人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小

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人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小
The Great Demographic Reversal: Ageing Societies, Waning Inequality, and an Inflation Revival

チャールズ・グッドハート(著), マノジ・プラダン(著), 澁谷浩(翻訳)
日経BP (2022/5/20)

チャールズ・グッドハート Charles Goodhart
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)名誉教授
1985~2002年、LSE教授。現在もLSEにおいて研究を続ける。イングランド銀行エコノミスト、同行チーフ・アドバイザーを歴任。2009年から2016年まで、モルガン・スタンレーのコンサルタントも務める。

マノジ・プラダン Manoj Pradhan
Talking Heads Macro(マクロ経済リサーチ会社)創業者
前モルガン・スタンレーのマネージング・ディレクター。ジョージ・ワシントン大学経済学Ph.D.


澁谷浩 しぶや・ひろし
経済学者、小樽商科大学名誉教授
1988年、プリンストン大学Ph.D.取得。インディアナ州立大学助教授、IMFエコノミスト、日本銀行金融研究所を経て、1992年、小樽商科大学経済学部助教授、1997年より同教授。2017年退任し、同大学特任教授を経て、2019年より同大学名誉教授。 著書に『通貨危機と資本逃避』(東洋経済新報社、共著)、「動学的均衡価格指数の理論と応用-資産価格とインフレーション」(『金融研究』第10巻第4号)、“Dynamic Monetary Policy: Preventing Bubbles and Promoting Growth,” The Economic Review (商学討究), Vol.70 (No.2 & 3、共著)など。

この本はかなり読みづらいです。

はじめは、専門用語のせいかとも思ったのですが、
そうではなくて、論理の組み立てのせいだと
結論づけました。

編集でもうちょっと整理できなかったのか。

あるいは、元があまりにとっちらかりすぎて、
編集の限界がここだったのか。

目次を見た段階で気がつけばよかったのですが、
評価の高さに惑わされました。

ということで、読むのが苦痛なので、途中で閉じました。。。

どの社会にも課題はあると思いますが、
高齢化社会というのは、世界全体の流れであり、
日本のよいところは、他の社会でも取り入れてもらうのが
よいと思います。

そして、水野和夫氏の『次なる100年―歴史の危機から学ぶこと』の内容の方が
私には響きました。

「近代を終わらせよう」という考え方が
もっと広まってよいと思います。

ゼロ金利でもいいのではないですか。

「より近く、よりゆっくり、より寛容に」
という価値観を楽しむ社会が
日本に合っているのではないでしょうか。

デフレからインフレへ

■1991年から2018年の巨大な労働供給ショック

先進国における二つの要因(すなわち、
団塊の世代が労働力に加わることによって
依存人口比率が減少したこと、
女性の労働市場への参加が増大したという
二つの人口構成の変動要因)が、
中国の台頭、グローバル化、
東欧の世界貿易システムへの再統合などの要因と
組み合わさることによって、
歴史上かつて見たことのない
巨大な労働供給ショックが形成された。

世界の先進国貿易システムにおける
実効的な労働力の供給量は、
1991年から2018年の27年間に2倍以上も
増加したのである。

■国家間の所得格差改善と先進国内の所得格差悪化

先進国内の所得格差が悪化したのに対して、
国家間そして世界全体における所得格差は改善してきた。

ボトム90%に対するトップ10%の所得比率で測った不平等は、
富の不平等と同じように、ほとんどの国々で悪化してきた。

所得と富の不平等の悪化そして
非熟練労働者の実質賃金の低い伸びは、
多くの先進国において、
より多くの有権者が政治に対する信頼を失う事態を招いた。

そして多くの有権者は国のエリートたちが
彼らのことに配慮しなくなったと思うようになった。

第二次世界大戦以来はじめて、
多くの、いやほとんどの国民が、彼らの、そして子供たちの
経済状態が今後何十年にもわたって
改善する可能性があまりないと思うようになったのである。

■人口大逆転は今始まったばかりだ

多くの国々の労働力成長の急激な低下を
もたらすことになる。

いくつかの国では労働供給の絶対数が減少する。

■高齢者介護は経済コストを劇的にふやす

現代の主要な病気とは異なり、
認知症は寿命を短くするわけではない。

その代わり、認知症は患者の能力を奪うことによって
大きな介護コストを発生させる。

医学において死に直結するガンや循環器疾患の治療には
大きな進歩が見られたが、
認知症の治療に関してはほとんど進歩が見られていない。

高齢者の介護に関してもほとんど進歩が見られていない。

財とある種のサービスは他国で生産して
国内の目的地に輸送できるが、
高齢者の介護サービスではそのようなことは不可能である。

■デフレ傾向から高いインフレ傾向へ

われわれが最も確信しているのは、
世界がデフレ傾向から高いインフレ傾向へと
しだいに移行していくということである。

なぜならば、扶養される人々が何も生産せずに消費する一方で、
労働者は自ら消費するよりももっと多く生産するからである。

世界中における急速な依存人口比率の増加は、
何も生産せずに消費する依存人口が
デフレ傾向を生む労働人口を上回ることを意味する。

避けることのできない結果は
インフレーションということになる。

実質金利が低下または低く安定すると思っている人々は、
将来、投資が貯蓄よりもさらに低下することになると
思い込んでいるが、われわれはそうは考えない。

多くの見方とは異なり、
投資が活況を維持すると信じる少なくとも二つの理由がある。

第一に、高齢者は自らの住宅に住み続け、
新しい家計は新築住宅を求めるから、
住宅需要は比較的安定したまま推移するであろう。

第二に、企業部門は生産性を上げるために
資本/労働比率が上昇するような投資を行う可能性が高い。

プラス・マイナス勘案すると、
貯蓄が投資よりも落ち込むことによって
実質金利は上昇すると予想される。

人口大逆転

高齢化社会、人口停滞というのは、
先進国では見えている未来であり、
日本では、すでに始まっている現実でもあります。

世界規模でこのような状況になったときに
経済はどうなるかということが
書かれた本です。

同時に先行している日本では、
著者たちが予想したとおりに進んでいないけれど、
なぜ日本は異なっているのかということも
論じられています。

まず、過去27年間、世界で見ると
巨大な労働供給があったとのこと。

団塊の世代の労働力化
女性の社会進出、
中国の人口増加、
グローバル化、
東ヨーロッパの世界貿易システムへの再統合などが
組み合わさったことによるものです。

これによって、
国家間そして世界全体における所得格差は縮小すると同時に
先進国内では所得格差が拡大し、
非熟練労働者の実質賃金の低い伸びとあいまって
政治に対する信頼が減少したということです。

そして、高齢化の介護コストが
今後さらに増加していくけれど、
労働者人口の割合が減ることで、
インフレが進むだろうというのが、
著者の大まかなメッセージです。

「高齢者は自らの住宅に住み続け、
新しい家計は新築住宅を求めるから、
住宅需要は比較的安定したまま推移するであろう。」

これはどうなんでしょう?

親の世代は、積極的に新築住宅を求めていましたが、
私たちは(主流かどうかわからないけれど)
新築ではなく、中古でよしとして、
今後はわからないけれど、今は借家です。

若い世代を見ると、マイホームやマイカーを持ちたい
と強く思っている人がどれくらいいるのでしょうか?

価値観の変化もあるように思います。

「企業部門は生産性を上げるために
資本/労働比率が上昇するような投資を行う可能性が高い。」

多くの産業分野では、労働力がそれほど必要なくなると
予想される見方もあります。

こんな観点も議論されているのか、
見ていきたいと思います。

あなたは、経済が長期的にどのような傾向に進むと予想していますか。

20220924 人口大逆転_高齢化、インフレの再来、不平等の縮小(1)vol.3541【最幸の人生の贈り方】

中国の経済発展と今後

■世界経済における中国の台頭

世界経済における中国の台頭は
三つの出来事と時代にさかのぼることができる。

●「中国の特色ある社会主義」

第一の出来事は鄧小平による
「中国の特色ある社会主義」であり、
特に重要なのは1992年に始まったその第二段階である。

この動き(第一の出来事)の第一段階は1978年に始まった。

それには、農業を改革すること、
民間企業に中国経済への再参入を招請すること、
外国資本を許可する経済特区を創設すること、
などが含まれている。

都市部の産業では物価統制が外されたが、
その後も中国経済は非効率な国有企業によって
支配されてきた。

第二段階(1992年)に入り、
国有企業の民営化が始まった。

小規模および中規模の国有企業、
さらにはいくつかの大規模な国有企業さえも
閉鎖されるか民間に売却された。

この時期に民間企業の急速な成長が見られたが、
国家利益にとって重要とみなされた部門(銀行を含む)では
巨大国有企業の独占状態が続いた。

「中国の特色ある社会主義」の
第一段階は中国経済の開放であり、
中国が世界経済に急速に統合していったのは
1992年に始まった第二段階からであった。

●世界経済への中国の統合

第二の出来事は、世界経済への中国の統合を
さらに推し進めた二つの条約である。

一つは米国議会による対中恒久通常貿易関係
(PNTR、最恵国待遇に相当)法案の可決(2000年)であり、
もう一つは中国のWTOへの加盟(2001年)である。

このWTO加盟から世界金融危機までの間に、
経済的、そして政治的超大国としての
中国の地位が確立していった。

PierceandSchott(2012)は、2000年代に入ってから
「米国製造業における雇用者数の驚くべき急激な減少」
を記録している。

そして、この雇用者数の急激な減少の主要な原因は、
中国に対する将来の関税の脅威を
取り除いたことにあると指摘している。

多くの製造業は中国を目指して米国から出ていった。

●世界金融危機に対する中国の対応

第三の出来事は、世界金融危機に対する中国の対応である。

中国による世界金融危機発生への積極的な対応は、
世界経済が崩壊を回避できた大きな要因となった。

中国と新興国の経済は、
先進国に代わる世界経済の原動力とみなされた。

2007年から2012年において、
それは数字の上でも経済的にも真実であった。

しかし、2012年は中国の人口構成の
世界経済への貢献が終焉する始まりの年となった。

2014年から2015年にかけて、
中国の製造業と不動産部門は大きな下落を経験した。

■中国の大逆転

世界経済の成長とグローバル化に対する
中国の最大の貢献は終わった。

中国の経常収支黒字は2007年にピークを迎え、
これからは赤字に振れるようになるだろう。

名目GDPの成長も2012年に18%付近でピークを迎えて、
2015年には5%を少し超えた水準まで急落した後に
やや回復した。

中国の労働年齢人口は、
急速な高齢化を反映して縮小している。

今まで限りのないように思われた労働力を
工業地帯へ供給してきた中国国内の人口移動も
「ルイスの転換点」に到達した。

ルイスの転換点とは、地方の余剰労働力が
人口移動を通じて生み出す
純経済的便益が消滅する転換点のことである。

労働と資本の動きが限定されるにつれて、
経済成長を維持し労働供給の縮小を補うために、
中国は現在、技術水準を
アップグレードしようとしている。

外国企業の流入がなくなり、
外国市場での中国企業による技術獲得に対する
監視が強化される中で、
過去のような技術移転はもはや起こらないだろう。

成長を国内に求めるのではなく外に求めていく戦略として、
中国の「一帯一路」構想にはより将来性がある。

具体的にいえば、それによって、
中国国内における有望なインフラ需要の欠如から生じる
過剰な生産能力を他国へ輸出できるであろう。

一帯一路構想は、中国のみならず、
プロジェクトが実施される多くの国々によって
支持されている。

人口大逆転

中国の人口ピラミッドを改めて見てみると

総人口数 1,425,925,384 100%
少年人口数 249,052,868 17.47%
労働年齢人口数(15〜65歳) 985,665,652 69.12%
高齢者数 191,206,864 13.41%

対して、2022 年の日本の人口分布は

総人口数 124,278,309 100%
少年人口数 14,539,356 11.70%
労働年齢人口数 72,620,161 58.43%
高齢者数 37,118,792 29.87%

中国は、2050年に高齢者人口が
中国総人口の 29.83% を占めるということなので、
ちょうど今の日本と同程度になるということですね。

日本の労働力超過により、
中国やアジアに進出したのと同じことが、
中国では、「一帯一路」構想で行われようと
考えるとよいのでしょうか。

「一帯一路」については、
ブログで一度まとめています。
https://forestofwisdom.net/the-new-map/#toc8

中国については、海外で高い技術を習得した人たちが、
自国に戻るというのが大きな動きなので、
今後、海外からの技術移転がないとしても、
国内で、革新的なイノベーションが
次々と生まれる可能性は高いと思います。

新しい技術を試してみる、十分な大きな市場を
もっているのは、大きな強みだと考えます。

日本は、中国と敵対しないほうがよいと考えます。

逆に台湾にフォーカスさせようとしている
アメリカの動きが気になります。

今、ことを起こすときではないと思います。

あなたは、中国の経済とどのように連携していくのがよいと考えますか。

20220925 中国の経済発展と今後_人口大逆転(2)vol.3542【最幸の人生の贈り方】

高齢化社会の課題

■人口ボーナス

世界銀行は、人口ボーナスをすでに受け取った国と
これから受け取る国との間で、
人口構成サイクルに関する有益な四つの分類を
提示している。

すなわち、
人口ボーナス前の国、
ボーナス初期の国、
ボーナス後期の国、そして
ボーナス後の国
という四つの分類であり、
それらは人口構成の移行期にある
世界経済の状況をうまく捉えている。

高い出生率と低い平均寿命の国は、
まだ人口ボーナスを享受していないグループに属する。

出生率が急落しそのまま低水準でとどまり
平均寿命も世界の頂点に向けて上昇していく国は、
すでに人口ボーナスが終了したグループに属する。

<サイクル初期>
インド、パキスタン、バングラデッシュ、
サブサハラ諸国(約50カ国)、
メキシコ、エジプト、アルゼンチン、アルジェリア、
イラク、アフガニスタン、ウズベキスタン、
ベネズエラ、ネパール、イエメン、ミャンマー、
フィリピン、グアテマラ、エクアドル、カザフスタン

<サイクル中期>
米国、ブラジル、ベトナム、トルコ、イラン、
コロンビア、カナダ、スリランカ、サウジアラビア、
ペルー、マレーシア、オーストラリア、ロシア、
ウクライナ、英国、フランス、モロッコ、インドネシア

<サイクル後期>
中国、日本、ドイツ、タイ、イタリア、韓国、
スペイン、ポーランド、ルーマニア、チリ、オランダ

■労働参加率

Mojon and Ragotは、
ほとんどの国々において、
高齢者の失業率が国全体の失業率を左右し、
高い相関関係にあることを示した。

彼らの研究の結論の一つは、
55~64歳の年齢グループの労働参加は
賃金に対して若い世代よりも
弾力的であることだ。

一方、労働参加率を40%から65%まで
上昇させることよりも、
65%以上にさらに上昇させることのほうが
より困難であることがうかがわれる。

そうであるならば、労働参加率を上昇させるには
65歳以上の年代の労働参加を
増やさなければならない。

さらに、高齢者がどのような仕事ができるか、
どのような仕事をしたいか、という問題がある。

■生産性上昇

全体的な経済成長率を維持するためには、
労働者一人当たりの生産性上昇の
力強い回復が必要になる。

これはとても厳しい目標のように
見えるかもしれない。

しかし、いくつかの期待が持てる兆しもある。

すでに10年にわたり労働人口が減少してきた
日本の労働者一人当たりの生産性上昇率が
他のほとんどの先進国よりも
良好であることである。

■高齢者介護

高齢化に伴って健康が悪化することを考慮すると
より深刻なものとなる。

平均寿命の延びに伴って、

高齢者人口のより大きな割合が、
認知症やその他の依存を引き起こす病気によって
身体能力を失っていくことになる。

その中にはパーキンソン病や関節炎が含まれるが、
しばしば多疾病罹患を伴うケースもあり、
介護が必要になる。

介護は個人的そして感情的なサポートを伴う。

■変化するライフサイクル

平均寿命の延び、さらに認知症件数の増大
という問題のほかに、
マクロ経済的なインプリケーションが
十分に考慮されていない人口構成の変化が存在する。

それは、結婚年齢と女性が第一子を出産する年齢の
上昇である。

認知症は年齢とともに指数関数的に増大し、
社会福祉による介護も限られているので、
現在50~67歳になっている当時の子供たちは、
40年前、50年前とは違って、
今(認知症の)両親のケアをしなければならない状況に
置かれている可能性がある。

今日、扶養家族のケアをする必要がほとんどない
20代の間は給与も低く、
90歳を超えて生きるという見通しが
まったく想像できず、貯蓄には向いていない。

そして、30代以降退職するまで、
あるケースでは連続的に、
自らの子供の面倒を見終わったら、
すぐに両親のケアをしなければならない。

<変化するライフサイクル>

過去のライフサイクルは4段階
0-20 若者
20-40 結婚(就労)扶養子供あり
40-60 就労・扶養家族なし
60-70+  退職

現在のライフサイクルは5段階
0-20 若者
20-30 独身(就労)
30-50 結婚(就労) 扶養子供あり
50-67 就労・扶養両親あり
67-80+  退職 多くの場合、扶養
<ーーーーーーーーーーー>

いいかえると、変化するライフサイクルは、
家計貯蓄率を減少させ、
高齢者が満足する生活と
医療の基準を満たすサービスを提供するために、
公的部門に一般と大きな財政負担を強いる力として
作用することになる。

人口大逆転

日本の認知症の現状について調べてみました。

「厚生労働省:認知症」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html


●認知症とは
認知症にはいくつかの種類があります。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、
脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程で
おきる認知症です。

症状はもの忘れで発症することが多く、
ゆっくりと進行します。

次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの
脳血管障害による血管性認知症です。」

●高齢者の認知症
年をとるほど、認知症になりやすくなります。

日本における65歳以上の認知症の人の数は
約600万人(2020年現在)と推計され、
2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が
認知症になると予測されており、
高齢社会の日本では認知症に向けた取組が
今後ますます重要になります。

●若年性認知症
若くても、脳血管障害やアルツハイマー型認知症のために
認知症を発症することがあります。

65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。

若年性認知症者数は、3.57万人と推計されています。

脳血管障害については、
生活習慣に気を配るというのは、
大きな予防策ではないかと考えます。

また、アルツハイマー型認知症は
現時点で有効な治療法は見つかっていないのですが、
脳萎縮があっても、認知症の症状が見られない事例も
たくさん見つかっています。

病気の心配をするよりも、
認知症の症状を出さない生活習慣を
つくることのほうが大切ではないでしょうか。

そのためのひとつは、
他の人のために貢献するというのがあります。

脳が萎縮したとしても、
やりがいをもって、他のひとのために生きることが
認知症の発症を防ぐとしたら、
だれにとってもよい結果をもたらすのではないでしょうか。

こんな事例を日本から多く発信できるとよいと
考えています。

私は、著者と異なり、楽観的すぎるのでしょうか。

あなたは、認知症について、どのようにとらえていますか。

20220926 高齢化社会の課題_人口大逆転(3)vol.3543【最幸の人生の贈り方】

インフレの再来とライフスタイルの変化の影響

■家計の黒字は失われていく

依存人口比率が上昇するのに伴い、
家計貯蓄率が下落していく。

結婚し家庭を持つ年齢の上昇、特に出産の高齢化は、
家計の投資/貯蓄バランスに影響を与えることになる。

40代で出産する女性の増加に注目すべきだ。

1970年代および1980年代には、
ほとんどの人々は20代で結婚し、
35歳になるまでには子供を
ほとんど出産し終わっていたものだ。

そして、40代後半になるまでに
子供たちは自立して家を出て行った。

その場合には子供の世話に妨げられることなく、
20年間ほどは退職後の生活を
計画し貯蓄する準備期間があったことになる。

最近では、こうした節目の年齢がすべて
数年単位で上方にシフトしている。

30歳未満の未婚の若者たちは
高齢退職期間の確率を割り引いて考える傾向があるので、
老後のための十分な貯蓄を行わないと考えられる。

さらに、若者たちの失業や住居費および
長期にわたる教育にかかる費用の増加によって、
子供たちは実家により長く居住し続けている。

若者の視点からすれば、
実家に居続けることは家賃や他の設備の節約になる。

しかし、例えば、住宅購入の頭金や人的資本形成など
将来の目的のために、彼らは貯蓄を配分する必要がある。

親の立場からすれば、
最も重要な老後のための貯蓄期間を大きく縮小
(例えば、45~65歳の期間を52~67歳の期間に短縮)
することになる。

住居費と教育費の増加は
両親の銀行預金にプレッシャーをかける。

もしその銀行預金から子供たちに資金提供するのであれば、
将来の退職生活のために貯蓄する資金が減少することになる。

■高齢者の公的サポート

労働者から高齢者へかなり大きな所得移転が行われている。

第一に、高齢者の支出の中で
医療費が大きな割合を占めていることである。

特に、人生の最終段階においてその傾向が顕著である。

医療の多くは公的部門(英国では国民健康保険、
米国ではメディケイドとメディケア)
によって無料で提供されている。

第二に、医療費を払えない高齢者が
貧困に落ち込むのを防ぐために、
ほとんどの先進国にはセーフティネットが存在する。

■短期金利と長期金利

少なくとも短期、中期においては、
短期金利は公的な采配によって決まる。

一方、長期金利はより市場の力によって決まる。

大まかにいえば、現在の政治の流れからすると、
短期金利は今後数十年にわたって
インフレ率よりも低く抑えられる可能性が高いだろう。

それとは対照的に、この新しい厄介な世界が
目の前に現れてくるにつれて、長期金利は上昇し始め、
インフレ率よりも高く上昇する可能性が高い。

人口大逆転

寿命が伸びるにつれて、
結婚や出産年齢が上にシフトしていることにより、
老後の資産形成に悪影響を与えているという
視点はそのとおりだと思います。

さらには、老後自体が延びているのですから、
高齢者がコストとしか見られないなら、
いよいよ悪化するばかりでしょう。

が、どうなんでしょう?

今の60代は、1世代、2世代前の60代とは
明らかに健康度が異なると思います。

55歳で引退していたら、
まだ半分近く残っている人生を
どう過ごすのでしょうか。

社会に貢献し続ければよいのだと思います。

若者に依存したり、若者を支配したりするのではなく、
若者と協業すれば、よりよい社会になるのではないでしょうか。

住宅需要はどうなのでしょう。

日本の空き家についての調査を調べてみました。

最新は総務省の平成30年住宅・土地統計調査結果です。
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html

2018年における空き家の戸数は849万戸あり、
全住宅のうち13.6%を占めています。

空き家のうち、約50%がアパート等の賃貸住宅の空き家ですが、
空き家問題で問題とされるのは
売却するのでもなく、貸すのでもなく、
ただ放置されているだけの空き家が全体の約40%を占め、
しかもその割合は増加傾向にあることです。

建築中の物件は減少傾向にありますが、
人口減少がそれを上回り、
空き家が増加しているともいえます。

住宅需要に関する著者の主張は、
少なくとも、日本ではあてはまらないようです。

新築にこだわらなければ、
住むところに困ることはないのではないかと
私は楽観視しています。

あなたは、高齢者がどのように生活しているのが、望ましい社会だと考えますか。

20220927 インフレの再来とライフスタイルの変化の影響_人口大逆転(4)vol.3544【最幸の人生の贈り方】

高齢化と労働力の減少が日本でインフレを引き起こさなかった理由

■1990年代から現在までの日本

1990年代初期から現在までの期間を
日本経済の一つの時代とみなすのは間違いである。

2000年以降は、経済状態は回復し、
より健全になってきている。

労働力が年率1%で減少したにもかかわらず、
生産量は年率1%で成長してきた。

両者の差は生産性の向上である。

労働者一人当たりの生産量は平均して
年率2%で増加してきたことになる。

世界のほとんどの他の先進国であれば、
仮に過去20年間労働者一人当たり年率2%の
生産性向上を提示されたら文句なしに大歓迎だろう。

日本の労働力が減少するにつれて、
平均年率0・5%のインフレのもとで
賃金はほとんど停滞し続けた。

これらの出来事はすべて低い失業率のもとで起こった。

国内の労働力が減少するという条件のもとで、
2000年以降、日本経済のパフォーマンスは
実際にはむしろ良好であったといえる。

■日本の3つの課題

それでは日本の何が問題なのか?

三つの主要な課題がある。

第一に、生産量の増加が貧弱な状態が続いている。

全生産量の増加という点では、
他国に比較して日本は確かに貧弱に見える。

しかし、人口一人当たりの生産量は低いが、
労働者一人当たりの生産量で測る生産性は
2000年以降ほとんどの先進国よりも良い状態にある。

第二に、インフレ率が低いままである。

年率0・5%ほどのインフレ率が
本質的に望ましくないかどうかは議論の余地があるが、
日本銀行のインフレ目標は首尾一貫して2%であって、
その目標を達成することに失敗している。

第三に、そもそも日本の失業率はけっして高くはないが、
それにしても欧米諸国の基準では
非常に低い水準まで低下したにもかかわらず、
それが賃金の上昇を引き起こしていないことである。

■日本の国内投資

日本の国内投資についてのストーリーは、
きれいに二つの時代に分類できる。

企業活動が拡大していた沸き立つ
1960年代、1970年代、そして1980年代は、
失われた10年とその後数十年に及ぶ
貧血状態の時代とは大きく異なっている。

●1 企業活動の拡大:沸き立ち酔いしれた時代

第一に、日本は「奇跡」と呼ばれた
1960年代と1970年代に急速な資本蓄積を行った。

その時代、人口構成には追い風が吹いており、
通産省(MITI)は日本経済が日陰から急速に上昇するのを
巧みに組織化した。

日本の国土面積は世界のたった0・3%にすぎず、
人口も世界人口のわずか3%であるにもかかわらず、
1976年には日本が世界生産量の10%を
占めるようになっていた。

第二に、1985年のプラザ合意以降、
資本蓄積は急速に増加した。

1960年代と1970年代が奇跡的な経済であるとすれば、
プラザ合意以降の時代は典型的なバブル経済であった。

●2 数十年の投資ブームから数十年の投資不況へ

1991~1992年に起こった株価、地価、住宅価格の
バブル崩壊によって、
日経平均株価は約4万円の高値から
最終的に1万円以下の底値まで下落した。

失われた10年のほとんどの期間、
投資の伸び率は消費の伸び率よりも低かった。

投資全体に占める製造業の割合は、
1980年代初めの45%から
2002年には30%ほどの水準まで下落した。

製造業の雇用もその影響を免れることはできなかった。

製造業の雇用者数割合は、
1970年代後半には全体の約28%、
資産バブル崩壊直前には25%だったが、
2017年には16%あまりにまで下落した。

日本企業は積極的に利益最大化行動を
海外に拡張していったのである。

彼らは、日本国内のもがく経済と減少していく
高コストの労働力に依存するのではなく、
成長が期待できる海外の安価な労働力市場へ
戦略的に生産拠点を移転することによって、
利益最大化を成し遂げていったのである。

●3 海外直接投資:日本の国境を越えた投資ブーム

1985年以降の急激な円高が、
当時の日本企業には新しい選択だった海外直接投資の
引き金になった。

日本の海外直接投資は2017年にほぼ20兆円近くに達していた。

これは1990年代半ばの水準に比較すると
6倍以上の増加にあたる。

1990年代の中頃、
国内投資が急速に減少していたまさしくその時に、
海外直接投資は年率7%で成長していた。

それとは対照的に、1990~2002年の間、
日本の国内投資は平均年率4%、
非製造業の投資は同じく2%も減少した。

海外資本投資比率は1985年には3%であったが、
1997年には4倍の12%に、
そして2013年には30%に到達した。

事業の海外展開は魅力があり
何十年にもわたって積極的に追求されてきたが、
日本企業は海外で得た利益を
本国に送金しようとはしなかった。

日本国内では、海外直接投資は
あまり望ましくないものとして注目を集めている。

海外直接投資は国内雇用の減少につながる
「産業の空洞化」を引き起こすとして、
多くの人々が懸念しているためだ。

■日本国内の雇用再配分

製造業と農業部門の就業者の割合は、
1996年のそれぞれ22%、5%から
2018年の16%、3%というように
直線的に下落している。

減少分は、当然のことだが、
サービス業に移動している。

製造業とは違って、多くのサービス業は
海外に移転したり輸入したりすることはできない。

日本企業が自らを守るために戦略的に、
そして目的を持って生産性の向上をめざして
行動するのに伴って、
企業の生産活動と雇用は日本の国内および海外の両方に
新たに割り当てられた。

こうした努力は、失われた10年からの脱出を
可能にしただけでなく、
世界のほとんどの先進国を上回る実績となる
労働者一人当たり生産性を実現した要因として、
認識される必要がある。

■高齢化と労働力の減少が
日本でインフレを引き起こさなかった理由

われわれは、高齢化と労働力の減少が
日本でインフレを引き起こさなかった理由は
三つあると考えている。

●1 グローバル化

製造業を中心とした日本の貿易財部門は
生産拠点を海外、特に中国に移転した。

これは、製造業の雇用が
賃金の高い内部の仕事から
賃金の安い外部の仕事(outsiderjobs)へと
シフトしたことを意味した。

●2 インサイダー対アウトサイダー

日本では、企業の内部労働者の忠誠は
労働組合よりも主に彼らの会社に向けられる。

その忠誠に対する雇用者側の約束は、
景気後退時に雇用を守ることである。

日本の雇用は多くの労働者を解雇することによって
素早く調整できないので、
労働市場の調整は雇用構造の変化と、
労働時間および賃金に対する容赦のない下方圧力によって
行われた。

悪化する成長期待に直面して、
被雇用者たちは失業のリスクを冒すよりも
賃金カットを受け入れた。

また企業にとって長期雇用契約の対象外である
非正規雇用者の賃金コストは
コントロールしやすかった。

パートタイムすなわち非正規労働者の役割は、
コスト圧力が強くなるのに伴って増大した。

全雇用に対するその割合は、
1990年の13%から2018年には30%近い水準まで上昇した。

●3 労働参加率

日本は世界の最先端を行っている。

最近の数十年において、他のどの国よりも
労働力における55~64歳の人口比率が上昇している。

日本では「高齢者予備軍」がどこよりも
効率的に動員されている。

日本の55~64歳人口の労働参加率は
過去数年間に加速度的に上昇してきており、
現在75%にまで達している。

この数値を超えているのは、
ニュージーランド、スウェーデン、アイスランドの
3カ国のみである。

65歳前の年齢集団で労働参加率が上昇しているのは
日本だけではない。

この一般的なトレンドには
少なくとも二つの理由がある。

第一に、寿命の延びに伴い事前に見込んだ貯蓄では
不十分であることに多くの人々が気づいたことである。

第二に、年金給付の減少(政府の財政負担を軽減するために)が
一般化してきていることである。

65歳以上の高齢者に関しても、
日本の労働参加率は25%近くあり、
OECD諸国ではトップグループに属する。

■なぜ欧米諸国は日本の後に続かないのか

日本で起こったことはほとんどすべて、
高齢化が進む欧米諸国には当てはまらないのである。

第一に、これから30年間に起こる世界の状況は、
過去30年間とはまったく異なるものになる。

これからの30年間は人口構成の逆風の中で
もがくことになる。

第二に、日本型の労働市場慣行は
欧米諸国には応用できない。

例えば、ユーロ圏には解雇に伴う深刻な経済コストが存在するが、
日本のような社会的制約に直面する欧米諸国は一つも存在しない。

第三に、先進国においては、
過去20年間に労働参加率がすでに上昇してきている。

人口大逆転

生涯現役を目指している私としては、
日本の55~64歳人口の労働参加率が75%、
65歳以上の労働参加率は25%近くは、
望ましいことだと考えています。

改めて、日本の現状を見てみると、
非正規労働者が依然増えているようです。

「総務省統計局:労働力調査(基本集計)2022年7月分」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

・就業者数は6755万人。前年同月に比べ2万人の減少。

・正規の職員・従業員数は3609万人。前年同月に比べ17万人の減少。
非正規の職員・従業員数は2105万人。前年同月に比べ32万人の増加。

・主な産業別就業者を前年同月と比べると、
「卸売業,小売業」、「製造業」、「建設業」などが減少
「情報通信業」、「医療、福祉」、「サービス業」、「教育」、などが増加

・非労働力人口は4101万人。前月に比べ3万人(0.1%)の増加。

日本の問題点を挙げるとすると、
男女格差が大きいことが最も大きな問題ではないでしょうか。

先進国として恥ずかしいことだと考えます。

「男女共同参画白書 令和3年版」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r03/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-03.html

我が国の男女の生産年齢人口の就業率を
他のOECD諸国と比較すると,
令和元(2019)年において35か国中,
男性は84.3%でアイスランド及びスイスに次いで3位であるが,
女性は71.0%で13位となっている。

また,男女の就業率格差を比較すると,
我が国は13.3%ポイントで9番目に格差が大きい。

日本の現代史を振り返ってみると、
戦後の日本の高度成長はうまくいきすぎて、
1980年代後半には、生産過剰、資本過剰になってしまい、
それがバブル経済になってしまった
ということになります。

その後10年で、海外直接投資に軸を移すことで、
製造業は生き残ってきました。

しかし、それも行き過ぎて、
産業の空洞化を招いてしまい、
国内雇用の減少につながったようです。

米国の場合は、雇用で調整されたために、
社会的な分断が大きな問題となっていますが、
日本の場合は、労働時間と賃金を抑えることで
雇用を確保しつつ、
非正規雇用も増やしてきたというのが
大きな流れです。

就職氷河期世代が大きく割をくったということになります。

あなたは、どんな働き方・生き方が、暮らしやすい社会につながると考えますか。

20220928 高齢化と労働力の減少が日本でインフレを引き起こさなかった理由_人口大逆転(5)vol.3545【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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