Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
Invent and Wander: The Collected Writings of Jeff Bezos,
With an Introduction by Walter Isaacson
ジェフ・ベゾス,ウォルター・アイザックソン, 関美和 (翻訳)
ダイヤモンド社 (2021/12/8)
ジェフ・ベゾス Jeff Bezos
アマゾン創業者、元CEO。宇宙飛行のコスト削減と安全性向上に取り組む宇宙開発企業、ブルーオリジン創業者。ワシントン・ポスト社オーナー。2018年、ホームレスの家族を支援する非営利団体の支援や、低所得地域の優良な幼稚園のネットワーク構築に注力するベゾス・デイワン基金を設立。1986年、プリンストン大学を電気工学とコンピューターサイエンスでサマ・カム・ラウディ(最優秀)、ファイ・ベータ・カッパ(全米優等学生友愛会)メンバーとして卒業、1999年、タイム誌「パーソン・オブ・ザ・イヤー」選出。
ウォルター・アイザックソン Walter Isaacson
『スティーブ・ジョブズ(I・II)』(講談社)、『レオナルド・ダ・ヴィンチ(上・下)』(文藝春秋)など、著作多数。
関美和 せき・みわ
翻訳家。MPower Partners Fundゼネラル・パートナー。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。また、アジア女子大学(バングラデシュ)支援財団の理事も務めている。訳書に『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(共訳、日経BP)、『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)などがある。
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
どうするか決めるのに、
ベゾスは頭の中である演習をやってみた。それは「後悔最小化のフレームワーク」
と彼が呼んでいたもので、
その後ベゾスのリスク計算思考の一部として
有名になる思考実験だ。80歳になってその判断を振り返ったときに、
どう思うかを想像してみるのだ。「後悔の数をできるだけ減らしたいんだ」
とベゾスは言う。「80歳になったとき、これに挑戦したことは
絶対に後悔しないはずだと思った。ものすごく大きなトレンドになりそうな
このインターネットってやつに
自分が参加しようとしたことには
後悔しないだろう。もし失敗しても後悔はしないが、
やらなかったら後悔する。きっと毎日心残りがつきまとうとわかっていた」
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
私がインターネットの可能性を感じた1994年、
ベゾスは、オンライン小売店舗を開くために
高給のヘッジファンドを辞めることを
決めました。
1994年は、ようやくWebブラウザーが
出てきたばかりです。
私がどうやったら、インターネットで
情報発信ができるのだろうと
考えていたときに、
インターネット上で、世界最大の書店を
つくろうと考えていたわけです。
私が子どものころになりたいと思った夢の一つが
本屋さんでした。
しかし、世界最大の書店をつくろうなんて
思ったことは、一度もありません。
どんな夢をもとうが、自由ですが、
大きい夢をもつのもスキルの一つと
言えるでしょう。
そして、「後悔最小化のフレームワーク」も
いいですね。
私が独立を決めたときも、
60歳の自分を想像して決めました。
会社員を定年まで勤めた自分と、
独立して10年以上の実績をもつ自分の
どちらがよいか、考えたのです。
あなたは、大きな判断をするときに、どのような思考実験を行いますか。
20220120 Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings(1)vol.3294【最幸の人生の贈り方】
長期思考とお客様とキャッシュフロー
株主への手紙
■長期がすべて——1997年
私たちは長期に目を向けているため、
他社とは違う意思決定や価値判断を行う場合もあるでしょう。私たちはお客様にとことん集中し続けます。
短期利益や目先のウォール街の反応よりも、
長期的に市場リーダーとしての地位を
固めることを考えて、
投資判断を行い続けます。もし決算報告の見栄えをよくするか、
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
将来キャッシュフローの現在価値を最大化するかの
二者択一を迫られたら、
キャッシュフローを選びます。
1997年から2005年までの株主への手紙を通読し、
印象に残ったキーワードは、
「長期思考」
「お客様」
「キャッシュフロー」
でした。
とても特徴的です。
株主への手紙では、何度も何度も1997年の手紙を
振り返ります。
初心を忘れず、大切にしているということが、
長期思考を何よりも示していると考えます。
あなたが、長期的に大切にしているものは、なんですか。
20220121 長期思考とお客様とキャッシュフロー_Invent & Wander(2)vol.3295【最幸の人生の贈り方】
キンドル
■伝道者たち——2007年
2007年11月19日は特別な日になりました。
3年にわたる努力の末、
お客様にアマゾン・キンドルを
お披露目できたのです。当初から私たちが目指していたのは、
紙の本よりもいいものをつくるという、
正直なところとんでもなく大胆な目標でした。この目標は軽い気持ちで立てたわけではありません。
これまで500年ものあいだ、
ほぼ同じかたちで存在し続け、
変化のなかったものをよりよくしようというのは、
簡単なことではないはずです。デザインプロセスの最初の段階で、
私たちは書籍のいちばん大切な特徴を
突き止めました。それは、消え失せることです。
本を読んでいるときは、
紙にもインクにも糊にもとじ目にも
気づかなくなります。そうしたものがすべて消え失せて、
著者の世界だけが残るのです。キンドルも紙の本と同じように、
読書の邪魔をしないものでなければならない
と思いました。読者が著者の言葉に没頭し、
電子デバイスで本を読んでいることを
忘れられるように。ですが、紙の本のあらゆる特徴を
模倣すべきではないこともわかっていました。キンドルに組み込んだ便利な機能の中でも、
紙の本では決してできないことを
いくつかここに挙げさせてください。たとえば、本の中に知らない言葉があれば、
簡単に意味を調べられます。購入した本をすぐに探せます。
余白に書いたメモや自分で引いた下線は
クラウドのサーバーに保存されてなくなりません。読みかけのページも自動的に保存されます。
目が疲れたらフォントの大きさを
変えることができます。何より大切なのは、読みたい本を探して
手に入れるまでに1分もかからないという、
簡単便利な一気通貫の購買体験です。キンドルは長い文章を読むことを
目的とした専用ツールです。キンドルとその後継機によって、
長い時間軸ではありますが、
この世界で少しずつでも
人々の集中力が持続する方向に向かい、
私たちのツールが、このところ蔓延している
情報のつまみ食いへの対抗力になることを
願っています。キンドルは私たちの哲学がかたちになったものであり、
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
1997年の最初の株主への手紙に書いた
長期の投資姿勢を表すものなのです。
私は、キンドル端末を購入したのは、
発売されてから何年もたってからです。
紙の本が好きだったからです。
しかし、読み終わった紙の本の扱いに
困っていたことも確かです。
今では、ほとんどの書籍を
Kindle端末で読んでいます。
旅行に出かけるときも、
読みたい本をダウンロードしておけば、
以前のように何冊も本を持ちあるく必要が
ありません。
読み終わったら、すぐに端末から削除。
再読の必要があれば、
またダウンロードしてくればよいのです。
こうやって、すでに、Kindleには600冊近い本が
入っています。
「キンドルとその後継機によって、
長い時間軸ではありますが、
この世界で少しずつでも
人々の集中力が持続する方向に向かい、
私たちのツールが、このところ蔓延している
情報のつまみ食いへの対抗力になることを
願っています。」
この思いが大切ですね。
他の情報機器だと、どうしても、
情報のつまみ食いになってしまいます。
注意が散漫になるようなつくりになっているからです。
集中力を持続させるツールを
自分で選択する力も必要だと考えます。
あなたが、長期的にかなえたい夢は、なんですか。
20220122 新規事業とお客様_Invent & Wander(3)vol.3296【最幸の人生の贈り方】
永遠に拡大を続ける
●永遠に拡大を続けるために
この10年で、アマゾンよりも多くの雇用を
生み出した企業はありません。直接の従業員数は世界中で84万人にのぼり、
そのうちアメリカで59万人、ヨーロッパで11万5000人、
アジアで9万5000人が働いています。間接的に支えている人を入れると、
アメリカで200万人にのぼり、
そのうち68万人超の雇用は建設や物流や
専門サービスへの投資によって生み出され、
83万人はアマゾンで商品を売る中小企業によって
生み出されています。グローバルでは400万人に近い雇用を
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
支えていることになります。
ベゾスは、2021年7月にCEOを退任し、
後任は、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEOを
長年勤めてきたアンディ・ジャシー氏です。
本には載っていない、最後の株主への手紙から、
抜粋します。(翻訳は朝日)
https://s2.q4cdn.com/299287126/files/doc_financials/2021/ar/Amazon-2020-Shareholder-Letter-and-1997-Shareholder-Letter.pdf
この年次株主レターは、
アマゾンのCEOとして最後のものですが、
最後に最も重要なことを教えたいと思います。
アマゾンの皆さんには、
ぜひ心に留めておいていただきたいことがあります。
リチャード・ドーキンスの(並外れた)著書
『盲目の時計職人』からの一節を紹介します。
生物学の基本的な事実についてです。
「死を食い止めるということは、
努力しなければならないことです。
放っておくと——死んだらそうなるのですが——
身体は環境との平衡状態に戻ろうとする傾向があります。
生体の温度、酸性度、水分量、電位などの量を測定すると、
通常、周囲の対応する測定値とは
著しく異なっていることがわかるでしょう。
例えば、私たちの体は通常、
周囲の環境よりも高温であり、
寒冷地ではその差を維持するために
懸命に働かなければなりません。
しかし、私たちは死ぬとその働きが止まり、
温度差がなくなり、周囲と同じ温度になってしまいます。
すべての動物が周囲の温度と平衡にならないように、
それほど一生懸命に働いているわけではありませんが、
どの動物もそれに匹敵するような働きをしているのです。
例えば、乾燥した国では、
動物や植物は細胞の水分量を維持するために、
自分から乾燥した外界に水が流れ出ようとする
自然の摂理に逆らって働くのです。
もし失敗すれば、死んでしまいます。
もっと一般的に言えば、
もし生き物がそれを防ぐために
積極的に働かなければ、
やがて周囲の環境に溶け込み、
自律的な存在ではなくなります。
それが、”死ぬ “ということです。」
この一節は比喩として意図したものではありませんが、
それにしても素晴らしいもので、
アマゾンにも非常に関係があります。
私は、この言葉はすべての企業、すべての組織、
そして私たち一人ひとりの人生にも
当てはまるものだと主張します。
世界はどのような方法で、
あなたを普通にしようとするのでしょうか。
自分の個性を維持するために
どれだけの労力が必要でしょうか。
自分を特別な存在にするものを維持するためには、
どれだけの努力が必要でしょうか。
努力を継続的に、長期的に行う必要があるということを
最後に最も重要なこととして伝えているのが、
とても印象的です。
引用しなかったのですが、
立派な逆立ちを身につけようとしている人の話が
出てきました。
「2週間程度でできると思っていたら、
早々と挫折するだろう。
半年毎日練習しないとできるようにならない。」
現実的でない甘い考えは、
高い基準を殺してしまうとというところで
紹介されていました。
大風呂敷を広げるのは簡単ですが、
それを何年もかけて、実現していくのは、
簡単なことではありません。
インターネットの黎明期、
インターネットの可能性を信じて、
高給の仕事を辞め、
そして、20年以上かけて、
400万人に近い雇用を世界で生み出したなんて、
すごいことです。
あなたは、自分を特別な存在にするために、どんな努力をしていますか。
20220123 永遠に拡大を続ける_Invent & Wander(4)vol.3297【最幸の人生の贈り方】
物事を決める方法・競争
上司と部下とで意見が分かれることがある。
部下はあるやり方がいいと信じ、
上司は別のやり方を貫きたいと思っている。そうしたときは、上司が
「反対してもコミット」すべきケースのほうが多い。私はしょっちゅう「反対してもコミット」している。
「よし、私はこの案には絶対反対だが、
君たちのほうが私より現場のことをわかっている。
君たちのやり方でやってくれ。
あとになって『そら見たことか』なんて
決して言わないと約束するから」こうすれば周囲は落ち着く。
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
「反対してもコミット」って、いいですね。
もちろん、信頼があってこそのコミットです。
上司の権限で、決定することはできますが、
部下がどれくらいの情熱でコミットしてくれるかは
定かではありません。
しかし、部下が情熱をもって主張することなら、
自分は反対であろうと、その意見を尊重してみることこそ、
組織の醍醐味ではないでしょうか。
自分のコピーや、イエスマン(イエスパーソン?)ばかりの
チームなんて、組織の意義がありません。
違う見方があるからこその、
組織ではないでしょうか。
部下ではないですが、
子育てでは、ままあることです。
そのときには、「反対してもコミット」って、
いいんじゃないですか。
子どもは、自分と同じ才能でもないですし、
同じ環境でもないですし、
同じ人生の目的をもっているわけでも
ありません。
それぞれ、自分の意見の主張をするのは自由。
けれども、自分の人生に責任を持つのは、
自分であるべきです。
「勘当」というのもあるけれど、
単に懲らしめるというよりも、
見方を変えれば、応援はしないかわりに、
邪魔もしないということになるかと。
もちろん、常に応援する立場でありたいけれど、
人生いろいろあるから。
(最近、ドラマの見過ぎか^_^;)
あなたは、反対意見をどのように受け入れますか。
20220124 物事を決める方法・競争_Invent & Wander(5)vol.3298【最幸の人生の贈り方】
宇宙を目指す目的
■宇宙を目指す目的
最高の惑星は地球です。
ほかとは比べようもありません。
地球は本当に素晴らしい場所です。
宇宙に行くのはこの地球を守るのが目的です。
私たちは進歩と成長の時代に生きています。
いまは祖父母の世代よりいい生活を送れます。
祖父母はその前の世代の人たちよりも
いい生活を送ってきました。それができたのも、
大部分は豊富な資源を採って
自分たちのために利用できたからです。地球を救わなければなりませんし、
孫やその孫のために活気と成長を
あきらめてはいけません。どちらも手に入れることはできるはずです。
■はじまりの日
創業以来、アマゾンでは「はじまりの日」の精神を
肝に銘じてきました。つまり、すべてのことに初日と同じ
活気と起業家精神で取り組むということです。アマゾンは大企業ですが、
Invent & Wander――ジェフ・ベゾス Collected Writings
デイワン精神を企業DNAの柱にするよう
全員が努力すれば、大企業の規模と能力を持ちながら、
同時にスタートアップの心と精神を持つことが
できるはずです。
ベゾスが目指している宇宙戦略は、
イーロン・マスク氏が火星をめざしているのと
まったく異なる戦略ですね。
月の資源を使いつつ、
スペースコロニーを地球のまわりに作るという
アイデアです。
私たちの孫や、さらにその孫の世代のために、
一体なにが残せるのか。
自分たちの将来への希望を残すことが
何よりも大切だと、
私は考えています。
そのための選択肢を残すことも大切です。
成長という価値観のみが、
大切なのか。
春夏秋冬という四季に恵まれた日本人であれば、
1年のうち、同じように成長しつづけることはないことを
知っています。
成長しないで、外とあまり関わらない環境で、
200年以上、社会を維持した歴史もあります。
私たちは、もっと違う学びも
持っているのではないでしょうか。
私は宇宙を目指すのと別の観点で、
学びを深めてみたいと思います。
さて、ベゾスが繰り返し述べていたのは、
「毎日がはじまりの日」です。
スティーブ・ジョブズが、
「今日が人生最後の日だったら」と
毎日問いかけていたのと、
対照的でした。
私は、「日日是好日」です。
日々、自分にどういう問いかけをするのかで、
人生が形作られていくのだと考えています。
あなたは、毎日、どんな問いかけを自分にしていますか。
20220125 宇宙を目指す目的_Invent & Wander(6)vol.3299【最幸の人生の贈り方】