上流思考──「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

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上流思考──「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
Upstream: The Quest to Solve Problems Before They Happen

ダン・ヒース(著), 櫻井祐子(翻訳)
ダイヤモンド社 (2021/12/15)

ダン・ヒース Dan Heath
テキサス大学オースティン校を卒業後、Thinkwell社を共同創設、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。現在はデューク大学ビジネススクール社会起業アドバンスメントセンター(CASE)でシニアフェローを務めている。兄チップとの共著に『アイデアのちから』(日経BP)、『スイッチ! 』『決定力! 』(ともに早川書房)、『瞬間のちから』(ダイレクト出版)がある。著書は世界300万部以上を売り上げ、33言語に翻訳されている。米国ノースカロライナ州ダーラム在住。

櫻井祐子 さくらい・ゆうこ
翻訳家。京都大学経済学部経済学科卒。大手都市銀行在籍中にオックスフォード大学大学院で経営学修士号を取得。訳書に『1兆ドルコーチ』『Joyful 感性を磨く本』(ともにダイヤモンド社)、『NETFLIXの最強人事戦略』(光文社)、『CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見』(文藝春秋)、『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』(日本経済新聞出版)、『BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル全真相』(共訳、集英社)などがある。

上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

■問題盲

悪い結果はあたりまえ、
または避けられない、
自分にはどうすることもできない、
という思い込みである。

目をつぶってしまえば、
問題は天気のようになる。

天気が悪くても、肩をすくめるしかない。

だからって、どうしろというんだ?

天気なんだから仕方がないだろう。

問題盲は、これから見ていく上流思考を阻む
3つの障害の1つ目だ。

見えない問題は解決できない。

そして問題が見えないせいで、
大きな害がおよびそうなときでさえ、
どうしようもないとあきらめてしまう。

上流に向かうには、
まず問題盲を克服しなくてはならない。

上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

問題盲の事例としてとりあげられていたのは、
以下の内容です。

「スポーツとはケガをするものだ。」

「高校を卒業できないのは、自己責任であり、
シカゴで中退率が高いのは仕方がない。」

「セクハラは当たり前。」

「帝王切開を女性も医師も望んでいる。」

自分が当たり前だと思っているものは、
他の人、他の社会、他の時代では、
当たり前でないことが多いです。

だから、他の人のものの見方や考え方、
海外での状況、歴史から学ぶことは、
とても大切だと考えます。

当たり前だと思っていることに、
自分が一番気がつかないものです。

それが、よい習慣、よい環境を作り出す当たり前だったら、
よいですが、
あきらめや我慢につながる当たり前だったら、
気づいたほうが解決につながりますね。

個別に筋肉の使い方を分析し、
トレーニング方法を変えることで、
シーズン22件のハムストリングス損傷が
3件に減った。

指導方法を変えることで、
高校の卒業率が50%から78%に上昇した。

3%の自然分娩率が、40%に上がった。

これを機会に、私もあきらめている当たり前を
探してみたいと思います。

あなたが仕方ないと思っている、当たり前はどんなものがありますか。

20220127 上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法(1)vol.3301【最幸の人生の贈り方】

当事者意識の欠如とトンネリング

■当事者意識の欠如——
自分で解決できるのに気づかない

当事者意識の欠如は、
「問題を解決できる立場にある人が、
それを解決するのは自分ではないと
思ってしまうこと」だ。

なぜ問題が「当事者」を失ってしまうことが
あるのだろう?

利己主義が妨げになる場合もある。

「責任の細分化」という、罪のない理由が
妨げになることもある。

また、自分には問題に対処する資格がないと
思い込んで傍観してしまう場合ある。

問題を解決した人たちが胸に問いかけたのは、
「この問題を解決できる人はいないのか?」ではなかった。

「自分はこの問題を解決できるだろうか?」だった。

問題を自分のものとして受け止めたのだ。

■トンネリング——
「目の前の問題」しか見えなくなる

お金や時間、心のゆとりなどが
欠乏していると感じるとき、
大きな問題が小さな問題を
意識の外に締め出すのではない。

困ったことに、小さな問題が大きな問題を
締め出してしまうのだ。

「トンネリング(視野狭窄)」と呼んでいる。

トンネリングのたちが悪いのは、
際限なく繰り返されるからというだけではない。

トンネリングには達成感があるのだ。

大失敗を土壇場で防いだ人は賞賛される。

トンネルから脱するにはどうしたらいいのか?

「ゆとり」が必要だ。

ここで言うゆとりとは、問題を解決するための
時間的、金銭的な余裕のことだ。

トンネルの外に出て、
システム全体に関わる問題を考えるために確保された、
まとまった時間である。

上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

私が管理職になったときのことです。

入社して以来、サービス部門に所属していましたが、
昇進と同時に、製品ブランド部門に異動になりました。

マーケティングと営業を担当する事業部に
移ったのです。

私は、ごく一部しかやったことのなかった
「提案」に携われるようになると、
ワクワクしたのです。

しかし、異動してみると、
提案作業は、技術力のある部下の仕事で、
私の仕事は、もっぱら問題対応だったのです。

営業職になったのに、事実上、
トラブルサポートが仕事の多くを占めたのです。

なんじゃ、これは。。。

もちろん、問題は、一つ一つ解決していきますが、
次々に発生します。

そんな時、上司がこんなことを
アドバイスしてくれました。

「品質向上プロジェクト」を行おう!

このために、製品の開発とサービス、サポートに関わる
国内外の組織を巻き込み、
そもそも問題が発生しないように、
起きても、できるだけ早く解決できるよう、
策を練ったのです。

これは、非常によい効果がありました。

国内、海外の開発部門には、
事前にテストケースを増やしてもらうことが
できました。

サポート部門に、トラブルサポートの
主管をもってもらい、
営業部門から開発部門にエスカレーションしなくても
よいようになりました。

完全にトラブルがなくなるわけではありませんでしたが、
本来やりたかった、市場の開拓や、コミュニティの構築などに
とりかかれるようになったからです。

もともと、当事者意識の欠如もあったのだと
思います。

営業部門で、製品を開発していないのに、
製品の品質向上なんて、できるの?

サポートまで、なんでやらなくてはいけないの?

そして、毎日次々に襲いかかるトラブル報告で、
目の前のモグラをたたくのに一生懸命で
トンネリングも起きていたのだと思います。

振り返ってみると、決して楽ではなかったけれど、
よかったプロジェクトだと思います。

あなたは、今まで、お金、時間、心のゆとりがない状態をどのように脱しましたか。

20220128 当事者意識の欠如とトンネリング_上流思考(2)vol.3302【最幸の人生の贈り方】

上流リーダーになれる7つの質問

■「しかるべき人たち」をまとめるには?
——多様なメンバーで問題を「包囲」する

■「システム」を変えるには?
——目の前の「水」に目を向ける

■「テコの支点」はどこにある?
——問題に寄り添う

■問題の「早期警報」を得るには?
——価値の大きい警報を見抜く

■「成否」を正しく測るには?
——「幻の勝利」に気づく

■「害」をおよぼさないためには?
——「フィードバックループ」で改善する

■誰が「起こっていないこと」のためにお金を払うか?
——「払った人が得をする」仕組みをつくる

上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

問題が発生したあとに対応する下流であれば、
成果は誰でも目に見えるものですが、
上流の場合には、成果が測りにくいものです。

また、運良く、自分たちの取り組み以外で
よい成果がでることもあるかもしれません。

新型コロナウイルスは、
わかりやすい事例の一つかと思います。

何を制限したら、感染の拡大を
効果的に防止できるのか。

どんな対策が、功を奏したのか。

経済活動を下支えするためには、
誰を助けるべきか。
どんな方法で助けるのがよいのか。

やってみたら、想定外の影響を引き起こすことも
あるでしょう。

後知恵で批判することは簡単ですが、
やってみなければわからないことも
たくさんあります。

そんなことを世界中で試されているのが、
現在の社会だと感じています。

そして、この上流思考が最も必要とされるのは、
気候変動の課題だと思います。

あなたは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、どのような対策をしていますか。

20220129 上流リーダーになれる7つの質問_上流思考(3)vol.3303【最幸の人生の贈り方】

ハリケーン・カトリーナ

■予言者のジレンマ
——「いまそこにない危機」に対処

2004年に数百万ドルの予算が下りた。

ベリワールの会社IEMが
80万ドルで契約を受注し、
ニューオーリンズと周辺地域の
ハリケーン対応計画を策定する任を与えられた。

IEMは猛スピードで防災演習の計画立案に取り組み、
ふつうならずっと長くかかるところを
たった53日で完成させた。

ハリケーンの季節が迫っていた。

IEMは2004年7月、
約300人の主要関係者を
バトンルージュに1週間集めた。

FEMAのほか、ルイジアナ州の20を超える政府機関、
13の行政区、国立気象局、15を超える連邦機関、
ボランティア団体、
ミシシッピとアラバマの州機関の代表などが
集まり(問題を包囲した)、
IEMのチームが策定した模擬演習、
その名も「ハリケーン・パム」を行った。

模擬演習から13か月を経た2005年8月末、
ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを襲った。

カトリーナの5か月後に上院で行った証言で、
ベリワールは模擬演習と実際の被害を
比較した表を提示した。

架空の「ハリケーン・パム」:実際の「ハリケーン・カトリーナ」

降雨量500ミリ:降雨量450ミリ

3〜6メートル冠水:最大6メートル冠水

5万5千人以上がハリケーン上陸前に公共避難所に退避:
約6万人がハリケーン上陸前に公共避難所に退避

110万人以上のルイジアナ市民が避難生活:
ルイジアナ市民を中心に100万人の住民が長期の避難生活

直撃当日ルイジアナで78万6539人が停電被害:
直撃翌日ルイジアナで88万1450人が停電被害

気味が悪いほどそっくりだ。

そこで当然の疑問が浮かんでくる——
どうしてあんな大惨事になってしまったのか?

ベリワールが上院委員会で示した比較表には、
続きがもう2項目あったのだ。

ハリケーン・パムとハリケーン・カトリーナの
最大の違いを示す2項目である。

架空の「ハリケーン・パム」:実際の「ハリケーン・カトリーナ」

死者6万人以上:
死者数1100人、行方不明者3000人超

上陸前に住民の36%が避難:
上陸前に住民の80〜90%が避難


「科学的な予想は的中しました。
大きく外したのは死者数だけです。

私たちの予測では、
6万人以上の死者が出る見込みでした。

そしてあの恐ろしい状況にあっても、
実際の死者数は1700人でした。
(その後、死亡者が確認され、死者数が増えた)

この違いを生んだのは、一方通行化でした。」

「一方通行化」とは、公共交通における緊急措置で、
高速道路の全車線を一時的に一方通行にすることを言う。

理屈の上では合理的な方法に思える。

すべての交通は災害地域から避難する方向に
流れるべきだ。

ニューオーリンズは前年のハリケーン・アイヴァンのときに
一方通行化を試していた。

このときの一方通行化は大失敗に終わった。

高速道路はたちまち渋滞し、
高架道路に12時間取り残されたドライバーもいた。

ハリケーン・アイヴァンは最終的に東にそれ、
ニューオーリンズは直撃を免れた。

ハリケーン・パムの模擬演習と
ハリケーン・アイヴァンでの現実の失敗を踏まえて、
州は一方通行化計画を徹底的に見直した。

重要な教訓として、近隣の州当局と緊密な連携を図り、
市民との意思疎通を改善することの大切さが
認識された。

ハリケーン・パム演習は、上流活動の模範例である。

しかるべき人たちを集めて、
問題が起こる前にしかるべき問題を話し合った。

模擬演習を行ったのは正解だったが、
主要関係者が集まったのは、
残念ながらこのとき1回限りだった。

どんなによくできた訓練でも、
たった一度行うだけでは十分な備えにならない。

緊急事態の模擬演習は完璧な予測ではなく、
あくまで合理的な予測にすぎない。

だから理想的には、何度か練習する機会を
関係者に与えたい。

どんな緊急事態にも通用する
知識やスキルを習得させたいからだ。

そうしておけば、いざ災害が襲っても、
関係者はお互いを知っている。

システムのつながりを理解している。

必要な資源をどこから得られるかを把握している。

「予言者のジレンマ」というものがある。

誰かが何かを予言すると、
誰もがそれを避けようと気をつけるので、
結局予言は実現せず、
予言者は嘘つき呼ばわりされる、というジレンマだ。

自己破壊的な予言とも言う。

上流思考「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

対策はとっていたのに、
甚大な被害が起こった事例として紹介されているのが、
「ハリケーン・カトリーナ」です。

街全体が水没した映像は、衝撃的で、
今でも記憶に残っている災害の一つです。

そして、知らなかったのは、
1年前に大規模な模擬演習が行われていて、
さらにその後の実際のハリケーンでの対策の失敗を
ふまえたうえで、
「ハリケーン・カトリーナ」を迎えたということでした。

この結果、上陸前に
災害地域から避難が行われ、
死者が6万人の予想から、
1700人に減らすことができたのは、
すごいことだと思いました。

日本も災害大国であり、
予想されている大きな地震もあります。

学べることはたくさんありそうです。

PTAの役員をやっているときに、
学校を使った避難所運営訓練に
参加したことがあります。

学校の倉庫のどこに、災害グッズがあるのか。
どこの米屋さんに米をもらいにいくのか。
大釜用のコンロにどうやって火をつけるのか。
どのように炊き出しを行うのか

そんなことを役所の指導をもらいながら、
分担してやっていくのです。

本当の災害になったら、
役所の人には来てもらえないので、
住民が自力で避難所を運営する必要があります。

こういう地道な日頃の準備が、
大切なのだなあと改めて思いました。

以前は、自宅での災害の備蓄は
3日間を基本にしていましたが、
最近は、1週間とも言われています。

まあ、最悪、水と米と味噌があれば、
生きていけるだろうと
期限を切らしてばかりの防災食を
そろえるのはやめました。

そして、日常備蓄に変えることで、
賞味期限切れを防いでいます。

こういう生活の知恵も上流思考と
いえるのではないでしょうか。

東京では防災ブック「東京防災」を配布していて、
とてもよい内容なので、共有しておきます。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1002147/1008042/1008074.html

あなたは、防災のために、どのような対策をしていますか。

20220130 ハリケーン・カトリーナ_上流思考(4)vol.3304【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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