土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話

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土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話
Growing a Revolution: Bringing Our Soil Back to Life

デイビッド・モントゴメリー(著), アン・ビクレー(著), 片岡夏実(翻訳)
築地書館 (2018/8/31)

デイビッド・モントゴメリー David R. Montgomery
ワシントン大学地形学教授。地形の発達、および地質学的プロセスが生態系と人間社会に及ぼす影響の研究で、国際的に認められた地質学者である。天才賞と呼ばれるマッカーサーフェローに2008年に選ばれる。

片岡夏実 かたおか・なつみ
1964 年神奈川県生まれ。

モントゴメリーによる土の三部作
古代文明から現代にいたる土と人類の関係を描いた『土の文明史』
土壌中の微生物の働きと人の内臓についてまとめた『土と内臓』
農業における土がテーマの『土・牛・微生物』

そして、
『土を育てる』
『ミミズと土』
も合わせて読みました。

西洋文明と緑の革命が
いかに土を破壊してきたのかを学ぶと同時に、
比較的短期間で、生きた土を取り戻ることができることも
学びました。

世界の食糧問題、気候変動、多様性などの
さまざまな問題を一気に解決できる可能性もあります。

私自身の考え方や行動もいろいろ変わりました。

とてもすばらしい本でした。

読んでみるのをお勧めします。

環境保全型農業の三原則

■茶色の革命

2014年世界保全農業会議での私の講演後の昼食で、
天才投資家ウォーレン・バフェットの息子で
農家のハワード・G・バフェットが、
茶色の革命と呼ぶものについてのビジョンを披露した。

バフェットはイデオロギー的な立場を固守せず、
有機農法を主張することも
バイオテクノロジーを推すこともなかった。

その代わり、土壌肥沃度を増進し、
それによって農家が農業用化学製品の必要量を——
そして出費を——減らせる方法を採用することを
唱えた。

■環境保全型農業の三原則

環境保全型農業は三つの単純な原理の上に成り立つ
農業体系だ。

1.土壌の攪乱を最小限にする。

2.被覆作物を栽培するか作物残渣を残して
土壌が脛に覆われているようにする。

3.多様な生物を輪作する。

こうした原理はあらゆる場所で、
有機農場でも慣行農場でも、
遺伝子組み換え作物であろうとなかろうと
適用することができる。

鋤を使うことは確実にメジャーリーグ級の
土壌攪乱なのだ。

だから不耕起への移行が
環境保全型農業の中心にある。

土壌微生物のバイオマスは、
不耕起農法へ転換するとすぐに増加する。

土壌動物相も同様だ。

商品作物の合間の季節に植えられ、
次の植えつけのときに刈られるか枯らされる被覆作物は、
多年生の雑草を抑制し、
腐養分を土壌に戻す役割を果たす。

換金作物と被覆作物の順序を
変化させる複雑な輪作は、
害虫や病原期に根を下ろす機会を与えず、
それらのライフサイクルを断ち切る。

これが今度は、旧来の農薬の使用量を減らすのに役立つ。

■除草剤と耐性

1990年代初め、ダコタ・レイクス試験農場の
ドウェイン・ベックが雑草抑制のために
輪作を利用することを提唱し始めたばかりの頃、
ALS阻害剤と呼ばれる種類の除草剤に
耐性を持つトウモロコシが登場した。

ある会議で若い農民が質問した。

新しい除草剤でどんな雑草も退治できるのに、
どうして輪作をしなくてはいけないのか?

ベックはそっけなく答えた。

雑草は進化を続けて、
新しい除草剤に出合うたびにやがて耐性を獲得すると。

するとどうなったか。

ベックと——ベックが勤務する大学の学長——のもとに
その除草剤を製造する企業から、
発言を公式に撤回することを求める手紙が届いた。

ベックは返事を書いた。

3年後にダコタ・レイクスの雑草が
耐性を獲得していなければ、
予言を喜んで撤回しよう。

それからベックは、
ALS阻害剤を何年も使っている
近隣の農地で採れた種をまいて、
推奨量の2倍を使用する実地試験を開始した。

わずか4カ月で耐性雑草が生えた。

ベクは謝罪の手紙を書かずに済んだ。

長年モンサント社は、雑草がグリホサートへの
耐性を獲得するという懸念を退けていた。

しかし1996年から2011年のあいだに、
少なくとも19種の雑草が
グリホサート耐性を獲得している。

■農業経営システムを改善するための一般原則

ベックのアドバイスは単純だ。

「自分なりに料理することだ」と彼は言う。

「アドバイスを求めることをためらってはならないが、
他人のレシピを鵜呑みにしてもいけない」。

「最良の」輪作はないことをベックは知っていた。

それは確率ゲームなのだ。

ある農場の特徴は、
自分のものとも他の誰のものとも違っている。

土壌、気候、作物が独特だからだ。

だが自然の基本原則は、
どこでも同じようにはたらいている。

1.水利用は手に入る水量と
見合ったものでなければならない。
不耕起はその点でより効率がいい。
水は植物が利用できるところまで
地面に浸透できるからだ。

2.作物の多様性と地面の被覆は、
雑草、害虫、病気を避けるために欠かせない。
したがって寒冷期および温暖期のイネ科植物と、
寒冷期および温暖期の広葉作物を輪作すること。

3.輪作の感覚と順序は一定であってはならない。
これは害虫の適応を防ぎ、
害虫の防除効果を最大に高めるためだ。
輪作で同じ作物を栽培するまでに
最低2年はあいだを空けるべきだ。

土・牛・微生物

プランターを5つしか持っていないので、
私自身の実験はとても限られるのですが、
それでも今年、コンポストの肥料とミミズだけで、
ナスとミニトマトが育ったので、
実験を続けていこうと思います。

今日は、被覆作物として、ベビーリーフのためと、
食べた後のカイワレ大根の根を
植えてみました。

豆苗は、食べたあと、同じように植える予定です。

コンポストの作成も開始しました。

毎日必ず出るのが、精米後の米ヌカとコーヒーがら。

さらに、ほうじ茶や麦茶、小豆茶の出し殻も
投入しようと思っています。

昨年は野菜や果物の生ごみも投入したら、
1週間でコンポスト1台がいっぱいになってしまい、
もう1台買い足したものの、
コンポスト2台分の肥料を使える土がないことに気づき、
今年は、コンポストもゆっくり作ろうを思った次第です。

被覆作物と残渣とコンポストで、
十分生きた土を育てられるのではないかと
期待しています。

読んでいておもしろいと思ったのは、
繰り返しの輪作パターンだと、
害虫も学んで、そのパターンに合わせて繁殖するようです。

だから、ランダムにするのがよいとのこと。

これはこれで、次に何を植えようかなと
考える楽しみができるわけで、
ずっと楽しめますね。

そして、やはり庭がほしい。

富山の父の実家は、兼業農家で、
庭からとれたての野菜をとってきたり、
庭の柿の木から、柿をもぎとってきたりしていたのが
私にはうらやましかったのだなあ。。。

本当は、庭に果物の樹も植えたい。。。

あなたは、どんなふうに作られたものを食べていますか。

20220921 土・牛・微生物_文明の衰退を食い止める土の話(1)vol.3538【最幸の人生の贈り方】

アフリカでの不耕起栽培の取り組み

■アフリカの人口

2015年現在、ヨーロッパとアメリカ大陸の
大部分を含む100カ国が、
純人口増加ゼロへの「人口転換」の節目に
至っている。

今やアフリカこそが、2050年までに
養うべき人口が10億増えるという予測を
後押ししているのだ。

一方、土地の劣化も拡大しており、
アフリカの農業は現在と未来、
両方の世代を養うという重大な課題に直面している。

■ガーナのアフリカ初の不耕起センター

コフィ・ボアが不耕起センターを設立したのは、
農家で慈善事業家のハワード・バフェットが
2007年に訪問したあとのことだ。

以来、バフェットの財団は
奨学金や学生のための費用をはじめ、
建設、備品、車両などにも支援を行い、
ボアによるアフリカ初の不耕起農業研究センターと
公開農場の設立を援助している。

営農地の収穫からの利益で
日々の業務と活動の費用が支払われる。

ボアが教えている農法は、
ドウェイン・ベックのもの——
耕さない、被覆作物を栽培する、多様な輪作を行う——
によく似ており、
それを根本的に違った地形、気候、文化に
合わせたもののようだ。

それでどのような違いが得られたのか?

収穫が倍以上になり、村は急速に変わった。

1、2年でよい結果が見られ、
農民たちのほとんどは、
今では借家ではなく持ち家に住んでいる。

だが何より、収穫が安定して増えたことで、
食糧が保障されたのだ。

■ボアの農場

有機肥料ありとなしで栽培する実験が
進行中だった。

トウモロコシの背丈にあまり差はない。

「土壌が健康なら、それほど肥料はいらない。
マルチによって健康が保てる。」

「化学製品のメーカーは農家のお金を欲しがってる。

被覆作物で雑草を抑制するということは、
いろいろな化学製品にお金を使う必要がないということだ。

お金をもっと節約できるんだ。

除草剤や化学肥料を一切やめることはないが、
『もっともっと』というやり方を捨てることだ。

目標は、なるべく使用量を減らして
多くの収穫を得ることであるべきだ」
 

「私たちがやっているのは有機農業ではない。

私たちがやっているのは、自然と共に働くことだ。

もしタマネギ畑に殺菌剤が必要な大きな問題が起きたら、
私たちは使う。

しかし除草剤や殺虫剤を大量に使う必要はない」

■渇水から作物を守る

肝心なのは、さまざまな性質を持つ
複数の被覆作物を使うことだと、
ボアは説明する。

ササゲは耐陰性があるマメ科植物で、
他の作物の株間に植えるにはもってこいだ。

タチナタマメ、フジマメ、ムクナもマメ科だが、
これらはつるになってカカオやプランテーンにからみつく。

「だから殺すのは簡単だ。
カットラスで叩き切ってやればいい。
あっという間だ」。

それが枯れて腐ると、土を肥やす。

「何はともあれ、土を覆っておくことだ。
地面に被覆があれば、
それが育む生物相が土を耕してくれ、
有機物の被覆は水の流出を減らして
土に染み込むようにする。

土壌の毛細管現象は、
水を下層土から上層土へと汲み上げているものだ。

犂を入れるとどうなる?

細孔が壊れ、下層土の水が地表へ上がってこられなく——
そして植物が吸い上げられなく——なる。

また有機物はあまり熱を伝えないので、
地面を覆っておけば蒸発も少なくなる。」

「今年は記憶にあるかぎりで
一番雨の少ない年だが、
トウガラシの苗はすべて生き延びた。

一方、耕した農家は全部枯らしてしまった。」

■肥料使用量の削減

数多くの実験を通じてボアは、
不耕起に転換した農家が、
肥料の使用量を少なくとも半分に、
被覆作物を組み合わせた場合は
もっと減らしていることに気づいた。

ボアの区画のいくつかでも、
肥料使用量を90%以上減らせることが
わかっている。

土・牛・微生物

アフリカのガーナは、奴隷貿易と金の採掘で
搾取され続けた歴史があります。

東には隣接してトーゴがあります。

私が今寄付をおこなっている子どもは、
トーゴの女の子です。

以前、トーゴの男の子とやりとりをしていたときに、
一番初めに送られてきた絵が、鍬の絵でした。

同い年の長男の生活と比べて、
大きな違いからショックを受けたのを覚えています。

どんな絵を描いてもいいと
子供たちに言ったときに、
鍬の絵を描く子供が日本にいるのだろうかと
思ったのです。

とはいえ、家族と暮らしながら、
学校に通う生活を守れたことは
よかったと思います。

資本を投入できない自給自足農家こそ、
環境保全型農業を導入することは、
とても理にかなっていると感じました。

土の微生物、小動物、被覆作物に
土を耕してもらうことで、
コストも削減し、
災害にも強い土ができます。

結果的には、収入を増やし、安定させて、
豊かになるだけでなく、
自然と共に働くことができます。

化石燃料を使うことなく、
持続的な農業で自分達を養っていけるのは、
地球にとっても何よりではないでしょうか。

あなたは、世界から貧困を減らすために、どんなことが大切だと考えますか。

20220922 アフリカでの不耕起栽培の取り組み_土・牛・微生物(2)vol.3539【最幸の人生の贈り方】

何千年も続いた東アジアの伝統農業

■土壌の炭素

世界の土壌はすでに、
少なくとも大気の二倍の炭素を保持している。

深さ3メートルまでで、
土壌は地球上の大気とすべての動植物を合わせたよりも
多くの炭素を含むと推定される。

ほとんどの土壌炭素は表面の1メートル数十センチに
保持されている。

地表に供給される有機物と、浅く張った根が
土壌中に放出する炭素が豊富な滲出液のためだ。

今日、ほとんどの耕地では長きにわたって
慣行農法が行われており、
土壌有機物は半分以下に減っている。

■慣行農法と不耕起農法+被覆作物の収益の違い

オハイオ州のデイビッド・ブラントは
過去40年間、長期的な土作りの実験を
農場規模で行ってきた。

主にブラントは
トウモロコシーダイズーコムギー被覆作物の
輪作を行っている。

群の典型的な慣行で栽培する対象圃場も
持っていた。

すべて耕起して、窒素、リンが豊富な根付肥、
ラウンドアップを与えたものだ。

こうした資材すべてで、
1エーカーあたり502ドルを投資した。

このやり方では作付面積が大きいほど
損失も多くなる。

対照的に、44年前から不耕起農法を行い
被覆作物を植えている畑では、
地代を含めても、総支出は
一エーカーあたり320ドルにしかならに。

純利益は370ドルになる。

加えてディーゼル燃料の費用も
節約している。

つまり、除草剤を半分以下、
燃料を約5分の1、化学肥料を10分の1しか
使っていないのに、慣行農家を常に上回る
収穫を得ているのだ。

■土壌の健康度ー土壌炭素

土壌の健康度を測るために
どの尺度を選ぶかと尋ねると、
研究者も農家もみなおなじ答えを挙げた——
土壌炭素だ。

土壌炭素は植物の栄養ではない。

土壌炭素それ自体は、
植物の成長に必須ではない。

それでも土壌有機物と作物収量のあいだには
密接な関係がある。

土壌有機物を増やせば、
少ない肥料で同等の作物収量を
維持することができる。

土壌有機炭素が年間1ヘクタールあたり1トン増えると、
開発途上諸国の穀物生産が
年間2400万から3900万トン増加すると
ラッタン・ラルは試算した。

コント数十年間の人口増と、
予測される食生活の変化に対応して
途上国を養うためには、
年間3100万トンの食糧を
増産する必要があるとされるが、
これはその4分の3から全部を満たして
なお余裕がある。

■アジアの農業に学ぶ

フランクリン・H・キングによる1911年の名著
『東アジア4千年の永続農業』は、
有機物を畑に戻す慣行が
アジアの農業を数千年にわたり支えてきたと主張している。

1909年、キングは生命保険を解約して、
9ヶ月にわたるアジア旅行の資金を作った。

皮肉なことに、ハーバーとボッシュが
合成窒素肥料製造法を開発したのと同じ年だった。

中国一帯では、1平方マイル(約2.6平方キロメートル)に
平均して約2000の人間と、
数百頭のウシとその2倍の豚がいた。

ざっと計算して、
一人あたりの農地はアメリカの3分の1しかない。

どうしてこんなことがアジアの農家には、
それも数千年のあいだ可能だったのだろう?

キング夫妻は横浜で
下肥を畑へと運ぶ人、ウマ、ウシの
途切れない流れを追い越しながら東京に向かった。

「なぜ都市は汚水を川か下水道に流して、
排泄物を効率よく海に運んでしまわないのか」
と通訳に尋ねた。

「こんな貴重な資材を捨ててしまうのはもったいない。」
通訳は答えた。

アジアの農地に戻される有機物は、
人間の排泄物だけではない。

ある果樹園を訪れた際、
稲わらのマルチがかけられ、
木のあいだに雑草が生えていないことにキングは気づいた。

日本の農家は、わらを野菜畑のマルチにも
使っていた。

分解されると、マルチは堆肥としてもはたらく。

堆肥とマルチは日本の農業の基礎であった。

香港の周辺の農村では、
住民が骨折って有機廃棄物を集め、
運んで堆肥化していることがわかった。

灰、し尿、畜糞は丁寧に集められ、
堆肥にされて再び作物の肥料になる。

秘密は糞の循環を閉じたことだけではなかった。

長い経験からアジアの農民は、
マメ科植物を輪作に組み込むと
土壌肥沃度が増進することを学んでいた。

収穫が近い作物の畝間のスペースに
次の作物が植えられ、
古い作物が収穫される前に
新しいものが育ち始めるというのも
よく見られる光景だった。

同じ畑で時間差をつけて複数種の作物を
栽培することは、
中国の農民のあいだでは
普通のやり方だった。

成長の段階が違ういくつかの作物が
一つの畑に同居していることに
キングは驚嘆した。

成熟の近い秋まきコムギは、
成長途中のマメや芽生えたばかりの綿花の保護になる。

混作は例外ではなく、むしろ通例だった。

土・牛・微生物

東アジアの伝統農業というのは、
何千年も持続可能な環境を保つ
すぐれた農法だったということを
改めて知りました。

子どものころ、千葉県に住んでいましたが、
近くの畑には、肥溜めがありました。

今では、どれくらいの農家が、
肥溜めを使っているのでしょう。

トイレも水洗が多くなり、
バキュームカーも見かけなくなりました。

住んでいる場所が都心になったからというのも
あるかもしれません。

最近では世界各都市で都市型農園が
話題になっています。

パリではいろいろな取り組みをしていて、
壁で栽培したり、
屋上で栽培しています。

垂直栽培の場合は、土を使わない水耕栽培で
行っているようです。

土壌を育てるという視点からは、
別の方向性にはなりますが、、、

私が好きなテレビ番組の一つが
「ザ!鉄腕!DASH!!」ですが、
新宿の大学のビルの屋上に、
池をつくり、イモリやメダカを育て、
さらに野菜や果物、きのこを栽培し、
ミツバチも飼っています。

素晴らしい取り組みだと思います。

あなたは、生きた土を増やすために、どんなことができますか。

20220923 何千年も続いた東アジアの伝統農業_土・牛・微生物(3)vol.3540【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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