脳は世界をどう見ているのか: 知能の謎を解く「1000の脳」理論

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脳は世界をどう見ているのか: 知能の謎を解く「1000の脳」理論
A Thousand Brains: A New Theory of Intelligence

ジェフ・ホーキンス(著), 大田直子(翻訳)
早川書房 (2022/4/20)

ジェフ・ホーキンス Jeff Hawkins
1957年生まれ。神経科学者、起業家。神経科学とAI(人工知能)の研究を行なうヌメンタ社の共同創業者、チーフサイエンティスト。1979年にコーネル大学で電気工学の学士号を取得後、インテルのソフトウェア・エンジニアとして数年間働く。1986年にカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)で神経科学の博士課程に進んだが、大学という組織のなかで脳を総合的に研究することの壁に突き当たってシリコンバレーに戻り、1992年にパーム・コンピューティングを設立。現在のスマートフォンの先駆けとなる携帯情報端末「パームパイロット(PalmPilot)」を開発した。2002年、レッドウッド神経科学研究所を設立。2005年、同研究所をUCバークレーに移管するとともに、ヌメンタを設立。ホーキンスのアイデアはアンドリュー・エンや松尾豊らAI分野の著名人に影響を与え、各方面から称賛を集めている。他の著書に『考える脳 考えるコンピューター』(サンドラ・ブレイクスリーとの共著)がある。

大田直子 おおた・なおこ
翻訳家。東京大学文学部社会心理学科卒。訳書にドーキンス『さらば、神よ』『魂に息づく科学』、イーグルマン『あなたの脳のはなし』『あなたの知らない脳』、ムッライナタン&シャフィール『いつも「時間がない」あなたに』、リドレー『繁栄』『進化は万能である』(ともに共訳)、サックス『意識の川をゆく』『音楽嗜好症』(以上早川書房刊)ほか多数。

著者が提唱する新皮質の構造と機能について、
とても興味深いです。

独立した何千というミニコラムが、
投票で決めることにより、
1つの知覚を生み出すということが
誰の脳でも行われていることになります。

一方、人工知能や遺伝子については、
まだまだ議論すべきことがあるように感じます。

とはいえ、
「あらゆる人間が自分の脳内で起きていることを理解したら、
対立は減り、私たちの未来予想はもっと明るくなると思う。」
という著者の主張には、賛同します。

古い脳と新しい脳

■古い脳と新皮質の違い

古い脳と新しい脳のこの闘いは、
本書の根本的なテーマだ。

古い脳にはたくさんの別々の器官が含まれ、
それぞれが固有の機能をもっている。

見た目もちがっていて、
その形、大きさ、そして結合に、
機能が反映されている。

新皮質はまったくちがう。

知能の器官である新皮質は、
異なることをする何十という領域に分かれているが、
表面上はみな同じに見える。

■新皮質の特徴

現在、新皮質には六種類ではなく
数十種類のニューロンがあることがわかっている。

それでも研究者は六層構造という用語を使う。

第一層は新皮質のいちばん外側で、
頭蓋骨に最も近い。

第六層は脳の中心部に最も近く、
頭蓋骨から最も遠い。

ニューロン間の結合はほとんど垂直方向、
つまり層と層をまたがっている。

●1 新皮質の局所回路は複雑である

新皮質一平方ミリメートル(約二・五立方ミリメートル)当たり、
ニューロンはおよそ一〇万、
(シナプスと呼ばれる)ニューロン間結合は五億、
軸索と樹状突起は数キロメートルにおよぶ。

●2 新皮質はどこでも似たように見える

新皮質の複雑な回路は、
視覚野、言語野、触覚野で非常によく似ている。

●3 新皮質のあらゆる部位が運動を引き起こす

長いあいだ、情報は「感覚野」経由で新皮質に入り、
領域の階層を上がったり下がったりして、
最終的に「運動野」に下りるのだと
信じられていた。

現在、この説明は誤解を招くおそれが
あるとわかっている。

調べたすべての領域で、
動きに関係する古い脳の部位に
投射する細胞が見つかっているのだ。

脳は世界をどう見ているのか

著者の経歴がとても興味深いです。

大学時代、DNA研究で知られるフランシスクリックの
「脳について考える」を読んで刺激を受け、
脳の謎を解きたいと考えました。

インテルで脳の研究をする職に就く試みに失敗し、
MITのAI研究所でも提案は却下され、
UCバークレーでも思うようにいかず、
2年間、大学図書館で独学。

その後、シリコンバレーで起業家として成功。

パームパイロットを開発したあと、
設立企業を去り、研究所を設立。

しかし思うような研究ができなかったので、
UCバークレーに移管し、
自分自身の研究チームとして
独立系の研究会社ヌメンタを設立。

自分が思うように脳を研究したいと
格闘してきたことがわかります。

そういえば、私もパームを持っていました。

あの頃、いろいろな情報携帯端末が出ていましたが、
私が買ったのは、これだけ。

シンプルさが好きでした。

さて、脳神経科学の分野は、
現在進展のもっとも早い分野のひとつです。

大量の論文が出ていて、
素人がそれを追いかけるのは非常に困難です。

ですので、ある程度まとめられた書籍を
読む方が楽です。

この本の原著は、
A Thousand Brains: A New Theory of Intelligence
2021/3/2に出版されています。

翻訳がでてありがたいですね。

今回、おもしろいと思ったのは、
新皮質のニューロン間の結合はほとんど垂直方向であること、
新皮質約二・五立方ミリメートル当たりに
シナプスが5億もあること、
新皮質のあらゆる部位が運動を引き起こすということです。

あなたは、「健康に悪い」という思考と「おいしそうだから食べろ」という思考にどうやってつきあっていますか。

20220526 脳は世界をどう見ているのか_古い脳と新しい脳(1)vol.3420【最幸の人生の贈り方】

頭のなかの世界モデル

■マウントキャッスルの『意識する脳』

マウントキャッスルは、
脳の大部分は古い部位の上に新しい部位を
加えることで大きくなったが、
新皮質が脳の七割を占めるまでになったのは
そのやり方ではなかった、と述べている。

新皮質は同じものを、
つまり基本回路のコピーを、
たくさんつくることによって
大きくなったのだ。

新皮質の部位はどれも同じ原理で働くのだという。

私たちが知能と考えるもの──
視覚から触覚、言語、高次の思考まで──
すべて、根本的に同じなのだ。

ちがうのは本質的な機能ではなく、
何とつながっているかである。

■頭のなかの世界モデル

脳は予測モデルをつくる。

これは、脳は入力が何かをたえず予測する、
という意味だ。

脳の予測が正しいと証明されたとき、それはつまり、
脳がもつ世界のモデルが正確だということだ。

予測がまちがっていたら、
人はその誤りに注意を向けて、モデルを更新する。

■動くことで学習する

脳への入力はつねに変化している。

その理由は二つ。

第一に、世界は変化する。

第二の理由は、人が動くことにある。

脳は入力が時間とともにどう変わるかを
観察することによって、
世界のモデルを学習する。

■神経科学の二つの教義

教義1:思考、発想、知覚はニューロンの活動である

教義2:私たちが知っていることはすべて、
ニューロン間の結合に蓄えられている

脳は世界をどう見ているのか

私の理解をまとめると、、、

・新皮質は、同じものをコピーすることで
大きくなった。

・新皮質の機能は、何とつながっているかで決まる。

・新皮質の学習モデルは、汎用的なものである。

・脳は入力が時間とともにどう変わるかを
観察することによって、
世界のモデルを学習する。

・脳は常に予測しており、
動いた結果が予測が異なるとモデルを更新する。

視覚は膨大なデータを受け取りますが、
実際に脳が処理しているのは、
ごく一部で、動きがあった場所か、
能動的に探している場所だけです。

これは、常に予測が働いているからと
いうことになります。

そして、生まれつき視覚に障害がある場合は、
代わりに脳は、聴覚や嗅覚、触覚などで補います。

これは、新皮質が汎用的な学習モデルを
もっているからです。

おもしろいですね〜

ネットを検索していて、おもしろい記事を見つけました。

「ほ乳類特有の大脳新皮質は新しくなかった –
遺伝研、定説を覆す証拠を発見」
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20120323-a124/

論文はこちら。
http://first.lifesciencedb.jp/archives/4739

ほ乳類の「大脳新皮質」の上層と下層に存在する
神経細胞のサブタイプが、
ニワトリの脳にも存在することを
明らかにしたと発表した。

これはほ乳類と鳥類の共通祖先の段階、
すなわち大脳新皮質の「層構造」が
誕生するより以前から、存在していたことを
示唆しているものだ。

つまり、大脳新皮質の細胞そのものは、
ほ乳類と鳥類の共通祖先の段階で
生み出されていて、
ほ乳類で、層構造がつくられるように
なったということです。

では、層構造とは何なのか?

脳科学辞典:大脳皮質
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/大脳皮質

新皮質の6層構造は以下の層からなり、
それぞれ特徴的な細胞構築と線維連絡を有している。
第1層は、主に神経線維と樹状突起からなる層
第2層は顆粒細胞と小型錐体細胞の細胞体からなる。
第3層は中型錐体細胞の細胞体からなる。

第2層と第3層のニューロンは
同側や対側の大脳皮質へ出力し、皮質間の連絡に関わる。

第4層:小型の星状細胞からなり、視床からの入力層である。
第5層:大型錐体細胞からなる層で、脊髄など皮質下核へ出力する。
第6層(多形細胞層):視床への出力層である。

このページは、こまめに更新されているようで、
今後も変わる可能性が高いです。

脳は調べ始めるときりがないなあ。

他の哺乳類はどうなっているのか、
気になるところですが、
鯨類の脳はまったく異なった方向に
進化しているそうです。

ヒトの脳と高等哺乳動物脳の比較機能解剖学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/2/0/2_KJ00008211159/_pdf/-char/ja

マッコウ鯨の脳は左右非対称。

イルカの脳梁は発達が悪く、
左右の大脳が独立的に機能し、

半休脳で眠ることができる。

本論から、どんどん外れていってしまいそうなので、
とりあえず今日はここまで。

あなたは、外界と直接つながっていない脳細胞がどのように学習していると、想像しますか。

20220527 頭のなかの世界モデル_脳は世界をどう見ているのか(2)vol.3421【最幸の人生の贈り方】

大脳新皮質がもつ共通の回路とは

■私が記憶している重要な発見の3回の瞬間

●発見その1
新皮質は世界の予測モデルを学習する

●発見その2
予測はニューロン内部で起こる

シーケンス記憶は、ただメロディーを学習するより
もっといろいろなことに利用され、
行動を形成するのにも用いられる。

シーケンス記憶は言語でも使われる。

各ミニコラムの中では、
複数のニューロンが同じ入力パターンに反応する。

いくつかのニューロンが予測状態にあるなら、
そのニューロンだけが活動電位を発生し、
ほかのニューロンは抑制される。

結果的に、予想外の入力が到着すると、
複数のニューロンが一度に発火する。

入力が予測されていれば、
予測状態のニューロンだけが活性化する。

●発見その3 皮質コラムの秘密は座標系

位置探索と座標系は新皮質の普遍的特性であるはずだ。

脳は世界のモデルを構築するのに、
感覚入力を座標系内の位置と関連づける。

座標系があることで脳は何を得るのだろう?

まず、座標系のおかげで脳は何かの構造を
学習することができる。

第二に、座標系を使って物体を定義することによって、
脳は物体全体をいちどに処理することができる。

第三に、座標系は動きを計画して実行するのに必要だ。

哺乳類では、こうした地図ニューロンがある
古い脳の部位は、海馬と嗅内皮質と呼ばれている。

■古い脳のなかの地図

哺乳類では、地図ニューロンがある
古い脳の部位は、海馬と嗅内皮質と呼ばれている。

人間にも格子細胞と場所細胞がある。

見当識を完全に失っていないかぎり、
自分がどこにいるかの感覚がつねにある。

あらゆる哺乳類は、自分の位置を知るために
同じメカニズムを使う。

■新しい脳のなかの地図

古い脳内の格子細胞と場所細胞が追いかけるのは
もっぱら体の位置である。

それらの細胞は体がいまの環境内の
どこにあるかを知っている。

一方の新皮質は、この回路のコピーを
皮質コラム一個につきひとつ、
合わせておよそ一五万個もっている。

したがって、新皮質は何千もの位置を
同時に追いかける。

たとえば皮膚の小区画それぞれ、
網膜の小区画それぞれが、
新皮質のなかに独自の座標系をもつ。

この地図の使い方は、一般的なやり方とはちがう。

第一に、区画地図の山にはすべての地図が入っている。

第二に、自分がどこにいるか確信がなければ、
動くことによって町と位置を判断する。

最後に、このシステムにはたくさんの地図を
すばやく扱うための拡張性がある。

■■すべての知識は座標系内に保存される

この章で探るのは、脳は座標系を使って
あらゆる知識を配置し、思考は一種の動きである
という仮説である。

●1 座標系は新皮質のいたるところに存在する

●2 座標系は物体だけでなく
私たちが知っていることすべてを
モデル化するのに使われる

●3 すべての知識は座標系に対する位置に保存される

●4 考えることは一種の動きである

脳は世界をどう見ているのか

大変おもしろいです!!

ここでは2つ。

まず、脳は常に予測していて、
次はこんなのが起こるかもという予測を
立てていて、
そのニューロンは準備状態にあります。

予測通りの結果がくると、
準備状態のニューロンだけが発火して、
そのほかのニューロンはお休み状態。

しかし、予測外の結果がくると、
わさわさと多くのニューロンが発火する。

だから、予測外のことが起きると
脳はより活性化するのです。

もう一つは、大脳新皮質は、
共通して、位置探索の機能と座標系をもっている
ということ。

これは、本当にすごい発見ではないでしょうか。

同時に思い当たることがたくさんあります。

もともとは動物がどの方向に向かって動くかを
判断するために必要となった機能でしょう。

植物も光屈性や重力屈性をもっているので、
細胞そのもの性質として、あるのかもしれません。

そして、それが古い脳にも組み込まれましたが、
これはあくまでも自分の体の位置関係を
把握するためのもの。

新皮質がすごいのは、
体の部位の位置関係を把握することが
できることです。

さらには、感覚系と切り離して、
概念そのものを座標系のなかの位置関係として
とらえることができるのが、
もっともすごいことです。

トニー・ブザン先生が、
マインドマップを開発しましたが、
これは脳の仕組みを非常によく
再現しているといえるでしょう。

一つの概念そのものを
説明するのであれば、
とてもわかりやすい表現方法だと思います。

ただ、脳のほうがもっと複雑で、
概念ひとつひとつにマップをもっているので、
概念同士の関係をあらわすならば、
他の表現方法のほうが適切な場合も
あると考えます。

コンサルタントがよく使うチャートも
脳の思考方法に合っているから、
わかりやすいのですね。

さまざまな事象を2つの軸で評価し、
4象限に置くのは、
ものごとを単純化して、
地図に置き換えやすいからです。

そして、ヘレン・ケラーがなぜ、
「水」で、世界を理解できたのかも
これでよく説明できます。

視覚・聴覚を失ったときに、
それまでに視覚と聴覚を使って、
概念を結びつけていた脳内地図を
同時に失いました。

しかし、触覚での地図が、
それまでの概念地図と結び付けられた瞬間
だったのです。

水そのものの感覚と
指文字での動きと、
脳内の概念地図がつながっていることを
理解したからです。

位置探索と座標系が新皮質の普遍的特性で
あるという考え方は、非常に興味深いです。

あなたは、概念を説明するのに、どういう図を使って説明しますか。

20220528 大脳新皮質がもつ共通の回路とは_脳は世界をどう見ているのか(3)vol.3422【最幸の人生の贈り方】

脳のなかの座標系

■概念の座標系

たとえば、民主主義や素数のような概念に
手を伸ばして触れることはできないが、
それでも、私たちはそうしたことについて、
いろいろと知っている。

皮質コラムはどうやって、
感知できないもののモデルを
つくり出せるのだろう?

ポイントは、座標系が物理的な何かと
つながっているとはかぎらないことだ。

それは架空の土地の地図をつくる方法に似ている。

第二のポイントとして、概念の座標系は
コーヒーカップのような物体の座標系と、
次元の数や種類が同じとはかぎらない。

新皮質内のコラムは、
自分がどんな種類の座標系を使うべきなのか、
あらかじめわかっていない可能性が高い。

コラムが何かのモデルを学習するとき、
次元の数を含めて、
どんな座標系が適しているかを見つけることも
学習の一部なのだ。

■統合問題の解決策

モデルが何千もあるなら、
なぜ、知覚はひとつだけなのか?

われわれは答えを提案している。

コラムが「投票」するのだ。

あなたの知覚は、
コラムが投票によってたどり着いた合意である。

コラムがはっきり知らないことも多くて、
この場合、そのニューロンは同時に複数の可能性を送る。

同時に、コラムはほかのコラムから、
その推測を表わす投射を受け取る。

最も頻度の高い推測が最も頻度の低い推測を抑えて、
最終的にネットワーク全体がひとつの答えに落ち着く。

私の眼は、左右で焦点距離がまったく
異なります。

左眼は遠い焦点距離で、
右眼は近い焦点距離です。

左眼だけ、右眼だけ、両眼で、
世界を眺めたときに、
見える世界は、まったく異なります。

両眼は、左眼がよく見える部分と
右眼がよく見える部分を
うまく選び取り、違和感なくつなぎ合わせて
映像をつくります。

私は今まで、この投票は、
左と右の2つの比較投票かと思っていましたが、
そうではないんですね。

そもそも、それぞれの脳のミニコラムが
担当する視野があり、その何千というコラムで
投票が行われていることになります。

これを瞬時で行うのですから、
本当に驚きです。

さらに眼が動いても、
世界が連動して動くことはありません。

これも考えてみるとすごいことです。

カメラの手ぶれ補正にあたることを
かなりの高精度でおこなっていて、
わたしたちがぶれを認識することは
まずありません。

あなたは、脳内で投票していると感じる現象はありますか。

20220529 脳のなかの座標系_脳は世界をどう見ているのか(4)vol.3423【最幸の人生の贈り方】

知的なAIとは

■知的機械も備えるべき四つの特性

次のリストに示す四つの特性は
どれも脳が備えているとわかっていて、
知的機械も備えるべきだと
私が考えるものだ。

●1 たえず学習する

私たちは生涯、目が覚めているあいだ、
つねに学習している。

世界はつねに変化しているので、
私たちの世界モデルは変化する世界を反映するように、
たえず学習されなくてはならない。

ニューロンは新しいパターンを学習すると、
樹状突起のひとつの枝に新しいシナプスを形成する。

新しいシナプスは、
ほかの枝の以前学習されたものに影響しない。

したがってニューロンは、
何か新しいものを学習しても、
以前学んだものを忘れたり修正したりしなくてもいい。

●2 動きによって学習する

私たちは動くことによって学習する。

知能は世界のモデルを学習する必要がある。

私たちは世界のすべてを一度に
感知することはできないので、
動きが学習に必要なのだ。

動きによる学習という原理は、
数学のような概念や
インターネットのような仮想空間にも
当てはまる。

●3 たくさんのモデルをもつ

新皮質は何万もの皮質コラムで構成されており、
各コラムが物体のモデルを学習する。

新皮質の多モデル設計が柔軟性を生む。

多モデル設計を機能させるためのカギは投票だ。

●4 知識を保存するのに座標系を使う

脳内で知識は座標系に保存される。

座標系は、予測し、計画を立て、
動くためにも使われる。

思考が起こるのは、
脳が座標系内の位置を一カ所ずつ活性化して、
関連する知識が読み出されるときだ。

機械がひとつの仕事を、というか
複数の仕事でも、どれだけうまくこなすかでは、
知能のあるなしを判断できない。

そうではなく、機械がどうやって
世界についての知識を学習して保存するかで、
知能は決まる。

私たちが知的なのは、
ひとつのことを特別にうまくできるからではなく、
ほぼどんなことでもやり方を学習できるからだ。

脳は世界をどう見ているのか

人生100年時代と言われ、
10代に学んだ知識は、
そのまま一生使えないという時代になりました。

しかし、人間には、いつでも学習することができるので、
新しいことを学ぶことで、
新しいキャリアを選ぶことができます。

これは、人間の特権の一つだと考えます。

AIのディープラーニングは、
まだその域には達していないし、
そのままでは、汎用的な学習は難しいとのこと。

しかし、コンピュータと同じような道筋が
求められるというなら、
汎用AIも時間の問題かもしれません。

汎用AIに座標系が必須であるならば、
産業用ロボットのノウハウをもつ日本は
とても有利な立場にあるのではないかと
考えます。

位置把握、動きの制御、動きによる位置予測などが
産業用ロボットには求められるからです。

これらの技術を汎用的にすることで、
次世代の技術につながるとしたら、
未来がとても楽しみです。

あなたは、知的なAIにはどのような特性が必須だと考えますか。

20220530 知的なAIとは_脳は世界をどう見ているのか(5)vol.3424【最幸の人生の贈り方】

どうして脳の世界モデルはまちがう可能性があるのか

■どうして脳の世界モデルはまちがう可能性があるのか

●1 直接経験できない。

誤った信念は必ずと言っていいほど、
私たちが直接経験できないことに関す ることだ。

誰の言うことに耳を傾けるかで、
何を信じるかが決まる。

●2 反証を無視する。

誤った信念を維持す るには、
それに矛盾する証拠を退ける必要がある。

●3 ウイルス性の広がり。

ウイルス性の誤った信念は、
その思い込みをほかの人びとに広めることを
促す行動を命じる。

■知識を保存して広める

私に言わせれば、知識を保存して広めることのほうが、
遺伝子を保存して広めることより、
価値ある目的なのだ。

遺伝子によって決まる未来は、
方向性がほとんど、またはまったくなくて、
短期的目標しかない。

つまり健康でいて、子どもをつくり、人生を楽しむ。

知識の利益を最優先して設計される未来には、
方向と最終目標の両方がある。

私たちはどちらかの未来を選ぶ必要はない。

両方選ぶことは可能だ。

地球で暮らし続けながら、
地球を住みやすい状態に保つために最善を尽くし、
私たち自身の最悪の行動から私たち自身を守ろうと
努力することができる。

同時に、私たちがもうここにいない未来のために、
知識の保存と知能の存続を確実にすることに、
資源を投じることもできる。

脳は世界をどう見ているのか

著者は、遺伝子を残すよりも、
知識を残したいという主張でした。

どうなんでしょう。

自ら、核兵器で絶滅するとか、
自らの技術を制御できなくて、
環境を破壊することで絶滅するとか、
何らかの理由で遺伝子が消滅してしまったとき、
そんな生物種の知識は、誰かの役に立つのかしら?

もうちょっと賢くなりたいものです。

統合と分散の2極を螺旋状に進んでいるというのが、
私が30代のときに、IT技術の進展から
学んだことでした。

これは、IT技術に関わらず、
社会の進展にも当てはまるのではないかと
考えるようになりました。

どちらかがよいということではなく、
どちらかに進んでいるうちに
転換点に達して、
逆方向に進んでいく。

これを繰り返しているように思うのです。

そして、この動きについて書かれているのが、
何千年も前に作られた、易経でした。
 
 
一方、物理学では、
エントロピー増大の法則が時間を支配しています。

時間が存在するかどうかという議論は
いったん置いておいて。

では、なぜ秩序あるものが世の中に存在するのか。

秩序あるものが作られると同時に、
それ以上にエントロピーを増大させているからです。

そして、偶然によって、
私たちが存在している。

これもまた一つの世界の見方だと思います。

さてさて、これらの世界モデルは、
正しいのでしょうか、まちがっているのでしょうか。

あなたは、どんな未来を遠い子孫に残したいですか。

20220531 どうして脳の世界モデルはまちがう可能性があるのか_脳は世界をどう見ているのか(6)vol.3425【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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