戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

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戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く
金巻 龍一(著),
東洋経済新報社 (2021/10/29)

金巻 龍一 カネマキ リュウイチ
コンサルティング会社GX代表取締役
GX代表取締役
元日本IBM常務執行役員
アクセンチュア、PwCコンサルティング、IBM戦略コンサルティンググループ、GCAなどにおいて、20年超にわたり戦略コンサルティング業務に従事。専門は、新規事業開発、B2B営業改革、グローバル戦略、ポストマージャーインテグレーション(PMI)、グローバル人材戦略。2002年のIBMによるPwCコンサルティング買収の際、PwCコンサルティング側統合リーダーを務め、当事者として経営統合を体験。その後、日本IBMにて、10年間にわたり「戦略コンサルティンググループ」を統括。2012年からは日本IBMにおけるグローバリゼーションサービス責任者を兼任。2013年IBM卒業後、内田洋行の特別顧問就任。ワークスタイルコンサルティングの立ち上げに従事。2014年GCA参画。「戦略・PMIサービス」事業の立ち上げに従事。2018年GCA退職後、新規事業開発の専門会社としてGXを設立し、現職。早稲田大学理工学部卒業、同大学大学院修士課程修了。

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

■判断と決断

「判断」の場合、そこに合理的な理由があり、
ある意味、論理的にその決定の正しさが
周りの人にも理解できるような場合だと思っている。

一方、「決断」のほうは、
どっちに転んでも一長一短があり、
どちらに決めてもリスクが残る。

だから、誰かが「リスクを負って」
どちらかに決めなければならないものだと思う。

■あるべき姿ではなく、野心

「あなたの会社のあるべき姿はなんですか?」

この質問の主旨は、すごく重要で意義あるものだと思う。

ただし、いきなりそんな大上段な質問をされて、
それにスラスラと答える人がどれだけいるだろうか。

相手の考える「あるべき姿」は確認したい。

でも「あるべき姿」という言葉を出すと、
どこかよそ行きの回答が返ってくるかもしれない。

そんなとき筆者は、こんな問いかけをすることがある。

「(経営トップである)あなたの個人的な野心はなんでしょうか?」

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

「戦略コンサルティングの8割は
経営者に会って40分で浮かぶ」
「経営者は、1、2枚の資料で議論したいのではないか」
というところから、話が始まります。

そして、この本のタイトルが、「戦略質問」。

私も「問いかけ」がとても大切だと思っています。

質問の質をより高くできることを期待して、
この本を数回に分けて、メルマガでとりあげます。

あなたが最近、リスクをとって、決断したことはなんですか。

20220222 戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く(1)vol.3327【最幸の人生の贈り方】

40分少人数のウォールーム

■ウォールーム形式による経営戦略立案

[10個の質問]

<すべてに即答できるか?>
▶︎YES → アクション
▶︎NO
 ・どこまでが自明で、
 ・どこが仮説で、
 ・どこが要調査項目か?

<課題部分の取り扱い方法検討>
・調べごと(調査すれば答えがわかる)
・考えごと(答えはなく、考える)
・決めごと(ポジション=リスクをとる)

[ミッシングパーツの補填]
打ち手集
・マネジメントプラクティスライブラリー
・ビジネスパートナーリスト

■質問とは、なんのためにおこなうのか。

ウォールームでは、考えるきっかけになる効果を狙って
設計した「非日常な質問」をしながら、
経営者の自問自答のきっかけをつくったり、
思いを引き出したりしている。

■セントラルクエスチョン

「現在の組織にある課題がすべて解決したとしましょう。
あなたの会社は何が実現できているのでしょうか?」

それらの解決のあかつきには、
組織が社会にどのようなインパクトをもたらし、
そこに所属される社員の方々に
どのような恩恵がもたらされるのか、
等々をお考えいただくと、安心できたり、あるいは
そこから漏れている重要な課題が見つかるかもしれない。

「もし、あなたの会社が、今、突如この世から消えたら、
誰が悲しむでしょうか?」

この問いかけは、筆者が
「その会社のビジョンが今も正しく機能しているか」を
確認するためのものである。

「あなたの会社や事業が、このままの状態だとした場合、
その「X-Day(終焉)」はいつ頃来ますか?」

X-Dayとは「特別な日」。
ここではその事業が終焉を迎える日である。

ここでいっている事業は
業績が右肩下がりのものではなく、
むしろ右肩上がりの絶好調のものを指している。

別に終焉がいつになるかはあまり問題ではない。

「終焉がある」という事実の再確認と、
「それがどのようにしてくるのだろうか」という発想が、
ゼロベースの思考を生むのを狙っている。

もっと極端なケースでは、
「この事業が安泰なのは、
おおよそあと5年くらいでしょうか?」という感じで
こちらが数字を入れて問いかけるときもある。

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

IBMがバリュージャムという全世界の社員に
新しいバリューを作り出すよう呼びかけたときの質問が
「もし、あなたの会社が、今、突如この世から消えたら、
誰が悲しむでしょうか?」
という質問でした。

存在意義を問いかける、厳しい質問ですね。

大切なのは、今の価値を問うことではなく、
ビジョン、その中でもミッションが
今も正しく機能しているかを問うことが目的です。

この問いは、主語を置き換えるだけで、
いろいろ使えますね。

もし、あなたの事業が、・・・
もし、あなたの仕事が、・・・
もし、あなたのメルマガが、・・・

今やっていること、続けていることについて、
考えるきっかけになると思います。

とはいえ、別に誰も悲しまないことも
あると思います。

例えば、私が、ブログ記事にアップしている「易経」

何千年も語り継がれ、
孔子をはじめとした賢者たちが議論したものを
私がまとめ直すことに、
どれだけの意義があるのか?

普通に考えたら、今は誰も悲しまないと思います。

が、私は、未来の自分が悲しむような気がしているのです。

だから、未来の自分のために、続けています。

こんなことを考えることだけでも
いいのではないでしょうか。

根っこがわかれば、続ける理由が明確になります。

とてもよい質問だと思います。

もし、あなたのやっていることが、今、突如この世から消えたら、誰が悲しむでしょうか?

20220223 40分少人数のウォールーム_戦略質問(2)vol.3328【最幸の人生の贈り方】

ビジョン・ミッション・ディレクション・バリュー

■ビジョン

筆者は、あくまでも個人的にだが、
このビジョンについて、
「ミッション」「ディレクション」「バリュー」
の3つで構成されていると考えている。

■企業のミッションには寿命がある

最初のミッションについては、
直訳すれば「使命」となる。

ただ、その企業が社会から必要とされる理由は、
永遠に続くものでもない。

「あなたの会社の社員にお子さんがいるとして、
お子さんはお父さんお母さんの仕事を、
幼稚園や学校でどう自慢するでしょうか?」

■よい戦略には弱点がある

次に検討すべきは、
ビジョンの構成要素の2番目の「ディレクション」。

ディレクションを決めるということは、
平たくいえば「やることの範囲を決める」
ということになる。

そして、やることの範囲を決めるというのは
「やらないことを決める」ということと同義になる。

「あなたの会社は新しい戦略を策定されましたが、
それにより、どこが弱くなりますか?」

■新しい戦略には新しいスキルと人材が必要

残るはバリューである。
日本語でいえば「価値観」と訳されることが
多いと思う。

新しいミッションの実現、
そのための新しい戦略の策定と実行、という
「新しいこと」を実現するためには、
新しいスキルが必要になってくる。

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

「やらないことを決める」というのは、
とても大切なことだと思います。

そして、やらないことによって生まれる、
弱点やリスク、失うものを
あらかじめ認識しておけば、
実際にそれに直面したときに、
それにふりまわされる必要がなくなります。

弱点やリスク、失うものが生じると
腹をくくっておくことが
軸がぶれないことにつながるとともに
自分たちを自責から守ることができると
考えています。

起業するときに、
「この質問に答えてください」
と、与えられた質問があります。

今考えると、とてもよい質問だったと思います。
今でも原点に立ち返るときに、
書き出した答えをふりかえることがあります。

1:あなたが成りたい将来の自分はどのような人物ですか?
2:あなたが成りたいと思わない将来の自分像はどんな人物ですか?
3:あなたが本当はやりたい志事は何ですか?
4:あなたが本当はやりたいと思わない仕事はなんですか?
5:1年以内にどんなことで具体的にいくら稼ぎたいですか?
6:あなたがやっていて一番楽しいことはなんですか?(志事でも趣味でも)
7:過去に学んだこと、経験したこと、体験したことの中から強みになりそうなことはありますか?
8:あなたと付き合うと私にはどんなメリットがありますか?
9:あなたは誰にも負けない体験や誰も体験したことがないような体験をしたことがありますか?
10:あなたは具体的にどのような事(仕事or趣味等)が出来ますか?
11:あなたの周りにはどのような友人や知人がいますか?
12:世の中の人の悩みや不安、痛みや苦しみは一体なんですか?
13:また解決したいと思っていることはどのようなことですか?

これを書き出しているうちに、
ミッションステートメントが浮かんできました。

あなたがやらないと決めていることは、なんですか。

20220224 ビジョン・ミッション・ディレクション・バリュー_戦略質問(3)vol.3329【最幸の人生の贈り方】

欲しい人材を獲得する

■隊員募集の広告

「求む隊員。
至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の日々。
絶えざる危険。生還の保証はない。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。」

これは、アーネスト・シャクルトン卿が、
南極探検隊の隊員を募集したときの広告。

世界でもっとも古いリクルーティング広告の
ひとつだそうだ。

実に、求人数の何十倍もの応募があったという。

「あなたの会社での
かつての「南極探検」はなんですか?」

「では、今この時点での
あなたの会社の『南極』は何になりますか?」

「あなたの会社で幸せになれる人は、
どんなタイプの方ですか?」

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

松下幸之助さんは、水道哲学を第1回の創業記念式で
こう語りました。


産業人の使命も、水道の水の如く、
物資を無尽蔵にたらしめ、
無代に等しい価格で提供する事にある。

それによって、人生に幸福を齎し、
この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである。

松下電器の真使命も亦その点に在る。

ソニーの井深大さんは、設立趣意書で、
理想工場について語りました。


一、真面目なる技術者の技能を、
最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設

いずれも、他の人からは出てこない表現で、
インパクトがありますね。

創業者ならではの思いが込められているからだと思います。

オーナー企業こそ、オーナーにしか語れない言葉で
表現することができる特権をもっているのでしょう。

大冒険である「南極」を改めて考えてみるのは、
とてもすばらしいことだと思います。

あなたにとっての『南極』は、何ですか。

20220225 欲しい人材を獲得する_戦略質問(4)vol.3330【最幸の人生の贈り方】

新規事業の3つのステージと戦略

■スリーホライズンモデル

これは、グローバル企業が新規事業をおこなうときに
用いるモデルである。

まずは、事業の卵が孵化する。
そして、その事業が、成長事業に、
さらには中核事業へと育っていく。

これをどのように管理していくか。

●ホライズン3 新規事業

ゼロから事業を開発する場合はどうなるのか。

つまりホライゾン3である。

ここは「やってみなければ、どうなるかわからない」
という領域である。

逆にいえば競争相手がいない。

それがゆえに成功したときの先行者利益が大きい。

だから「不確実性を武器とする」ように
しなければならない。

事業化までの道筋を描き、
組織としての承認ポイントを設ける。

各段階の承認ポイントで、
継続するか取りやめにするかを決めていく。

新規事業開発の成功確率は、
5%程度だといわれている。

打率としては、きわめて低い。

でも、新規事業開発タスクを
20本同時並行で稼働させれば
期待値100%になる。

もしひとつでも成功すれば、
その先行者利益は残り19本の
失敗プロジェクトのコストを簡単に吸収する。

そんな思想がホライゾン3にはある。

さらに、このホライゾン3には、
もうひとつの旨味がある。

それは若手人材の育成の場としての活用である。

●ホライゾン2 成長事業

ホライゾン3での新規事業の開発が
所期の成功を収め、
これを次にホライゾン2として
成長事業として扱っていくとする。

ここでやることは「不確実性の管理」である。

ここでやるべきことは、徹底的に販売数を増やし、
まずは一定のシェアを確保して、
市場への影響力を確立することである。

したがってこのときのビジネス管理は、
「シェア管理」「売上管理」である。

●ホライゾン1 中核事業

めでたく成長事業になった。

もう営業で特別なことをしなくても普通に売れる。

そしてその事業は中核事業となってくる。

ホライゾン1である。

ここでやるべきことは「不確実性の排除」だ。

利益がとれる顧客を選ぶとか、
意味のないディスカウントを止めるといった行動になる。

ビジネス管理は「利益管理」になる。

戦略質問:企業の課題と解決策を見抜く

ビジネスの成長は、S字曲線で語られることが多いですし、
新規事業の市場への浸透は、
イノベーター理論でも語られます。

スリーホライズンモデルは、
それを簡略化し、社内での事業の位置付けから
見たものといえます。

社内にいくつも事業があるときに、
同じ指標で事業を管理すると、
せっかくの新規事業の芽を自らつみとったり、
成長事業の伸び代をつぶしてしまったり
することになってしまいます。

3つに分けて管理すればよいというのは、
とてもシンプルでよいと思いました。

この本をとりあげるのは、今日で最終回です。

40分でまとめていくという方法は斬新で、
忙しい経営者には、ぴったりだと思いました。

質問をトリガーに、非日常について考えるというのも
具体的で実践的であり、とても興味深いです。

あなたのそれぞれの事業は、何を指標にしていますか。

20220226 新規事業の3つのステージと戦略_戦略質問(5)vol.3331【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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