当の砂漠。
どちらも、よい思い出です。
海岸の森が大きな役割を果たすことを
改めて知りました。
大陸では、海岸から内陸に向かうまでに、
複数の国をまたがることはよくあります。
大きな視野で環境を見なくてはいけないですね。
また、冬を乗り切る対策についても、
樹によって、まったく戦略が異なることが
わかりました。
調べてみると、紅葉のときに、
1.クロロフィル(緑)の分解、
2.カロチノイド(黄)の分解のほかに、
3.アントシアニン(赤)の合成も
行われているようです。
ナナカマドは、1、2、3が同時に進行するので、
緑から赤に変わるとのこと。
また、トウカエデは、1、2、3が順次進行するので、
緑から黄色、さらに赤へ変わります。
おもしろいですね。
さらに調べてみると、
クロロフィルを分解する目的は、
光合成装置のアミノ酸を回収することですが、
クロロフィルがついたままだと、
タンパク質分解酵素が働くことができず、
また、活性酸素ができて、細胞を傷つけてしまうからだそうです。
カロチノイドは、
光を吸収しても活性酸素を作らないため
分解する必要はないそうです。
アントシアニンは、抗酸化物質なので、
活性酸素対策なのかもしれません。
こうやって知ると、紅葉の季節はさらに楽しめそうです。
あなたは、どんな紅葉を眺めるのが好きですか。
20220817 秋に向けて樹が行うこと_樹木たちの知られざる生活(3)vol.3503【最幸の人生の贈り方】
チャンスを生かすことの代償と生き急ぐ樹
■先駆種
家族からできるだけ遠く離れて生きることを好む
〝先駆種〟と呼ばれる樹木のことだ。そういう木は種子が遠くまで飛べるという
旅の手段をもっている。森の外に出て新しい生活空間を開拓するために。
広範囲の地すべり跡、
火山の噴火でできた火山灰を多く含む荒れ地、
山火事の跡地……と大きな木さえ
生えていなければどんな場所でもかまわないのだが、
それには理由がある。先駆種は陰が大嫌いなのだ。
何かの陰にいると生長する気がなくなるのだ。
代表例はヤマナラシなどを含むポプラ属だが、
シラカバやバッコヤナギも先駆種に数えられる。ブナやモミでは一年の生長をミリ単位で数えるが、
先駆種の場合、一メートルを超えることも
まれではない。その結果、かつて荒れ地だった場所に
一〇年ほどで風に葉を揺らす若い森ができあがる。そのころには樹木も花を咲かせるようになり、
次なる目的地をめざして種を飛ばす。樹木の先駆種は違う方法で自分を守ろうとする。
生長が速いのは縦方向だけではなく、
幹もかなりのスピードで太くなり、
厚くて粗い樹皮で身を包む。シラカバの場合、白くてなめらかな樹皮が裂け、
黒いかさぶたのようなものができる。それがとても硬いために、
草食動物ではとても歯が立たない。樹脂(油分)を多く含むのでおいしくもないようだ。
シラカバの樹皮にはもう一つ秘密が隠されている。
大部分がベツリンという物質でできていて、
これがシラカバ独特の白い色の原因となっている。白は光を反射する。
つまり、この色が幹を日焼けから守っているのだ。
ベツリンには色を白くする以外にも
ウイルスとバクテリアの繁殖を防ぐ効果もあり、
すでに医療やスキンケアにも利用されている。しかし、本当の驚きはその量だ。
なにしろ、全身を覆う樹皮の大部分が
防御物質でできているのだ。生長と防御のバランスをとるのではなく、
防御のためにできるかぎりのエネルギーを
惜しみなく費やしている。孤独に生きるシラカバは、
自分のことは自分で守るしかない。しかし、そんなシラカバでも体は大きくなり、
繁殖もする。背が伸びるスピードは、
森の木々よりも速いくらいだ。そのエネルギーはいったいどこからきているのだろう?
答えはシラカバの〝生き急ぐ〟性格にある。
■ヤマナラシ
ヤマナラシは、少しの風でも揺れて
葉を鳴らすことからこの名前がついた。特殊な枝についた葉が風にはためくと、
表と裏の両面に日光が当たる。おかげで、ほかの樹種では葉の裏面は
呼吸のためだけに使われるのに対して、
ヤマナラシは葉の両面で光合成ができる。こうして、ヤマナラシはほかの木よりも
多くのエネルギーをつくり、
シラカバよりも早く生長できる。外敵に対しては、
シラカバとはまったく違った手段で対抗する。忍耐強さと生長する量だ。
何年もシカやウシに食べられつづけても、
根はゆっくりと広がることをやめず、
そこからいくつもの芽を出して、
月日がたつにつれ立派な茂みをつくるのだ。このようにして、一本の木が
数百平方メートル以上の範囲に広がることもある。アメリカ・ユタ州のフィッシュレイク国立森林公園では、
ヤマナラシの一つの個体が数千年をかけて
四〇万平方メートルを超える範囲に広がり、
四万本以上の幹を生やした例が見つかっている。二〇年以内に背の高い木になる。
このような急速な生長には犠牲がともなう。
生まれて三〇年を超えたあたりから、疲労が始まり、
先駆種の生命力のシンボルともいえる
樹冠の芽の数が減りはじめるのだ。本来、それ自体は特に大きな問題ではないはずだが、
ポプラやシラカバやバッコヤナギにとっては大惨事だ。樹冠の葉がまばらになると
地面に届く光の量が増えるので、
先駆種のあとからその地にやってきた樹木──
カエデやブナやシデやモミ──が
急な生長を始めてしまう。幼少のころ、彼らは薄暗い場所でゆっくりと大きくなる。
先駆種の木陰は、カエデやブナの幼木の生長にとって、
まさに好都合な場所だった。ところが、先駆種の樹冠の葉がまばらになると、
そこに光が差し込む。これは先駆種にとっては死刑の宣告を意味する。
そこからの生長競争で、先駆種に勝ち目はない。
あとからやってきた樹木が
を浴びて足元で着実に生長し、
二〇年から三〇年後には先駆種を
身長で追い抜いてしまう。先駆種のほうは完全に力尽き、
最高でも二五メートルほどの高さで生長が止まる。まるで燃え尽き症候群だ。
一方で、ブナなどの一生はまだ始まったばかりで、
先駆種の樹冠を抜けてさらに背を伸ばす。それらが樹冠を広げて光をさえぎると、
シラカバやポプラには充分な光が当たらなくなる。たとえあとからやってくるライバルがいなくても、
先駆種の寿命は長くない。生長力の低下にともない、
菌類に対する抵抗力も弱まるからだ。太い枝が折れると、そこが格好の進入口となる。
木質の細胞は大きくて空気をたくさん含んでいるため、
樹木たちの知られざる生活
菌が繁殖しやすくなっているうえに、
孤立している先駆種は支えてくれる仲間がいないので、
幹が大きく腐食すると、嵐に襲われたときに倒れてしまう。
この箇所を読んでいる最中に、白樺の樹皮が
気になってしかたないので、早速調査。
「シラカンバ樹皮エキスとは…成分効果と毒性を解説」
https://cosmetic-ingredients.org/cell-activator/betula-platyphylla-japonica-bark-extract/
・表皮角化細胞増殖促進による細胞賦活作用
・ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用
・コラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用
すごい。。。
試してみよう!!
ということで、 シラカンバ樹皮エキスの入っている
化粧水を探し、買ってみました。
シラカバやヤマナラシで思い出したのは、
マーケティングのイノベーター理論の
イノベーターです。
とにかく、市場で誰も使っていない
新商品、新サービスを使ってみたい。
流行り出すと、もう興味はない。
という人たちです。
こういう新規開拓の気質にあふれた人たちは
必要で、それは植物にとっても同じようです。
ただし、 イノベーター理論での
イノベーターの割合は、市場の2.5%です。
他の人と異なることに価値を見出しているのですから、
多数いては、存在意義がなくなります。
ということで、千年単位の森でみれば、
長く生き残る種ではないのですが、
一つの個体が数千年をかけて
四〇万平方メートルを超える範囲に広がるって、
すごいことですね。
ちなみに、四〇万平方メートルというのは、
東京ドーム9個分くらいでしょうか。
条件がそろうと、1つの個体で
ここまで勢力を伸ばせるのですね〜
動物と植物では、
時間軸の長さと空間の広がりの軸が
大きく異なり、圧倒されます。
同時に、動物と植物は、
連携し合っているのですから、
地球の生態系というのは、
本当に興味深いものです。
さて、隣の木が死ぬことで、日が差し、
チャンスとばかりに枝を広げて、
自分の死を招くというのも、
なにか教訓的です。
木には性格があるそうです。
隣の木が倒れて、
このような隙間が空いたときに、
本来なら枝を作らない、幹の低い部分に
太い枝を伸ばしてしまい、
その結果、周りが茂って暗くなったときに、
その太い枝が折れた傷口から、
菌類が入り込み、
木の本体を命の危険にさらしてしまうことが
あるということです。
ところが、どの木もそうするわけではなく、
誘惑に負けてそうするのは、一部の木で、
ほかの木は将来のリスクを避けて、
じっとしているそうです。
機を見て、先を制することが、
必ずしも賢い選択とは限らないようです。
あなたは、先駆者型ですか、大器晩成型ですか。
20220818 チャンスを生かすことの代償と生き急ぐ樹_樹木たちの知られざる生活(4)vol.3504【最幸の人生の贈り方】
移動する樹木
■移動する樹木
そもそもどうして樹木は移動するのだろう?
慣れ親しんだ心地よい森にとどまるのは
都合が悪いのだろうか?新しい生活場所を探すのは、
気候がつねに変動を続けるからだ。樹木にとって、とりわけ影響が大きいのは
氷河期だ。何世紀にもわたって気温が下がりつづけると、
樹木はより南の土地へと移動せざるをえない。氷河期への移行がゆっくりと進行する場合、
たくさんの世代を通じてこの移動を続けられるので、
地中海沿岸の暖かい場所まで
移住することもできるだろう。だが気温が急速に低下すると移動が間に合わず、
南に行きそこねた樹種は
寒さに飲み込まれてしまう。三〇〇万年前のヨーロッパには
現存しているブナ(ヨーロッパブナ)のほかに、
葉がもっと大きいブナも存在していた。ヨーロッパブナは氷河期が訪れたときに
南ヨーロッパまで逃げることに成功したが、
動きの遅かった大葉のブナは
移住が間に合わずに死滅した。その原因の一端はアルプス山脈にある。
アルプス山脈が南へ行こうとする樹木の前に
高い壁となって立ちはだかったのだ。一気に飛び越えることはできないので、
樹木は高い山のなかにいったん定着し、
その後に反対側に下りていった。しかし、高い山の上は夏でも気温が低いので、
多くの樹種にとってはそこが墓場となったのだ。現在、大葉のブナは北アメリカ大陸の東部にしか
存在しない(アメリカブナ)。北アメリカ大陸にはアルプスのように
東西に広がって道を閉ざす山脈がないので、
生き延びることができたのだ。アメリカブナは無事に南にたどり着き、
氷河期が終わったあとに
ふたたび北に生息地を広げた。ヨーロッパブナを含むいくつかの樹木は、
アルプスを越えて安全な場所を見つけ、
現在の間氷期まで生き残ることに成功した。その少数派が、暖かくなるにつれ氷が溶けた土地、
つまり北の大地をめざして
何千年も前から今も前進を続けている。この旅の平均速度は一年で四〇〇メートルといわれている。
ブナの北上は、現在のところ
スウェーデン南部にまで達している。しかも、まだ終わったわけではない。
あるいは、人間が手出しをしていなければ
まだ終わっていなかった、と言うべきだろうか。ところで、中央ヨーロッパでは
なぜ、ブナはこれほど競争力が強いのだろうか?見方を変えると、こう問うこともできるだろう──
ほかのどんな樹種にも負けないほど強いのに、
どうしてブナは世界中に広まっていないのか?答えは簡単だ。
ブナの強みは、大西洋の影響を受ける
ヨーロッパの現在の気候があってはじめて発揮されるのだ。(ブナの生息できない)高山を除き、
ヨーロッパの気候はとても安定している。夏は涼しく、冬は暖かく、年間の降水量は
五〇〇ミリから一五〇〇ミリメートル程度。これがブナの好む環境に一致している。
樹木たちの知られざる生活
ちょうど、手元に、
『九千年の森をつくろう!〔日本から世界へ〕』が
届きました。
700ページ超の大著です。
これは、「土地本来の植生を生かすことで、
手入れ不要の森を作ろう」という
宮脇昭さん(1928-2021)の“宮脇メソッド”の森づくりを
まとめた本です。
“宮脇メソッド”は、土地本来の立体的な多層群落を
三年だけ手をかけて育て、
あとは、人の手を入れず、森を育てる方法です。
次の氷河期まで、森が自力で存続し、
台風や集中豪雨にも耐えられる森を
“九千年続く森”とこの本では紹介しています。
では、土地本来の植生をどうやって見つけるのか。
日本では、神社の鎮守の森が参考になるそうです。
そして、土地本来の植生を潜在自然植生図として
まとめました。
その植生図の凡例を見ると、
大きく3つのクラスに分けられます。
・コケモモートウヒクラス(高山、亜高山帯)
・ブナクラス(夏緑広葉樹林帯)
・ヤブツバキクラス(常緑広葉樹林域)
クラス共通としてさらに、
湿原、沼地、砂丘や火山の植生があります。
日本の潜在植生をざっくり分けると、
北海道内部が、針葉樹
北海道・東北・北陸・が、落葉広葉樹
関東以南が、常緑広葉樹
の森になるようです。
ちなみに、日本では、ブナの北限は北海道南部、
東北から中部の山地帯で多く見られます。
手を入れ続ける人手が足りないのであれば、
手を入れなくても存続する森に
置き換えていくのがよいかと考えます。
あなたの地域の古い神社には、どんな樹が生えていますか。
20220819 移動する樹木_樹木たちの知られざる生活(5)vol.3505【最幸の人生の贈り方】
樹木はどうして長生きなのか
■樹木はどうして長生きなのか
草花のように、暖かい時期に生長し、
花を咲かせて種をつくり、
それが終われば枯れて土に還る、
という生き方を選んでもよかったのではないか?草花のような生き方には
一つの大きな利点がある。世代交代ごとに遺伝的に変化する、
つまり突然変異する機会が訪れることだ。環境が変わりつづけるなか、
確実に生き延びるには突然変異による適応が欠かせない。突然変異がもっとも起こりやすいのは
交配や受精の瞬間だ。世代交代の間隔が短ければ短いほど、
適応のスピードも速くなる。適応の大切さに疑いをもつ学者はいない。
それなのに、樹木はそんなことにはおかまいなしだ。
何百年も、ときには何千年も生きつづける。
もちろん、少なくとも五年に一度は繁殖をするが、
これは本当の意味での世代交代ではない。なぜなら、一本の木が何百、何千と子をつくったところで、
その子のために生きる場所を譲り渡さないのだから。チューリッヒの工事現場で、
作業員が比較的新しく見える切り株を見つけた。それはマツの木の切り株で、およそ一万四〇〇〇年前に
そこに立っていたものだとわかったのだ。これだけでも充分に驚きに値するが、
本当の驚きは当時の気温の変化だ。わずか三〇年という短期間に気温が六度も低下し、
そして同じぐらいの期間でまた上昇していたのだ。私たちが生きる今世紀も、最悪の場合、
世紀末までに同じぐらいの気温の変化が
あるかもしれないと考えられている。前世紀も、凍てつく四〇年代、
七〇年代の記録的乾燥、九〇年代の高温、
と自然界にとってはとても厳しい時期だった。このような激しい環境の変化を樹木は
堪え忍ぶことができるのだ。その理由は二つある。
まず、彼らには優れた気候耐性が備わっていること。
たとえばヨーロッパのブナは、
南はシチリア、北はスウェーデン南部にまで
分布している。適応の最初のチャンスは子づくりの段階で訪れる。
受精した花は身のまわりの環境に合わせて
種子を実らせる。気候がとても暖かくて乾燥しているなら、
それに適した遺伝子を活性化させなければならない。ただし、そのかわりに寒さに耐える能力を
失うことも知られている。種子だけではない。
成木も環境の移り変わりに対応する。
あらゆる手を尽くしてもまだ足りない場合には、
遺伝子の出番となる。遺伝子の多様性が、樹木が環境の変化に強い
二つめの理由だ。天然の森では、同じ種類の樹木でも
遺伝子が大きく異なっている。私たち人間の場合、遺伝子の違いはとても小さく、
進化の観点から見た場合には
人類全員が親戚だといえるほどだ。一方、ブナは同じ森にあるものでも
それぞれの遺伝情報には大きな差があることが
知られている。だから環境が変わっても、その犠牲になるのは、
一部の樹木だけだ。老木の何本かは死んでしまうかもしれないが、
そのほかは生きつづける。環境が極端に変化すると、ある種の樹木の多くが
死んでしまうこともあるだろう。しかし、それは必ずしも悲劇ではない。
たいていの場合、繁殖をしたり、
樹木たちの知られざる生活
次の世代に陰を提供したりできるだけの数の
個体が生き残るからだ。
樹木はなぜ長生きなのか?
変化に適応することが最も大切ならば、
菌類で居続けるほうが有利です。
人類はなぜ長生きを選んだのか、
という問いにもつながるのかと思い、
とても気になりました。
天然の森では、同じ種類の樹木でも
遺伝子は大きく異なるとのこと、
どれくらいの遺伝子量をもっているのか、
気になりました。
先日読んだ『植物はそこまで知っている』では、
シロイヌナズナのゲノムサイズが小さいので、
遺伝子解析に使われているということでした。
では、他の樹木はどうなんでしょう?
針葉樹ですが、よいグラフが見つかりました。
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/kikan/documents/kikanffpri41-feature4.pdf
おもしろいので、他にも調査してみました。
HIVウイルス 9千塩基対
大腸菌 460万塩基対
線虫 1億塩基対
シロイヌナズナ 1.3億塩基対
イネ 3.9億塩基対
トマト 9.5億塩基対
ニワトリ 10億塩基対
ダイズ 11億塩基対
カエル 17億塩基対
カメ 22億塩基対
トウモロコシ 24億塩基対
ヒト 31億塩基対
ヒノキ 95億塩基対
スギ 110億塩基対
カラマツ 130億塩基対
ウラジロモミ 200億塩基対
サンショウウオ 900億塩基対
おっと、サンショウウオのゲノムサイズが
あまりに大きいので、
両生類が大きいのかと思ったら、
カエルはヒトの6割でした。
ゲノムサイズって、なんなのでしょうか?
気になる、気になる〜〜〜
ゲノムサイズが大きいほど、長寿なのかしら?
オオサンショウウオの平均寿命は、野生では80年。
年齢200歳以上のサンショウウオが中国で発見。
確かにサンショウウオは長生きのようです。
そして、こんな記事も見つけました。
「長老の木は森を支える遺伝子を供給していると判明!」
https://nazology.net/archives/104531
元文献:
Old and ancient trees are life history lottery winners and vital evolutionary resources for long-term adaptive capacity
https://www.nature.com/articles/s41477-021-01088-5#:~:text=These%20life%2Dhistory%20
飛びぬけた年齢を持つ古木は、
周囲に生息する木々とは最適とする環境が異なる遺伝的に
「浮いた存在」であることが示されました。
樹木の寿命は長いため非常に高齢の木では、
定着した時期と現代の環境が変化している場合があります。
これにより数百年から数千年を経た現在に生息する若い木々とは、
好む環境そのものが違っており、
これが森の中でも古木を遺伝的に特異な存在にしていたのです。
環境が激変して現在の森の主流派となる木々の生育が
困難になった場合でも、
さまざまな時代の異なる環境で生育した古木たちがいる場合、
森は速やかに回復することが可能になります。
そのため森にとって古木は、
異なる環境に適応する遺伝子を撒き散らしてくれる、
貴重な存在だったのです。
おお!!!
人間の場合、高齢になったら、
遺伝子をまきちらす(?)ことは難しいですが
経験による知恵は、伝えることができますね。
若者が現在の環境でうまくやっているときは、
支える側に回ればいいと思いますが、
思わぬ環境変化があったときには、
古い知恵が役に立つかもしれないと
いうことではないでしょうか。
歴史とか古典とかが役に立つのは、
環境が激変するときこそ、
ということかもしれません。
あなたは、長生きのメリットはなんだと考えますか。
20220820 樹木はどうして長生きなのか_樹木たちの知られざる生活(6)vol.3506【最幸の人生の贈り方】