21世紀の教育 子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点

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21世紀の教育 子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点
The Triple Focus: A New Approach to Education

ダニエル・ゴールマン(著), ピーター・センゲ(著), 井上英之(監修, 翻訳)
ダイヤモンド社 (2022/3/29)

ダニエル・ゴールマン Daniel Goleman
作家、心理学者、ジャーナリスト。ハーバード大学大学院で心理学の博士号を取得。ハーバード大学で教鞭をとったのち、「サイコロジー・トゥデー」誌のシニア・エディターを9年間務める。1984年からは「ニューヨーク・タイムズ」紙に主に行動心理学について寄稿。1995年に発表した『Emotional Intelligence(邦題:EQ こころの知能指数)』は全世界500万部(日本でも80万部)を超える大ベストセラーを記録した。CASEL共同創設者。

ピーター・センゲ Peter Senge
マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師、組織学習協会(SoL)創設者。MITスローンビジネススクールの博士課程を修了、同校教授を経て現職。旧来の階層的なマネジメント・パラダイムの限界を指摘し、自律的で柔軟に変化しつづける「学習する組織」の理論を提唱。20世紀のビジネス観に最も大きな影響を与えた1人と評される。その活動は理論構築のみにとどまらず、ビジネス・教育・医療・政府の世界中のリーダーたちとさまざまな分野で協働し、学習コミュニティづくりを通じて組織・社会の課題解決に取り組んでいる。著書に、『学習する組織』『学習する学校』(ともに英治出版)など。

井上英之 いのうえ・ひでゆき
「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版」共同発起人、INNO-Lab International 共同代表。慶應義塾大学卒業後、ジョージワシントン大学大学院に進学。外資系コンサルティング会社を経て、2001年、NPO法人ETIC.に参画。日本初の、ソーシャルベンチャー向けプランコンテスト「STYLE」を開催するなど、若い社会起業家の育成・輩出に取り組む。2003年、社会起業むけ投資団体「ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)東京」を設立。2005年より、慶應義塾大学SFCにて「社会起業論」などの、社会起業に関わる実務と理論を合わせた授業群を開発。「マイプロジェクト」と呼ばれるプロジェクト型の学びの手法は、全国の高校から社会人まで広がっている。2009年に世界経済フォーラム「Young Global Leaders」に選出。近年は、マインドフルネスとソーシャルイノベーションを組み合わせたリーダーシップ開発に取り組む。2022年より、さとのば大学名誉学長(Chief Co-Learner)を務める。

世界がより小さくなり、より緊密につながっていくなかで、誰もが世界の課題に向き合う時代には、世代を問わず、人種を問わず、性別を問わず、互いに学びあうことが大切だと改めて思いました。

その手段として、教育はとても重要であると考えます。

文化や価値観のぶつかり合いをどう乗り越えていくかが、人類の古来からの課題であり、現代でも挑戦する価値のある課題だと考えます。

21世紀の教育―子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点

■「学び」

この本は、人生をつくる要素であり、
喜びでもある「学び」をテーマにしている。

そこに人がいて、その人の人生や
社会の営みをつくる場所には必ず「学び」があり、
それは、仕事でも遊びでも、
あらゆる場所に存在している。

すべての人は学校以外の場所でも学んでいるのだ。

この「学び」というものの本来の姿と、
いまの学校や教育のあいだにギャップが生じている。

■「教える」から「学ぶ」へ

いま世界の教育は、
ルネッサンスのような状況の中にある。

プロジェクト型の学習(PBL)、反転授業など、
知られているだけでもけっこうな数になる。

それらが幼児教育から高校教育にまで
展開され始めていて、素晴らしいことなのだが、
それぞれに関わる人が個別に
どれかのファンになっている。

全体としてはバラバラになってしまっている印象がある。

これを、もう一歩引いて全体をながめてみたとき、
1つのキーアイデアがあるんじゃないか。

この教育の変容の中心にあるのは、
すべては「学ぶ」(Learning)についてのことで、
「教える」(Teaching)ということじゃない、
ということだ。

■何を学ぼうとしているのか

そして僕たちはいま、何を学ぼうとしているのか?

それは「すべてが相互につながっている」
(interconnectedness)ということを理解することだ。

この世界は、かつてないほど相互依存している。

インターネット上のつながりも、
人類の振る舞いと地球環境も。

その一方で、孤立や分断も起きている。

ある学生が、センゲさんの授業レポートにこう書いた。

「私たちの相互依存が強くなればなるほど、
つながればつながるほど、
私たちは同時に分断もしている気がする」

■子どもたちに手渡したい「トリプルフォーカス」

この本のテーマは、原題となっている
「トリプルフォーカス」(The Triple Focus) だ。

3つのフォーカスとは、
「自身」(inner)、「他者」(other)、「外の世界」(outer)だ。

そして、3つのフォーカスそれぞれには技術があり、
大切なのはこの3つをつなげた全体感を持つことだ
と言っている。

新しい選択肢をつくれるように子どもたちにとって、
いまの世界はどんな世界なんだろうか?

トリプルフォーカスには、
答えの見えにくいいまの世界で、
子どもたちに贈るツールとしての願いが込められている。

子どもたちが新しい選択肢をつくれるように。

そして、これに関わる私たち自身が、
より良い現在をつくり、
より良い未来への準備ができるように。

子どもたちや未来の世代にとっての、
より良い祖先となれるように。

21世紀の教育

あのEQ(感情的知性)を広めたゴールマンと
『学習する組織』のピーター・センゲが、
教育について、共著を書いていたなんて、
知らなかったと驚き、この本を手に取りました。

監訳者の井上英之さんが
日本で多くの人に読んでもらいたいと
出版社に持ち込み、
原著が出てから8年経ってようやく
日本語の出版になったいうことです。

井上英之さんは、かなり精力的に活動していて、
いろいろなサイトで見かけることができました。

「子どもたちが新しい選択肢をつくれるように。

そして、これに関わる私たち自身が、
より良い現在をつくり、
より良い未来への準備ができるように。

子どもたちや未来の世代にとっての、
より良い祖先となれるように。」

翻訳者まえがきに書かれている言葉は、
そのまま私の願いでもあります。

そして、
「私たちの相互依存が強くなればなるほど、
つながればつながるほど、
私たちは同時に分断もしている気がする」
という感じを持っている人も
多いのではないでしょうか。

世界はどんどんつながっているのに、
先進国は、第3次世界大戦の心配をしている。

けれども、世界の多くの国は、
中立の立場を守って、見守っています。

自分たちが見てる世界が、
世界そのものということではありません。

そんな気づきもこの本から
得られたらなあと期待しています。

この本は数回に分けて、
メルマガでとりあげます。

あなたは、子どもたちにどんな教育の経験をもってもらいたいですか。

20220503 21世紀の教育―子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点(1)vol.3397【最幸の人生の贈り方】

子どもの人生を変える教師の存在

■子どもの人生を変える教師の存在

一般に学びというのは、
あたたかく、支えられていると感じる環境にあるとき、
いちばん効果的だ。

子どもたちは、安全で、サポートされ、
大切にされていて、近しく、つながりも感じている。

そのような空間では、子どもの脳は
認知的な学習効率にとって最適な状態となるし、
誰かを思いやるのにもよい状態になる。

ハイリスクな状況にもかかわらず、
最終的には素晴らしい人生を歩んだ人、
そんなレジリエンスのある人たちに関する研究が
明らかにしているのは、多くの場合、
彼らの人生を変えた人というのは、
ひとりの気にかけてくれた大人なのだ、
ということである。

そしてたいてい、それはひとりの教師なのだ。

このように相手を思い、
心からの配慮を示すことは、
教室の中だけでなく、
学校全体にとっても重要だ。

学校の運営者は、教員たちにも配慮し、
学校が彼らにとっての安全基地に
なるようにする必要がある。

人は安全基地を持っているとき、
その人の思考は最高の状態で働き、
その人の力は最もよいかたちで発揮される。

賢くリスクを取ることもできるだろう。

また、イノベーションを起こし、
創造的で、熱中しながら、モチベーションを感じ、
何より、ほかの人たちに気持ちを向けることができる。

誰かの力になろうという、
コンパッションも湧き上がりやすくなっている。

対照的に、不安を感じるほど、
人はより自己中心的になる。

周りの人にも、
自分を取り巻くシステムにも無関心になり、
自分のことだけを考えるようになる。

21世紀の教育

現在、学校の先生は、本当に忙しいと感じています。

担任の先生に不満を抱く、保護者の意見も
聞いたことはありますが、
先生を取り巻く状況は、とても厳しいとも思います。

私は子どもたちが高校まで、なるべく、
PTAという形で関わってきました。

一つには子ども経由のコミュニケーションでは、
学校の状況が把握できないからです。

私自身の反省点の一つとして、
中学から進学校に進んだために、
地域と切り離されてしまったということが
ありました。

進学校に進んだことは、
学業の面ではプラスだったかもしれませんが、
地域とのつながりという点では、
残念に思っていたのです。

ですので、子どもたちが小さいときには、
転校しなくてもいいように、
転居をしました。

結果、子どもたちによい影響を与えたのかどうかは
わかりませんが、
私自身にとっては、地域と学校の関係を知る
よい機会となりました。

教師を支える存在として、
学校運営者だけに丸投げするのは、
ちょっと無責任かと思います。

保護者も地域も学校の運営を支援することで、
子どもたちにとってのよい教育環境ができると
実感しました。

たまたま、私が恵まれていただけのことかもしれませんが、
どこのPTAでも、よい仲間に巡り合うことができました。

先生との良好な関係を作ることもできました。

もちろん、力不足のこともありましたが、
できる人ができることをやる、
という考え方で、助け合いながら、
やればよいのではないでしょうか。

教師が安心・安全な環境にいれば、
それは子どもたちにも伝搬します。

結果的に、子どもたちにとって
よい学習環境ができると考えています。

あなたは、安全基地をもっていますか。

20220504 子どもの人生を変える教師の存在_21世紀の教育(2)vol.3398【最幸の人生の贈り方】

システム思考

■社会的複雑性

この世界での関わり合いの中で、
複雑な問題を理解しようとするときに、
立ちはだかるのが第二のレイヤーの複雑性の存在だ。

それは、世界の見え方がそれぞれ異なる、
多様な人たちやグループの存在である。

この社会的な複雑性は、
いつも動的な複雑性とセットで姿を現し、
私たちの感情的な、そして認知的な発達を
迫ってくる。

■システム思考を生きる力にする

●全体像の理解に努める。

●視点を変えて理解を深める。

●メンタルモデルが現状および未来に与える影響を考える

●システムの構造を理解してレバレッジの大きい介入策を見極める。

●システム内の要素の経時的変化と、それを生むパターンや傾向を観察する

●複雑な因果関係の中にある循環的な性質を突き止める。

●問題をじっくり考え、結論を急がない

●システムの構造がその動きを生み出すことを認識する。

●行動の結果を短期・長期の両面から予期しない結果も含めて考える。

●前提を明らかにして、それを検証する。

●意図していなかった結果が、どこに現れるかを見つける。

●結果を検証し、必要なら行動を変える。
(少しずつ目標に近づく)

●原因と結果の関係を探求するときは「時間的な遅れ」のインパクトを認識する。

21世紀の教育

複雑な要因で絡んだ課題を、
単純な思考で解決しようとしても
解決できません。

乱暴すぎます。

根気強く、紐解いていく必要があります。

社会的な構造の問題
ここに至るまでの過程で起こった歴史的背景
関連する人、人たちの抱える課題と世界観
関連する人、人たちの望むこと
地球環境としての資源と制限
経済的活動とその影響
技術的進化とその影響

これらのことが関係しあって、
現状の課題を生み出していて、
それぞれの人には違う世界が映っています。

時間的にも空間的にも広い思考が必要ですし、
信条についても幅広い理解が必要だと考えます。

そして、偏った世界観を生み出しているのは、
いつも自分自身だと気が付くことが
大切だと考えます。

21世紀の教育に必要なのは、
課題を見出す力、
課題の要因を理解する力、
課題解決の方法をあきらめず試す行動力、
価値観が異なる人とのコミュニケーション力、
を身につけることではないかと
考えました。

そんな大人でも難しいことを
子どもたちに教えられるのか。

教えるのではなくて、
同じ時代を生きる人間として、
一緒に学んでいけばよいのだと思います。

地球全体で同じ課題に取り組むことが
できるようになったのが、
ようやく最近ではないでしょうか。

とてもおもしろい時代にいると感じています。

あなたは、複雑な課題に取り組むためにどんな武器をもっていますか。

20220505 システム思考_21世紀の教育(3)vol.3399【最幸の人生の贈り方】

成功する「教え方の原則」

■成功する「教え方の原則」

●生徒にとってのリアリティと、理解のプロセスを尊重する。

●生徒にとって現実感のあるテーマにフォーカスする。

●生徒が自分でモデルをつくり、問題となる状況を理解する独自の方法を組み立て、検証できるように導く。

●他者と共に活動し、共に学ぶ。

●常に、行動と思考の両方に注意を向け続ける。
自分や自分たちの思考だけ変わればよいのではなく、行動や振る舞いが変化することが大切だ。

●生徒が自分の学びに対して当事者性を持てる力を養う。

●生徒が互いの学びを助け合える関係性を促す。

●教師は授業のデザイナーであり、ファシリテーターであり、意思決定者であることを認識する
(カリキュラム内容を届ける役割だけではない)。

そのために、教師は授業内容に関する
確かな知識を持ちつつ、継続的にしっかりと
互いの学びを支え合う教師同士などの
ネットワークを通して、
自分の力を高めていく必要がある

21世紀の教育

自分の思考と行動や振る舞いが、
社会の仕組みに大きな影響を与えるということを
私は大人になってから学びました。

例えば、夏の暑いときに、
暑さをしのぎたいという思考は、
エアコンの冷房をつけたり、
扇風機をつけたり、
海やプールにいったり、
涼しい地域に避暑にいったりするという
行動につながります。

「暑さをしのぎたい」という欲求は、
誰もがもつ普通の欲求です。

しかし、その行動によって、
地球環境に与える影響は変わってきます。

スーパーで野菜を選ぶときに、
見た目で選んだり、価格で選んだりするという思考も
誰もが行うことだと思いますが、
それが、f1種子の普及につながり、
農業の在り方にも影響を与えます。

「痛いのはイヤ」「熱が出るのはイヤ」
という欲求も誰もがもつことでしょう。

鎮痛薬を常用すること、
無痛分娩を選択すること、
解熱剤を使うことは、
体が本来もっている治癒作用や出産の仕組みを
邪魔することにもつながります。

そして、医療のあり方にも影響を与えます。

陰謀論ではなく、
自分たちの思考がまわりの世界をつくっています。

そして、インターネットや物流で
世界が密接につながることにより、
自分たちの思考の世界へ与える影響は
より早く、より大きくなっています。

なぜなら、ビジネスは、消費者の欲求を
いかに汲み取るかということに
やっきになっているからです。

生体センサーから自動的にデータが読み取られ、
本人も気づいていない欲求が、
蓄積されていく時代になっていくでしょう。

そんな世界に生まれて、生きていく子どもたちに
私たちが教えるというよりも、
一緒に気づきを得て、一緒に学び、
そして、一緒に課題に向かっていくということが
私たちに求められているのだと考えています。

あなたは、自分の思考が社会にどのように影響を与えていると考えますか。

20220506 成功する「教え方の原則」_21世紀の教育(4)vol.3400【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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