サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」
Silent Earth: Averting the Insect Apocalypse
デイヴ・グールソン(著), 藤原多伽夫(翻訳)
NHK出版 (2022/8/30)
デイヴ・グールソン Dave Goulson
生物学者。1965年生まれ。英サセックス大学生物学教授。王立昆虫学会フェロー。とくにマルハナバチをはじめとする昆虫の生態研究と保護を専門とし、論文を300本以上発表している。激減するマルハナバチを保護するための基金を設立。一般向けの著書を複数出版している。
藤原多伽夫 ふじわら・たかお
翻訳家。1971年生まれ。静岡大学理学部卒業。おもな訳書にブライアン・ヘア , ヴァネッサ・ウッズ 『ヒトは〈家畜化〉して進化した』、パトリック・E・マクガヴァン『酒の起源』(ともに白揚社)、スコット・リチャード・ショー『昆虫は最強の生物である』、チャールズ・コケル『生命進化の物理法則』(ともに河出書房新社)、ジェイムズ・D・スタイン『探偵フレディの数学事件ファイル』(化学同人)ほか。
身の回りで、本当に多くの農薬が使われていることを
改めて実感しました。
私たちの世界には昆虫は必要な存在であり、
自分の身体の中の多様性も含めて、生物の多様性が保てる環境をつくり、
守っていきたいと考えます。
レイチェル・カーソン『沈黙の春』
■レイチェル・カーソン『沈黙の春』
一九六三年、私が生まれる二年前に、
レイチェル・カーソンが著書『沈黙の春』で
人間が地球をひどく傷つけていると警鐘を鳴らした。カーソンが大きく取り上げた農薬や化学肥料の問題は
いっそう深刻になり、
いまや世界中で毎年三〇〇万トンもの農薬が
環境中に流出していると推定されている。土壌は劣化し、河川は泥に埋もれ、
化学物質に汚染されてきた。そして、カーソンの時代には認識されていなかった気候変動が、
すでに傷ついた地球にさらに脅威をもたらしている。これらすべての変化が人間の一生のうちに目の前で起こり、
いまも加速し続けている。作物の受粉、糞や枯れ葉・死骸の分解、健全な土壌の維持、
害虫防除をはじめ、さまざまな理由で
人間は昆虫を必要としているのだ。昆虫より大きい鳥や魚、カエルといった、多くの動物は
昆虫を食べている。野生の花は昆虫がいないと受粉できない。
昆虫が減っていくにつれて、
私たちの世界は徐々に動きを止めてゆく。世界は昆虫なしでは成り立たない。
■昆虫のいる世界
いま私は、ほかの人たちが昆虫を好きになって
大切にしてくれるように、
あるいはそこまでいかなくとも、
彼らにとって大切なあらゆるものと同じように
昆虫を尊重してもらえるように、
多くの時間を割いている。だから私はこの本を書いた。
私が昆虫を見る目で、
あなたにも昆虫を見てもらい。思い描いてみてほしい。
都市や町に緑があふれ、
至るところで野花が咲き乱れ、
果樹が花や実をつけ、
建物の屋根や壁が緑に覆われている未来を。バッタの鳴き声や鳥のさえずり、
マルハナバチのブーンという羽音、
カラフルなチョウの翅に囲まれて育った
未来の子どもたちの姿を。都市の周囲には、
生物多様性に富んだ小規模な果樹園や野菜畑がいくつもあり、
そこでは多種多様な野生の昆虫が花粉を運び、
地中にすむ無数の生物によって
土壌の健全性や貯蔵された炭素が維持される。町から離れた場所では生態系を回復させる
自然再生プロジェクトが新たに進んで、
人々が自然の中で余暇を楽しめるようになる。ビーバーのダムでせき止められてできた湿地には
トンボやハナアブが飛び回り、
花が咲く草原と森林のパッチワークには
至るところに生命があふれている。私たちみんなが人生を満喫し、
体によい食べ物を十分に食べながら、
生命あふれる生き生きとした緑の惑星を
維持できるだけの余地はある。自然から切り離された存在ではなく、
自然の一部として生きることを学べばいいだけだ。
昨日の昼、ナスのまわりにチョウが2匹
飛んでいるのを見かけました。
ナスの葉の上に小さな虫が止まっているのを
見つけました。
葉を食べているのだと思ったけど、
そのままにしてみました。
夜、米を精米しようとしたときに、
米びつの底に、米粒よりも小さな
コクゾウムシが歩いているのを見つけました。
家の外に移動してもらいましたが。
今朝、家の前の電線に、赤とんぼが
止まっているのを見つけました。
秋ですね。
都心に住んでいますが、
地面に近い暮らしをしていると、
生き物の存在を感じます。
マンションの11階に住んでいたときには
味あわなかった日常です。
近所に人が住まなくなった家があり、
その庭には手の入っていない大きな木があり、
そこには、多くの鳥がやってきます。
散歩をしていると、空き地にヒルガオが
濃い紫の花を咲かせています。
道路のコンクリートのわずかな土の上にも
草が生え、その生命力に驚きます。
私たちが住んでいなかったら、
コンクリートで土を覆っていなかったら、
緑あふれる生物の多様性に満ちた場所になることは
容易に想像できます。
そんな場所に私たちは住んでいます。
昆虫たちの視点から、世界を眺めてみようと思います。
あなたは、最近、どんな虫を見かけましたか。
20221001 サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」(1)vol.3548【最幸の人生の贈り方】
昆虫の進化・発展と減少
■海底から陸上へ
昆虫の祖先は五億年ほど前に、
海底にたまった原初の泥の中で進化した。それは鎧のような外骨格と
関節のある脚をもった奇妙な生き物で、
現代の科学者たちは「節足動物」と呼んでいる。初期のクモ形類は海からどうにか抜け出したあと、
現代のクモやサソリ、ダニになった。ヤスデ類はのっそりと上陸し、
暗く湿った場所に身を落ち着けて、
土の中のほか、倒木や石の下で
朽ちつつある有機物を人知れずかじって暮らし、
今日までひっそりと穏やかに命をつないできた。だが、ヤスデ類には獰猛ですばしっこい近縁の天敵がいた。
同じく、土の中や暗く湿った場所にすむムカデ類だ。
甲殻類(カニ、ロブスター、小型のエビなど)も
陸上での生活を試みたが、ほとんどが適応しなかった。甲殻類は今日に至るまで、
種の数でも個体数においても海の中で群を抜いているが、
陸上において最も成功した代表的な種は
つつましいワラジムシだ。本格的に陸地を探索するためには、
体の水分を保持するための対策が欠かせない。クモは水の発散を防ぐクチクラ(角皮)を発達させて
陸地の環境にうまく適応し、
いまでは世界一過酷な乾燥地にもすめるようになった。陸上での生活に本当に適応したのは昆虫だ。
その正確な起源は依然として謎に包まれている。
昆虫はクモと同様、ろうや油で水をはじく
クチクラを発達させている。■飛行の獲得
原始的な飛べない昆虫もまだ生き残ってはいる。
最もよく知られているのはシミかもしれない。
生命が誕生してからの三五億年間で、
自力で飛行する能力は知られている限り
四回しか進化していない。昆虫は空中での生活を切り開いたパイオニアで、
それはおよそ三億八〇〇〇万年前のことだった
(その後、二億二八〇〇万年前に翼竜が、
一億五〇〇〇万年前に鳥が、
およそ六〇〇〇万年前にコウモリが空へ進出した)。飛行能力を得たことで、
昆虫は大きな強みをもつことになった。空中を飛ぶほうが歩くよりもはるかに速いから、
陸地にすむ捕食者から楽に逃げられるようになり、
食物や交尾相手を見つけるのもずっと簡単になった。渡りなどの季節移動ができるようになった。
飛行する昆虫は石炭紀(三億五九〇〇万~二億九九〇〇万年前)に
一気に数を増やし、
飛行能力がそれほど高くないカマキリやゴキブリ、バッタのほか、
より飛行能力の高いカゲロウやトンボなど、
昆虫の新たなグループも多数出現した。■「変態」という能力
石炭紀が終わってすぐのおよそ二億八〇〇〇万年前、
ある種の昆虫が「変態」という能力を獲得した。イモムシからチョウに、あるいはウジからハエに変わるように、
未成熟の期間(幼虫)からまったく異なる姿の成虫に
変化する驚くべき能力だ。最後に葉っぱを食べたら、
「絹糸」と呼ばれる糸を出して、
体を植物の茎にしっかりと固定する。そして、古い表皮を捨て、
新たになめらかな茶色い表皮をあらわにする。もはや目も脚もなく、
体の表面にあるのは呼吸するための「気門」と呼ばれる
小さな穴だけだ。ぴかぴかの蛹の表皮の下では、体が溶け、
体内組織と内臓の細胞が死んで分解するように
あらかじめ決まっている。自身はただのスープのような状態になる。
ただし、胚細胞の集まりはいくつか残り、
それらが増殖して新たな内臓と構造が一からつくり直されて、
まったく新しい体に変身する。変態は目を見張る現象であり、
ハエ、チョウ、ガ、ハチ、アリなど、
この能力をもった昆虫はどんな昆虫よりも
多くの子孫を残した。一方で、変態しない昆虫もいる。
たとえば、バッタやゴキブリがそうだ。
変態する昆虫とは異なり、
若いバッタは食物をめぐって成虫と競争しなければならない。これはウジやイモムシにはない問題だ。
バッタは個体数という点では十分に成功している。
種はバッタ目でおよそ二万種、ゴキブリ目では七四〇〇種だ。
一方、変態する昆虫を見ると、ハエ目で一二万五〇〇〇種、
ハチ目で一五万種、チョウ目で一八万種、
コウチュウ目にいたっては何と四〇万種も確認されている。■複雑な社会を発達させる力
昆虫が進化の途上で獲得したもう一つの能力は、
複雑な社会を発達させる力だ。シロアリ、ハチ、アリはすべてこの能力をもち、
巣の中では少数の女王がほぼすべての卵を産み、
その子たちは女王の世話や子の世話、巣の防御など、
さまざまな専門の仕事を担う。■昆虫の減少
クレーフェルトの昆虫学者たちは二七年間、
延べ一万七〇〇〇日近くかけて六三カ所から、
重さにして合計五三キロ分もの昆虫を集めた(かわいそう)。データを調べ、簡単なグラフにしてみると、
一九八九年から二〇一六年までの二七年間で、
トラップにつかまる昆虫の全体の生物量が
七六%も減少していた。二〇〇八~二〇一七年の一〇年間に
ドイツの森林と草原で昆虫の個体数を
精査した研究成果を発表した。調査対象は一五〇カ所の草原と一四〇カ所の森林で、
草原は集約的に耕作された牧草地から花々が咲き誇る草地まで、
森林は管理された針葉樹の植林地から古い広葉樹の森まで、
多様な植生を含んでいる。研究の結果、年間の減少率は
クレーフェルトのデータで示された減少率よりも
大きかった。草原での減少率が最も大きく、
平均で節足動物(昆虫、クモ、ワラジムシなど)の生物量の三分の二、
種の数では三分の一、節足動物の全個体数の五分の四が失われた。森林における減少幅は、生物量で四〇%、種の数で三分の一強、
節足動物の全個体数では一七%だった。草原にいくらか除草剤が散布された例はあるものの、
殺虫剤や殺菌剤がまかれた調査地点はなかった。しかし、全体的な減少幅が最も大きい傾向があったのは、
周囲にある耕地の割合が相対的に高い地点だった。カリフォルニアで越冬する西側のオオカバマダラは
一九九七年には一二〇万匹ほどいたが、
二〇一八年と二〇一九年には三万匹もいなかった。およそ九七%の減少だ。
北アメリカでは、空中で昆虫を捕まえて食べる鳥の個体数は
ほかの鳥類グループよりも減少幅が大きく、
一九六六年から二〇一三年のあいだにおよそ四〇%減少した。ショウドウツバメ、ヨタカ、エントツアマツバメ、
ツバメはすべて、過去二〇年で数が七〇%以上減った。ヨーロッパヤマウズラは九二%、
ナイチンゲールは九三%、カッコウは七七%の減少となっている。大型の昆虫を好んで捕食するセアカモズは
サイレント・アース
一九九〇年代にイギリスで絶滅した。
意外なことに、昆虫の起源はわかっていないようです。
完全変態の起源についても、いまだ議論の中ですが、
進化の過程で一度だけ獲得されたことがわかっています。
脊椎動物で変態の能力を持つのは、両生類だけですね。
しかし、陸上で大きく繁栄したという歴史は
もっていません。
成体が水辺へ大きく依存していることが
繁栄できなかった大きな要因でしょう。
一方、昆虫は、陸上での生活に完全に適応しただけでなく、
空へもいち早く進出しました。
完全変態がここで大きな役割を果たしているとも
いえます。
さらに驚くのは、社会性です。
鳥は大きな群れをつくっても、
固定的な役割分担はもちません。
哺乳類も生涯を通じて、
固定的な役割を分担していくという
社会性をもっている動物は
ないかと思います。
社会性昆虫は、地球上で最も進化している動物種と
いえるのではないでしょうか。
最近、すごいなあと思ったのは、
チャイロスズメバチの生態です。
もともと北海道、東日本を生息していたハチですが、
どんどん勢力を広げ、今では西日本でも見られるようです。
このハチは、自力でも巣を作ることができるのですが、
とても下手。
そこで、他のスズメバチの巣を乗っ取るのです。
チャイロスズメバチの女王蜂が
単身で他のスズメバチの巣に入り込み、
女王蜂を殺し、自分が女王蜂の座に。
すでにいる働き蜂をそのまま従え、
徐々に自分の子供たちに置き換わるという生態です。
スズメバチの中でも、
特に凶暴で毒性も強いということなので、
要注意ですね。
カッコウもひどい子育てだよなあと
思っていましたが、
チャイロスズメバチの乗っ取りも
驚く方法です。
アオムシに卵を産みつける蜂もいるので、
蜂にとっては、何でもありなのか。
キノコを栽培するハキリアリのほうが
好感が持てます。
蟻にも
グンタイアリという獰猛な種がありますね。
日本での生物多様性の調査は
「自然環境保全基礎調査」として行われていて、
約7年間くらいかけて、1回の調査として
とりまとめているようです。
https://www.biodic.go.jp/kiso/fnd_list_h.html
最新のとりまとめは2012年。
現在は、来年以降の取り組みの検討ということで、
前回からは、間があいているようです。
著者も書いていましたが、
数の推移をまとめることは、結構難しくて、
調査員が多ければ、それだけ発見数も増えるので、
数字を単純に比較するというのは、
できないようです。
一方、毎年同じ方法で、調査したものであれば、
比較はできます。
それで、信頼できる数字として、
とりあげられているのが、ドイツでの調査結果ですが、
草原では大きく減少し、個体数では、
節足動物が10年で5分の1になったとのこと。
これは、どう考えても大きな減少ですね。
人口が10年で5分の1になったら、
大騒ぎです。
あなたは、昆虫の歴史と生態から、どんなことを学びますか。
20221003 昆虫の進化・発展と減少_サイレント・アース(2)vol.3550【最幸の人生の贈り方】
環境に漏れ出す農薬
■ネオニコチノイド
ネオニコチノイドは浸透性農薬と呼ばれ、
植物のあらゆる部位に浸透する。それがコーティングされた種子をまくと、
湿った土壌の中でコーティングが溶け
(ネオニコチノイドは水溶性が比較的高い)、
発芽して成長するうちに
有効成分が根から植物体中に取り込まれ、
植物全体に広がって害虫の防除効果を発揮する。それが、コーティングされた種子を使う目的だ。
農家はコーティング済みの種子を購入して畑にまくだけで、
作物を守ることができる。とても巧妙な仕掛けだ。
植物全体に広がる有効成分は花粉や蜜にも入り込むという点は、
そうした化学物質が導入された時点で明らかだったはずなのに、
誰も心配していなかったように思える。セイヨウアブラナやヒマワリといった作物は
当然ながら受粉が必要である。作物が取り込む種子コーティングの割合が数値で書かれていた。
その割合は有効成分のおよそ一~二〇%と、
作物の種類によってかなりばらつきがあるが、
平均するとたった五%だ。比較のために、トラクターから農薬を散布した場合、
有効成分の三〇%以上を作物が取り込むことができる。平均で種子にコーティングされたネオニコチノイドの九五%が
その標的とする作物に取り込まれないとしたら、
いったいどこへ行ったのか?この化学物質は土壌中で分解される速度がきわめて遅いため、
それがコーティングされた小麦の種子を毎年まいていると、
だんだん土壌に蓄積されていくという。農地の縁辺部で採取した土壌にも、
野生の花の花粉と蜜のサンプルにも、
本来作物にだけ含まれているはずのネオニコチノイドが
しばしば含まれていた。ポピー、キイチゴ、ホグウィード、スミレ、ワスレナグサ、
セイヨウオトギリソウ、アザミにはすべて、
ネオニコチノイドが含まれていた。検出された濃度はばらつきがかなり大きいが、
なかには、種子にコーティングが施されたアブラナから
検出される濃度よりはるかに高いものもあった。ホグウィードとポピーから集めた花粉のなかには、
私たちがスコットランドでマルハナバチの実験に使った濃度
(農薬業界が非現実的なほど高いと主張した濃度)の
一〇倍を超す濃度が検出されたものもあった。ネオニコチノイドは農地の縁辺部に広がり、
野生の花や生け垣の植物に吸収されていた。農地の野生生物のすみかとして重視していた生け垣は
どこも強力な殺虫剤を含んでいたのだ。ネオニコチノイドにさらされたマルハナバチの巣で
誕生する女王バチの数が八五%低下した。花粉を通じて巣に持ち込まれた
ネオニコチノイドの残留物のうち
作物由来はたった三%だった。ぞっとすることに、ネオニコチノイドの九七%が
野生の花の花粉を通じて持ち込まれていたのだ。カナダの湖と湿地のほぼすべてが
ネオニコチノイドで汚染されていることを発見した。ポルトガルやカリフォルニアからベトナムまで、
世界中の湖や河川がしばしば慢性的に
こうした化学物質に汚染されていることが
たちまち明らかになった。意外なことではないが、
殺虫剤の濃度が高い淡水環境では
無脊椎動物の数が少ない傾向にある。ネオニコチノイドが淡水生物に及ぼす影響として
最も目を見張る証拠は、
日本の宍道湖の研究かもしれない。宍道湖では重要な漁業資源である
ウナギやワカサギの食料となっていることから、
無脊椎動物の個体数が長年詳しく観測されてきた。だが、周囲の水田にネオニコチノイドが導入されると、
この農薬が宍道湖に流れ込む川を
汚染していることが明らかになり、
昆虫や甲殻類、その他の小動物(動物プランクトン)の
宍道湖での個体数がたちまち激減した。日本では何の措置もとられず、
宍道湖の漁獲量は少なくとも二〇年のあいだ
少ない状態にとどまった
(私が確認できた発表済みデータは二〇一四年)。■ノミ駆除剤
農家は(特例を受けない限り)作物への
ネオニコチノイドの使用を許されなくなったが、
一般の人々はペットのノミを駆除するために
この薬剤を依然として買うことができる。ノミ駆除剤として最も人気が高いブランドは
「アドボケート」と「アドバンテージ」で、
どちらも有効成分としてイミダクロプリドが含まれている。イギリスだけでおよそ一〇〇〇万匹の犬と
一一〇〇万匹の猫がいるから、
毎年何トンものイミダクロプリドとフィプロニルが
ペットに投与されているとみていいだろう。犬が池や川に飛び込んだり、雨の中で外に出たりすると、
殺虫剤が洗い流され、
環境中にかなりの量が流出することになる。イギリスの一九の河川がイミダクロプリドに汚染され、
二〇の河川すべてでフィプロニルと、
それが分解されてできた各種の有毒物質が検出された。■除草剤
ハナバチの巣からは八三種類の殺虫剤、四〇種類の殺菌剤、
二七種類の除草剤、一〇種類のダニ駆除剤を含め、
一六〇種類もの農薬が検出されてきた。ほとんどの農場で最もよく使われている農薬は除草剤だ。
農家が作物以外の植物(いわゆる雑草)を枯らすのに
役立てている化学物質である。こうした植物をそのまま生やしておくと
作物と栄養分の取り合いになり、
収量が減るおそれがあるからだ。除草剤はまた、成長しきった小麦や綿などの作物を
意図的に枯らして、均一に乾燥させるためにも
よく使われる。最も有名で悪名高いとも言える除草剤はグリホサートだ。
たいてい「ラウンドアップ」という商品名で販売され、
世界で最も広く使用されている農薬で、
イギリスでの農業利用は年々増えていて、
二〇一六年には二〇〇〇トンを超えた。この数値には地方自治体や家庭菜園での使用は
含まれていない。グリホサートは非選択的除草剤で、
それを浴びた植物という植物を種を問わず枯らす。浸透性の農薬であるので、
植物の組織を通して広がって根を枯らすのだ。ヨーロッパ以外の地域では、
多くのグリホサートが「ラウンドアップ対応」の
遺伝子組み換え作物とともに使用されている。世界全体のグリホサートの年間使用量は
二〇一四年には一五倍の八二万五〇〇〇トンにまで増え、
いまも増え続けている。グリホサートは植物と細菌にだけ見つかる酵素を
攻撃するようにつくられているから、
動物には何の影響も及ぼさないはずだ。しかし、テキサス大学のエリック・モッタが
最近行なったミツバチの研究で、
蜜や花粉に含まれるグリホサートにさらされることで
ミツバチの有益な腸内フローラが変化し、
病気になりやすくなることがわかった。少量のグリホサートを投与された個体は
なじみのない場所で放されると、
対照群の個体と比べて巣まで戻るルートを見つけるのに
長い時間がかかるだけでなく、
遠回りのルートを多く使った。この影響は投与後すぐに現れるため、
腸内フローラへの影響が原因で
引き起こされたわけではない。アメリカでは、日常的に食べられる食品のなかでも
環境に漏れ出す農薬
クエーカーオーツやネイチャーバレーのグラノーラ・バー、
チェリオスのシリアルから数百ppbの濃度のグリホサートが
検出されてきた。
プランターに植える野菜の種が
時々、青色とかにコーティングされていて、
気持ち悪いなあと思いつつ、
使っていたわけですが、
当然ながら、よかれと思ってやっている思いやりが
そこにあったのです。
改めて、今年植えた種のパッケージをみました。
・ベビーキャロット
イプロジオン/チウラム 各1回処理済
・まんまるはつか大根
キャプタン/イプロジオン 各1回処理済
・コクあまミニトマト
この種子は農薬を使っていません
・お花がいっぱいひまわり
この種子は農薬を使っていません
なるほど〜〜
種子の段階ですでに農薬が使われているわけです。
・イプロジオン
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/36734-19-7.html
農業用、園芸用殺菌剤。
<危険有害性情報 >
眼刺激
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系の障害のおそれ
長期又は反復ばく露による造血系の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
・チウラム
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_DET.aspx
殺菌剤, 天然ゴム、合成ゴム用加硫促進剤。
<危険有害性情報>
飲み込むと有害
吸入すると生命に危険
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
遺伝性疾患のおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
臓器の障害(神経系)
長期にわたる、又は反復ばく露による臓器の障害(甲状腺、肝臓)
長期にわたる、又は反復ばく露による臓器の障害のおそれ(神経系)
長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性
・キャプタン
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_DET.aspx
農薬 (殺菌剤)
<危険有害性情報>
皮膚刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
重篤な眼の損傷
吸入すると有毒
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
呼吸器の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
こういう農薬をすでに私は使っていたのでした(O_O)
知らないとは、本当に恐ろしいことです。
次からは、種を買うお店を変えます。
さて、除草剤のラウンドアップですが、
「ご家庭で使える安心な除草剤」として、
簡単に買うことができます。
https://www.roundupjp.com
ラウンドアップは、アメリカのモンサントが
1970年に開発した除草剤で、
2018年にドイツのバイエル社が買収して、
現在はバイエル社の商品になっています。
この薬剤耐性を有する遺伝子組み換え作物は、
ラウンドアップレディーと呼ばれ、
日本ではダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、
テンサイ、アルファルファ、ジャガイモに
使用が認可されています。
すでに雑草に耐性が確認されていて、
遺伝子組み換え作物のほうが散布した農薬の金額が27%多く
増加傾向にあるとのこと。
グリホサートを禁止するかどうかは、
長いこと議論になっていますが、
グリホサート陣営は、当然ながら、
「グリホサートの使用禁止は世界の食料危機に直結する」
と主張していますね。
https://agrifact.jp/glyphosate-ban-directly-leads-to-global-food-crisis-the-truth-about-the-anti-glyphosate-movement-in-japan-and-around-the-world12/
自分が何を信じるかで、ここでも分断が起きています。
さて、私は、昨日の大人買いの本の中に
『1㎡からはじめる自然菜園』
という本を入れました。
無農薬で、肥料もほとんど使わずに野菜が自然に育つノウハウが
満載だとのことです。
私はこちらの方向を目指したいと思います。
あなたは、農薬について、どのように考えますか。
20221004 環境に漏れ出す農薬_サイレント・アース(3)vol.3551【最幸の人生の贈り方】
私たちができること
■昆虫の減少の原因
昆虫の減少は私がこれまで述べてきた
すべての要因によって引き起こされている。生息域の喪失、外来種、外来の病気、さまざまな農薬、
気候変動、光害に加え、
私たちが気づいていない人為的な要因も
おそらくほかにあるだろう。原因は一つではない。
昆虫の一つひとつの種は
おそらくそれぞれ異なる時期と場所で、
異なる要因の組み合わせに影響を受けてきた。重要なのは、昆虫に害を及ぼすストレス因子の多くは
それぞれ個別に作用しているわけではないと、
いまはわかっていることだ。■世界の科学者による人類への警告
二〇一七年、懸念を抱えた二万人を超す
一八四カ国の科学者たち(私を含む)が
「世界の科学者による人類への警告 第二版」に署名した。その警告はきわめて率直だ。
「とりわけ悩ましいのは、
壊滅的な結果をもたらすおそれのある気候変動の
現在の傾向である」と強調し、
「私たちは大量絶滅イベントを引き起こそうとしている」
と続く。「およそ五億四〇〇〇万年間で六度目であり、
現存する多くの生命体が今世紀末までに絶滅するか、
少なくとも絶滅への道を歩むことになるだろう」。■環境問題と目の前の心配事
一方で、世界の人々の大部分は環境問題に
まったくと言っていいほど関心をもたず、
これまでと同じように暮らしている。私が思うに、世界の人々の九割以上は
ふだんの生活で環境問題のことを
何も考えていないのではないか。私たちは月々の支払い、子どもの教育、
年をとる両親の面倒をどうやってみようか、
好きなチームが今シーズンに降格しないだろうか、
といった事柄を気にして過ごすものだ。それはすべて理解できる。
目の前の心配事のほうがはるかに切実だからだ。
南極の氷床の亀裂がもたらすはるか彼方の漠然とした脅威や、
栄養循環の異常、土壌の浸食、気候変動、送粉者の減少が
起きるなかで世界的に作物の収穫量が
減り始める可能性は想像しにくいのだ。環境について深く懸念している人たちでさえ、
自転車で行けそうな距離でも車を使うことがよくあるし、
冬休みに家族を車で暖かい場所に連れていきたいという誘惑に
負けるものだ。買い物では、無農薬の餌で放し飼いされた
高価なチキンを買うべきだとはわかっているものの、
金額だけに着目して
環境や動物福祉のコストに目を向けなければ、
工場で飼育された安いチキンのほうが
はるかにお買い得に感じる。人間というものは好きなようにやらせると、
たいていはなまけ者で、自己中心的な生き物だ。■みんなで行動する
● 一回一回の買い物が何らかの結果をもたらすことを認識する。
● 持続可能な農法を使う地元の農家を支える。
● 旬の農作物を買う。
● ばら売りの野菜や果物を買う。
● 形の悪い野菜や果物を買う心構えをもつ。
● 地元産であっても、暖房を使った温室で育てられた農作物を避ける。
● 肉を食べる量を減らす。
● 食物を無駄にしない。
サイレント・アース
今朝、こんな良い記事を見つけました。
「新宿の小学校の屋上が農園に、1日に野菜100キロを収穫」
「東京都新宿区の区立柏木小学校では、
屋上を利用した野菜づくりに取り組んでいる。
その規模は一般的に小学校で行われる農業体験の域を超え、
1日の収穫量が100キロを超えるほどの本格的な農場だ。」
子供たちの教育にもなるし、地球環境対策にもなるし、
農作物は収穫できるし、
いいことだらけの取り組みですね。
これを推進した校長は、
小学校での屋上農園を展開するのがここで3校目だそうです。
もちろん、多くの協力者があってこその成功ですが、
校長の思いと経験が実を結んだようです。
『ザ!鉄腕!DASH!!』でも、新宿にある大学キャンパスビルの屋上に、
池をつくり、野菜や果物を栽培し、養蜂までしています。
これも素晴らしい取り組みだなあと思います。
もちろん、どこの小学校でも、花や野菜や稲の栽培は
体験していると思います。
が、単一作物を栽培することを目的にするのではなく、
生物の生息環境を作るということに
もっとフォーカスしてもよいのではないかと考えます。
やってきているのが、”ムシ”ではなく、
モンシロチョウであり、アゲハチョウであり、
ホオズキカメムシであり、アブラムシであり、
ミツバシであり、ハナアブであること。
さらには、それを食べるクモやカマキリやスズメバチや
ツバメやムクドリ、ヒヨドリがいること。
土の中にも多くの生物がいて、
炭素や窒素が循環していること。
こんなことに興味をもってもらえるよい機会に
なるのではないでしょうか。
著者が書いているように、名前は大切です。
身の回りには、まだまだ名前を知らない存在がいます。
大人も関心をもつことが大切ですね。
そして、やはり課題は、
目の前の課題とお金にばかり注目しないことでしょうか。
スーパーで、ついつい、
形のよい、安い野菜に手を出してしまいがちですが、
安い野菜を買いたければ、
旬の野菜を買うべきです。
「一回一回の買い物」が、とても大切ですね。
あなたは、野菜を買うときに、何を重視しますか。
20221005 私たちができること_サイレント・アース(4)vol.3552【最幸の人生の贈り方】