2040年の日本 ⭐️4

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2040年の日本
野口悠紀雄(著)
幻冬舎 (2023/1/20)

野口悠紀雄 のぐち・ゆきお
一九四〇年東京生まれ。六三年東京大学工学部卒業、六四年大蔵省入省。
七二年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、二〇一七年九月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)などがある。

経済学者の視点での見方は、
決して明るいものではありませんでした。

また、技術的な展望については、
楽観過ぎるかなと感じました。

いずれにせよ、
「すべての国民が、未来の問題を
自分自身のこととして意識するしかない。」
という著者の主張には、大いに同意します。

そして、次世代を支えていくのが、
シニア人材の役割だと考えます。

日本の経済成長率は

1%成長できるかどうかが、日本の未来を決める

■1 なぜ経済成長が必要なのか

高齢化が進む日本では、賃金が増加しないと、
社会保障を支えるための負担率が著しく高くなる。

■2 少子化の下で1%成長を実現できるか

OECDの予測では、2020年から2030年までの
年平均実質成長率は0.9%だ。

日本政府の財政収支試算は、
2%を超える成長率を予測している。

■3 高い成長率見通しは、深刻な問題を隠蔽する

日本政府のさまざまな長期見通しは、
非現実的に高い成長率を見込むことによって、
問題の深刻さを隠蔽している。

財政収支試算には高成長シナリオが示されているが、
これは到底実現できないものだ。

そこで示された収支バランスも、実現されていない。

■4 日本経済の長期的な成長率を予測する

人国の高齢化によって、労働力人口が減少する。

平均年率で言えば、、マイナス0.7〜1.0%程度だ。

女性と高齢者の労働力率の向上で、
これをマイナス0.5%程度に抑えることが可能だろう。

他方で、資本ストックの増加率は、ほぼゼロだ。

そこで、技術進歩、とくに「労働増大的技術進歩」が
経済成長を決める。

これは、主としてデジタル化の進展によって決まるだろう。

これができれば、実質1%程度の成長が達成できる。

ただし、2%の実質成長は、難しい。

■5 出生率低下は日本の将来にどんな影響を与えるか

日本の出生率が、政府がこれまで想定していたより大幅に低下し、
歴史上最低値となった。

しかし、20年後程度を問題とする限り、
労働力人口などには、あまり大きな変化はもたらさない。

それより、女性や高齢者の就業率を引き上げるほうが重要だ。

2040年の日本

女性の就業については、内閣府の男女共同参画白書が
よくまとまっています。

令和4年版の特集
「人生100年時代における結婚と家族~
家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」
は、ここ40年の日本の変化がわかりやすく書かれています。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/honpen/b1_s00_00.html

とくに昭和の時代から比べると、家族と人生の姿について
多様化したということがよくわかります。

ここでは、課題として以下のことが書かれています。

長い人生の中で経済的困窮に陥ることなく、
尊厳と誇りをもって人生を送ることができるようにするために
優先的に対応すべき事項。

  1. 女性の経済的自立を可能とする環境の整備
  2. 世帯単位から個人単位での保障・保護/無償ケア労働を担っている人への配慮
  3. 早期からの女性のキャリア教育
  4. 柔軟な働き方を浸透させ、働き方をコロナ前に戻さない
  5. 男性の人生も多様化していることを念頭においた政策

女性が働きやすくするために、
男性も働きやすくすることが大前提かと思います。

多様化しているというのは、豊かさの表れだと考えます。

また、個人の努力と責任だけに寄せるのではなく、
社会全体で支え合うことは大切だと思います。

無償ケア労働の価値を社会全体が
もっと認識して、尊重する必要はあると思います。

そして、もっと効果的なのは、高齢者の就業ではないでしょうか。

高齢者の就業については、
総務省統計局がよくまとめています。

「高齢者の就業」
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1322.html

高齢就業者数は、18年連続で増加し、909万人と過去最多。

70歳以上の就業率は、確実に増えています。

健康でないと、就業できないので、
よいことではないでしょうか。

図8 主な産業別高齢集合者数および割合
(このグラフの目盛りの取り方は、あまり適切ではない)
を見ると、農業、林業は、高齢者の就業率が、
半数を超えています。

経済効果だけを考えると、
一次産業は経済効率が悪いように見えるかもしれません。

しかし、国の根幹を支えるものであり、
私たちの生活、環境に大きく影響を与える産業です。

一方、情報通信業の2.3%も低すぎるかと思います。

高齢者が働く場を増やしていくことは、
とても大切だと考えます。

そして、現在の政府の経済見通しが甘くて、
問題の深刻さを隠蔽しているということは、
覚えておいたほうがよいことだと考えます。

あなたは、女性と高齢者が働きやすい社会にするために、何が必要だと考えますか。

20230217 2040年の日本_日本の経済成長率は(1)vol.3687【最幸の人生の贈り方】

日本で唯一伸びる産業とは

超高齢化社会では誰もが要介護になる

85〜90歳では、ある人が要介護・要支援になる確率は5割だ。

だから、夫婦のどちらも要介護・要支援にならない確率は
25%でしかない。

90歳以上になると、要介護・要支援になる確率は78.2%だ。

だから、夫婦のどちらも要介護・要支援にならない確率は
4.75%でしかない。

医療・福祉が最大の産業となる20年後の異常な姿

医療・福祉分野で必要な就業者は、2040年で約1000万人。

他の産業が縮小するため、日本の経済構造は大きく変わる。

2040年の日本

寿命が伸びても、健康寿命が伸びないと、
自分が思っているような老後を送ることができません。

2022年版「高齢社会白書」によると、
日常生活に制限のない期間(健康寿命)ついて、
2010年と19年を比較したところ、
男性は2.26年伸び72.68年、
女性は1.76年伸びて75.38年です。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_2_2.html

平均寿命の伸びと比べても
大きいとのこと。

とはいえ、平均寿命と健康寿命の差は、
男性で8.73年、女性で12年。

まだまだ長いと感じます。

健康寿命が伸びることは、自分にとっても、
まわりにとっても、社会にとっても重要なことです。

最優先で取り組む価値はあると思います。

そのために自分でできることは
いくらでもあります。

というよりも、それぞれが自分で取り組む必要が
あるでしょう。

習慣を変えていく必要があるので、
この分野のゲーミフィケーションは、
かなり有効ではないかと思います。

『リングフィット アドベンチャー』は、
とてもよくできたソフトだと感じました。

こういうところは、日本の得意な分野ではないですか。

介護される将来を憂うるよりも、
健康な体を維持するための生活習慣を
どうやって確立するかに、
思考と行動を費やしたいものです。

あなたは、健康寿命を伸ばすために、どんなことが有効だと考えますか。

あなたは、健康寿命を伸ばすために、どんなことが有効だと考えますか。

メタバース・自動運転・脱炭素・量子暗号

量子コンピュータと量子暗号とは何か

現在のインターネットの通信は、
公開鍵暗号によって安全が守られている。

しかし、量子コンピュータが発達して
計算速度が飛躍的に向上すると、
このシステムが破綻する危険がある。

また、ブロックチェーンに記録されたデータが
改ざんされる危険もある。

ただし、量子コンピュータでも解くことができない
暗号が開発されつつある

■■「格子暗号」

「格子暗号」(Lattice-based Cryptography)は、
安全度を飛躍的に高めた公開鍵暗号である。

格子暗号としては、いくつかの方式のものが
考えられている。

■■「量子鍵配送」

「量子鍵配送」(Quantum Key Distribution: QKD)では、
公開鍵暗号とは異なり、
暗号化も復号も同一の秘密鍵で行う。

そして、秘密鍵を相手に送り届けるときに、
盗聴されたかどうかを確認できる形で伝送する。

具体的には、秘密鍵を運ぶ媒体として
光子の状態を利用する。

秘密鍵の情報を光子の状態として表し、
光ファイバーなどのチャンネルを通じて
受け手に送る。

光子などの素粒子の状態を外から観察しようとすると、
状態が変わってしまう。

したがって、第三者によって盗聴されて
再送信された場合には、光子の状態が変わってしまう。

送信者と受信者の間でデータを照合し、
食い違いが一定以上あれば、
盗聴があったことが分かる。

その場合には、やり直す。

量子鍵配送は、政府や軍事機関などで
すでに利用されている。

また、欧米や中国では、ベンチャー企業などを中心に、
金融・情報分野で商用化されている。

ただし、現時点では、光子の伝送のために
専用の光ファイバーや大がかりな専用装置が
必要になるので、コストが高くなる。

そこで、宇宙では光子はほとんど減衰しないことを利用して、
人工衛星を経由して送ることが考えられている。

これが実現すれば、大陸間でも
量子鍵配送が可能になる。

2040年の日本

この本で参照されている技術関連の予測は、
令和2年版科学技術白書 
2040年の未来予測-科学技術が広げる未来社会-(Society 5.0)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202001/detail/1421221_00005.html
を元にしています。

令和3年版、令和4年版の科学技術白書も
公開されていますが、未来予測については、
記述がないので、令和2年版のものが最新です。

リストが長いので、転記しませんが、
興味深い内容もたくさんあるので、
一度のぞいてみてください。

場所を限定せず操作できる自動運転システムについては、
レベル5の自動運転は
科学技術的実現時期が2030年
社会的実現時期が2034年
と予測されていますが、
楽観的な予測かなとは思います。

『AI2041人工知能が変える20年後の未来』の未来6で
描かれているような状況くらいが、
現実的な気がします。

つまり、スマート道路でのみ、
レベル5の自動運転車が走行するという状況です。

スマート道路の建設がどれくらいのコストで実現するか、
維持、更新するのにどれくらいかかるかは、
これからの課題だと思いますが、
実現するのは、高速道路からでしょう。

本当に効果が期待されるのは、
人口密度の低い地方だと思いますが、
コスト回収の観点からは、
後回しになる可能性が高いのではと考えます。

著者は、完全自動運転により、
都市の土地活用と地方の土地の価値が変わることにより
地価への大きな影響があるとのことですが、
私はそうなるのはまだまだ先のことであり、
中期的には、都市と地方の利便性の格差は
広がる方が先ではないかと考えます。

あなたはどのように考えますか。

量子鍵配送は、光子の性質を利用した、興味深い技術ですね。

しかし、実用にあたっては、量子鍵配送については、

・ハードウェアベースなので、柔軟性に欠ける。

・信頼できる中継機が必要であり、
インフラコストとインサイダー脅威による
セキュリティリスクが発生する。

・サービス拒否攻撃(DoS攻撃)が重大なリスクである。

などの問題点も提起されています。

一方、宇宙-地上間の量子暗号通信実験を、
2022年に中国が完了しています。

これにより、1000km超の量子鍵配送を
達成したとのことです。

この分野の技術発展も目が離せません。

あなたは、2040年までに達成する技術の中で、どれが優先順位が高いと考えますか。

20230219 メタバース・自動運転・脱炭素・量子暗号_2040年の日本(3)vol.3689【最幸の人生の贈り方】

未来に向けての人材育成

勉強しない日本の学生と、
死に物狂いで勉強するアメリカの学生

日本人は大学入試までは必死に勉強するが、
それ以降は勉強しない。

それは、日本企業が専門能力を評価しないからだ。

アメリカでは、大学や大学院での成績で
年収が決まるため、学生は必死に勉強する。


われわれは、未来に対する責任を果たしているか?


本書も、残念ながら、
日本の未来を黄金時代として
構想することはできなかった。

経済規模が10倍になるという壮大な話ではなく、
成長率が1%なのか2%なのかという類の
「虫めがねレベル」の議論しかできなかった。

未来は与えられうものではなく、
選択し、主体的に作っていくものだ。

しかし、本書においては、
日本が復活するイメージを明確な形で
提案できなかった。

これは誠に残念なことだ。

そうできなかったのは、政治家や官僚が未来に対して
まったく無責任であると、日々のニュースによって
思い知らされているからだ。

多くの政治家にとって、
次の選挙で当選するかどうかが最大の関心事だ。

官僚にも同じようなバイアスがある。

在職期間は2、3年間だ。

その結果、財源の裏づけがない
「バラマキ施策」が人気取りのために行われる。

基本的には、すべての国民が、未来の問題を
自分自身のこととして意識するしかない。

1930年代後半から40年代前半に
日本を背負っていた世代は、
日本を無謀な戦争に引きずり込んだあげく、
われわれを「焼け跡」という廃墟の中に投げ出した。

われわれは、そのことに強い怒りを抱いていた。

われわれより少し上の世代が、日本を再建した。

われわれの世代は、下働きとしてそれを手伝っただけだが、
未曾有の経済成長という成功体験を共有した。

では、われわれの世代は、未来への責任を果たしたか?

残念ながら、失敗した。

それは、日本編の実質的な価値が、
1995年からの約30年間でほぼ3分の1に下落したという事実が、
何よりも雄弁に物語っている。

世界における日本の地位は、いまや、
1970年代にまで逆戻りしてしまった。

われわれの世代はまた、次世代の教育を怠った、
その結果、日本人の資質が目もあてられないほど劣化した。

2040年の日本

著者は
「日本企業が専門能力を評価しないから、
日本の学生は勉強しない」
と書いていますが、
そうではなくて、日本企業は、
大学教育にあまり期待できず、
新入社員を入社後教育するから、
重きを置いていなかったのです。

私は、バブル入社の時代ですが、
新入社員教育は、OJTを含めて、
1年以上ありました。

プログラミング言語、
システムの見積もり、設計、開発、テストを
いちから学んだのは、
入社してからです。

大学でも授業でプログラミング言語を学びましたが、
初歩の初歩でしたし、
研究室で使ったプログラミング言語は、計算用です。

業務アプリケーションを設計することは
できません。

となると、大学で何を学んだのか、
重要ではない。

当時の新卒採用は、そう考えていました。

現在の日本の大学で教えている内容が、
社会でどれくらい役に立つのでしょうか。

時代が大きく動こうとしている中、
大切なのは、自ら学ぼうとする姿勢と
学び方を知っていることかなと思います。

学ぼうと思えば、昔より簡単に
知識や情報を得ることができます。

その中で、自分が大切だと思う知識を身につけることが
大切だと考えます。

しかしながら、もっと大切なのは、
人間としてのありかたではないでしょうか。

この軸がぶれていると、
外に見えるものだけに気をとられ、
本当に大切なものを失ってしまうことになります。

本当の幸せと豊かさとは何か。

もしかしたら、私たちよりも次世代の子どもたちのほうが
わかっているのかもしれません。

私たちの今までの価値観を一旦手放し、
新しい価値観を作り上げることが、
日本の求められている役割ではないかと
私は考えています。

あなたは、未来の世代に対して、どのようなことができると考えますか。

20230220 未来に向けての人材育成_2040年の日本(4)vol.3690【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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