植物は〈未来〉を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命

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植物は〈未来〉を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命
Plant Revolution: Le piante hanno già inventato il nostro futuro

ステファノ・マンクーゾ(著), 久保耕司(翻訳)
NHK出版 (2018/4/27)

ステファノ・マンクーゾ Stefano Mancuso
イタリア、フィレンツェ大学農学部教授、フィレンツェ農芸学会正会員。フィレンツェ大学付属国際植物ニューロバイオロジー研究所(LINV)の所長を務め、また国際的な「植物の信号と行動学会」( e Society of Plant Signaling & Behavior)の創設者のひとり。本書でも紹介される画期的なプロジェクト「クラゲ形の浮遊船(Jelly Fish Barge)」は、2015 年のミラノ国際博覧会で注目された。これは、水面に浮かんだ組み立て式の温室で、太陽光発電の海水淡水化装置を使って植物を栽培するもの。また、本国イタリアや日本でもベストセラーとなった『植物は〈知性〉をもっている』ほか多数の著作があり、国際誌に250 以上の研究論文が掲載された。La Repubblica 紙で、2012 年の「私たちの生活を変えるにちがいない20 人のイタリア人」のひとりに選ばれている。

久保 耕司 くぼ・こうじ
翻訳家。1967 年生まれ。北海道大学卒。訳書にマンクーゾ『植物は〈知性〉をもっている』(NHK出版)、ザッケローニ『ザッケローニの哲学』(PHP 研究所)、トナーニ『モンド9』、マサーリ『世の終わりの真珠(以上シーライト・パブリッシング)、パラッキーニ『プラダ 選ばれる理由』(実業之日本社)など。

この書籍では、植物の機能を
どうやって今後の宇宙開発などに役に立てるかという視点で
書かれていました。

植物に限らず、他の動物からも
私たちはまだまだ学べることがたくさんあるようです。

私たちとはまったく異なる戦略をとっているけれど、
地球上で繁栄しています。

とても頼もしい同志ですね。

植物と動物の違い

■植物と動物の違い

植物と動物の違いでもっとも重要なちがいは、
〝集中〟と〝分散〟というちがいだ。

動物では各器官に集中している機能が、
植物では全身に分散している。

これこそが動物と植物の根本的なちがいなのだが、
それがどういう結果をもたらすのかを
きちんと理解するのは難しい。

いずれにしても、
これほどまでにちがう構造こそが、
植物と人間がこれほどちがって見える原因の
一つなのだ。

植物は、中心的器官である脳をもたなくても、
動物以上の感度で周囲の環境を知ることができる。

そして、土壌と空気のなかの限られた資源を
手に入れるために、
植物どうしで活発な競争を行なっている。

さらに、環境の状態を正確に把握し、
コストと利益のバランスを抜かりなく分析したうえで、
環境からの刺激に応じて、適切な振る舞いを決定し、
それを実行するのだ。

植物が選んだ道は、動物が選んだ道とはちがう、
もう一つの重要な道である。

植物には、変化を知覚しながら、
新たな解決方法を準備する傾向があり、
このことはとくに注目に値する。

植物は、動物よりもはるかに強い耐久性をもつ
現代的なモデルであり、
堅固さと柔軟さとが結びついた生けるシンボルだ。

植物のもつモジュール構造
〔たくさんの構成要素が機能的にまとまった構造で、
各部分は交換可能〕は、
現代という時代にもっとも必要なものといえるだろう。

植物は、制御センターをもたず、
互いが協力する分散構造をそなえ、
くり返される大災害にも完璧に耐え、
環境の大変動にもすぐさま適応することができる。

植物は〈未来〉を知っている

著者は、植物と動物の大きな違いは、
分散と集中だと書いています。

ですので、念のため、
中心的器官である脳をもたない動物について
調べてみました。
 
クラゲ、イソギンチャク、サンゴなどの刺胞動物
ウニ、ヒトデ、なまこなどの棘皮動物
などがこれに当たるようです。

海にいる動物ばかりですね。

これはこれで、おもしろいです。

脳を持っている動物だけが、
陸上で生き残ったということでしょうか。

不老不死のベニクラゲとか、
五本腕のヒトデとか、
それはそれで興味深い生物なのですが、
陸上の動物は、単細胞などの単純な生物を除けば、
基本的には脳をもっているという理解で
進めようと思います。
(もし、脳をもっていない陸上動物がいたら、教えてください)

あなたは、植物と動物の大きな違いは、何だと考えますか。

20220822 植物は〈未来〉を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命(1)vol.3508【最幸の人生の贈り方】

樹木は集合体である

■樹木は集合体である

植物のあまり知られていない特徴の一つは、
同じものをいくつもそなえているモジュール構造だ。

一本の樹木の体は、
同じユニットのくり返しでできていて、
それがさらに全体的な構造をつくりだし、
樹木がどのような生理機能をもつかを決めている。

「動物の場合は、『分割する』ということが、
概して殺すことを意味するのにたいし、
植物の場合は、ふやすことを意味する」
——フランスの自然科学者ジャン=アンリ・ファーブル

挿し木や接ぎ木による繁殖にもとづいた育苗では、
植物がもつこの特性を最大限に活用している。

さらに、遺伝子の不変性も、
植物界ではあまり好まれない性質らしい。

動物は、どんな大きさでも、
ゲノムがすべての細胞のなかにあり、
生涯にわたって変わらないが、
植物には、このルールはあてはまらないようだ。

果樹栽培の歴史を眺めてみると、
一本の樹木に偶然〝変異した〟枝が生え、
しばしばその枝に実る果実に注目が集まる。

このようにして生まれた変種の果実は数多い。

たとえば、ネクタリンがモモの芽の変異によって
生まれたことは、ほぼまちがいないし、
ワインのブドウ品種の一つピノ・グリは、
ピノ・ノワールの芽の変異から生まれた。

つづいて、もう一つの魅力的な例は、
いわゆる《キメラ》だ。

接ぎ木された部分がいっしょに成長して、
いくつかの異なる特徴をもつようになった
個体のことである。

植物のこうした特殊な性質は、
オレンジやブドウなど、
多くの種類の果樹でよく見かける無数の変種に
はっきりと現れている。

一定の年齢に達した樹木にはどれも、
異なる複数の遺伝子がたやすく見つかる。

ようするに、一つの植物を
一つの〝個体〟とみなすのは難しい。

「一つの植物の節から生えている枝は、
母親の体につながっている個別の幼い植物と
みなすことができる。
この幼い植物は、
母親が地面に固定されているのと同じように、
母親の体の上に固定されているのである」。
——作家、植物学者ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
 
「植物、とくに樹木を見るかぎり、
動物や人間のような単一の個体であるとは
どうしても思えない。
むしろ、複数の個体からなる一つの集合体のように思える」 
——植物学者アレクサンダー・ブラウン

このように、〝植物はコロニーである〟という考え方は、
昔から支持されていた。

そして、コロニーはその構成員より長生きする。

樹木を構成するユニットは短命だが、
コロニー(樹木)自体は、
潜在的に永久に生きつづけることができる。

また、無数にそなわった同一のユニットという概念は、
地上に出ている部分だけではなく、
根系についても当てはまる。

実際、根一本一本にはそれぞれ自律的な
指令センターがそなわっている。

それが根の伸びる方向を操作し、
本物の群れのようにほかの根端と協力して、
一つの植物全体の生命に関わる問題に取り組む。

その分散された知性は、
生活環境のさまざまな問題を効果的に解決する。

植物は〈未来〉を知っている

今まで、樹木を集合体として
とらえたことはなかったのですが、
挿し木や接ぎ木は、これを前提に行われていると
考えれば納得です。

トマトは、脇芽を摘んだり残したりすることで、
主軸を伸ばしたり、2本立てにすることができます。

今年はプラッターで育てているミニトマトの主枝が
うっかり折れてしまうという
事故に見舞われましたが、
脇芽から育った枝で、花と実がつきました。

先日読んだ本には、
樹を移植するときに、根を切ってしまうので、
根が下のほうに伸びず、横に広がるばかりになると
書かれていました。

植物は、芽の先端と根の先端が、
最も重要なようです。

そして、その新芽が出るときに、
遺伝子の突然変異が起きて、
枝変わりが起きるのですね。

芽というのは、遺伝子変異の可能性をもった
新たな個体とみなすのは、
とても興味深い考え方です。

種子としてゼロから始めるよりは、
かなり有利な状態でスタートすることが
できますね。

また、植物型ロボットというのは、
初耳でした。

各種センターと太陽電池とアクチュエーターで、
自律で根を伸ばしていくロボット。

火星探査というと、
地表を走るロボットというイメージでしたが、
まったく別の発想です。

これをたくさんばらまく。

そして、さらに応用されていくと
どんな世界が広がるのでしょうか。

ドローンも平和的な利用で使われるのであればいいのですが、
軍事的な目的で使われるのをみると、
残念にも思います。

結局は、人間の問題とはなります。

あなたは、集合体として樹木から、どんなことを学びますか。

20220823 樹木は集合体である_植物は〈未来〉を知っている(2)vol.3509【最幸の人生の贈り方】

植物は擬態する

■ボキラ

二〇一三年、植物学者エルネスト・ジャノーリは、
チリ南部の森林を静かに散策しているときに、
ボキラ・トリフォリアータを見かけた。

それまでもこの植物には何度も出会っていた。

これといって変わったところはなく、
特徴もよく知っているおなじみの植物だ。

ところが、
おなじみのボキラ・トリフォリアータの葉とはちがい、
それが巻きついている低木のほうの葉に
よく似ていたのだ。

樹木に巻きついているどのボキラも、
見事な擬態能力でそれぞれの〝宿主〟の葉を
まねしていたのだ。

実際、宿主となりうる植物は一種類ではなく、
ボキラはずうずうしくも、
じつにさまざまな葉をそっくりコピーしていた。

ボキラは、自らが巻きついている多くの種を
ただ模倣できるだけではなく、
何度でもそれができるとわかったのだ。

ボキラが二種か三種の異なる植物のそばで成長している場合、
いちばん近くにある種に合わせて、
そのつど自分の葉を修正し、その種に紛れこむことができる。

いいかえれば、ボキラは、何度でも
葉の形や大きさや色を変えることができるのだ。

自分の体の形と大きさと色という三つの要素を
同時に変えられる擬態の例は、
まずまちがいなくほかにないだろう。

植物は〈未来〉を知っている

ボキラ・トリフォリアータについての
日本語の情報はほとんどなく、
英語のWikipediaで見つけました。

Boquila - Wikipedia

発表された論文によると、
擬態の目的は、
ヤドリギのような宿主への寄生ではなく、
草食動物からの保護のようです。

ボキラは、擬態するために
宿主と物理的接触をする必要はなく、
”視覚”で判断しているようです。

著者は、植物性プランクトンのような
単細胞生物にも単眼のような機能が
あることについて、書いています。

植物は、光はエネルギー源として、
とても大切なのですから、
私たちが考えているよりも、
視覚はもっと重要なのかもしれません。

引用には含めなかったのですが、
ライムギは、コムギやオオムギに擬態することで、
まぎれこみ続け、ついには栽培植物としての
地位を獲得したようです。

おもしろいですね。

そして、最近のわたしたちは、
このように作物以外の種を選り分けるために、
除草剤への耐性をつけた遺伝子組み換え作物を
導入することで、対応しているとのこと。

これは、最新の映画『ジュラシックワールド』でも
テーマの一つでした。

また、効率化を求めたため、
食用植物の種はどんどんしぼりこまれていますが、
三種類の植物で、カロリーの60%というのは、
絞り込みすぎではないかという疑問もわきます。

「人類の食の特徴と食と農業の現代的課題」
https://icrea.agr.nagoya-u.ac.jp/jpn/journal/Vol18_2-17-11-Review-Yamane.pdf

狩猟採集民は農耕民よりも一般的に食料として
利用する動植物の種類が多く、
オーストラリアの先住民アボリジニで500種、
北米のインディアンで1100種に及ぶ。

また、その種類は地域によっても時代によっても異なるが、
縄文人では食用以外の動植物も含め
数千を利用して生活していたとされ、
人類全体では植物を中心として
1万種をはるかに超える数の動植物を
食料として利用してきたと言われる。

農耕文化を選んだ時点で、
栽培できる農作物に絞り込まれ、
さらには、高収率の作物が中心になっていくので、
当然の流れではあります。

無肥料無農薬の野菜の宅配を
お願いしていた時期がありますが、
その時には、スーパーでは見たことがなく、
だから調理法も調べないとわからない野菜が
送られてきました。

スーパーでは、大概、顔ぶれの同じ野菜が
並んでいます。

他ならぬ消費者である私たちが、
生産と流通を決めているからです。

つくしとか、ヨモギとか、
自分で採ってきて食べるというのは、
数十年やっていないですね。

改めて、食材の種類の少なさに
気がついた次第です。

あなたは、どれくらいの種類の植物を食べていますか。

20220824 植物は擬態する_植物は〈未来〉を知っている(3)vol.3510【最幸の人生の贈り方】

植物の運動のしくみ

■植物の運動

一般的に植物の運動は、
筋肉のような複雑なタンパク質の組織の働きに
よるものではない。

たいていは〝水力〟運動で、
液体であれ水蒸気であれ、
基本的には植物の体の組織を出たり入ったりする
単純な水の移動によるものだ。

■松かさ

松かさ(針葉樹の生殖組織をふくむ器官で、
学術用語では《strobilus(球果)》)は、
死んだ組織とはまったく思えないような大仕事を
やすやすと行なう。

乾燥した環境では木質の堅い鱗片を開き、
逆に湿度の高いときには閉じるのだ。

二〇一三年、MITのミンミン・マー博士と共同研究者たちは、
外部環境との水分の交換によって、
急速に膨張や縮小を行なうことで
運動を引き起こす高分子フィルムを開発した。

このフィルムを使ったアクチュエーター(駆動器)は、
二七メガパスカルの圧力を生みだし、
自重より三百八十倍重い物体を持ち上げることができる。

さらに、このアクチュエーターを
圧電素子〔振動や圧力を加えると電圧を発生する素子〕に接続すれば、
ピーク電圧が約一ボルトの電力をつくりだせる。

この運動システムはきわめて大きな可能性を秘めており、
いろいろな装置の電力供給にも役立つ。

オランダフウロ

すべての植物がそうだが、
オランダフウロも自分の種子をできるだけ広範囲に
まき散らす必要がある。

そのために母たる植物は、
自分のそばに子どもたち全員を
置いておこうなどとはしない。

逆に、あらゆる戦略を講じて、
子どもたちを遠くに追いやろうとする。

こうした戦略は進化論的に重要で、
多くの正当な理由がある。

最大の理由は、
子どもたちが互いに競い合わないで
すむようにすることだ。

オランダフウロの場合は、
爆発的な運動からスタートする。

まず、多数の種子が身を寄せ合って
バネのように力学的なエネルギーを蓄える。

このエネルギーが増大しつづけ、
虫が軽く触れたり、動物がそばを通りすぎたり、
風が吹いたりして、少しでも力のバランスが崩れると、
ただちにエネルギーが解放され、種子がはじける。

文字どおり種子は〝発射〟され、
数メートルも先まで飛ばされる。

鉤爪のようなもので動物の毛皮にくっつき、
母たる植物から数キロメートル運ばれることもある。

地面に落ちると、新しい冒険のはじまりだ。

種子の長い芒(のぎ:精子の形によく似ている)は、
空中の湿気の影響でねじれ、回転をはじめる。

種子に生える剛毛が移動を手伝って、
地面の小さな穴を見つけると、
頭を下にした体勢をとる。

すると、穴のなかに入った鉤の先端に、
昼と夜の湿度変化が引き起こす芒の回転が加えられ、
推進力を得て、地面にしっかりと突き刺さっていく。

芒が回転するごとに、
種子はさらに地中深く押しこまれていく。

おまけに先端は尖っているので、
芒が右に回転しようが左に回転しようが、
地面に潜りこみやすい。

数日経つと(つまり昼と夜が数回交代したあと)、
種子は何センチもの深さにまで到達し、
発芽してオランダフウロに成長する準備を整える。

植物は〈未来〉を知っている

湿度変化を使うことで、
小さいながらも電力を作り出すことができるのですね。

マイクロエレクトロニクスやナノエレクトロニクスの装置には
十分なようです。

また、衣服や壁紙の繊維にも応用できるとのこと。

私たちが動くたびに電気を作り出して、
皮膚データを取得し続ける、
そんな未来もあるようです。

あらゆるものをデータ化していくのが、
必要かどうかの議論は置いておきます。

また、オランダフウロの種子の運動は、
エネルギーをほとん、もしくはまったく使わずに
地球外の土壌に入り込んで探査する探針の製造の
ヒントになりそうだとのことです。

オランダフウロは、初めて聞いた名前だったのですが、
日本には、江戸時代末期に観賞用としてもちこまれ、
今では日本全国で帰化しているそうです。

種がドリルのように土に穴を開けている動画を
見つけました。

植物凄い!ドリルのように回転する種が、グリグリと地面に穴をあけるセルフオートな「オランダフウロ」 : カラパイア
フウロソウ科の被子植物、オランダフウロ(エロディウム・マネスカウィ)の種はタダの種ではない。小さな細いネジのような形をしていて、発芽するため、この種が自らグリグリと地面に穴をあけ、ちゃっかりと埋まりこんでいくという機能を持っているのだ。

なるほど、これを動力なしでやるのだから、すごいですね。

植物からも運動について、
私たちはまだまだ学べることが
たくさんありますね。

あなたは、身近な植物のどんな運動が気になりますか。

20220825 植物の運動のしくみ_植物は〈未来〉を知っている(4)vol.3511【最幸の人生の贈り方】

動物を操る植物

■アカシアとアリ

植物の多くの種は、蜜を花のなかだけではなく、
枝や芽、葉腋〔植物の茎で、葉の付け根の内側部分のこと〕でも
分泌できる。

好蟻性とは、花外蜜腺を使ってアリを引き寄せ、
そのかわりにほかの虫や捕食者から
身を守るための性質だ。

捕食者から守ってくれるお返しとして、
甘い蜜がアリに提供されるのだ。

アカシアはアリに対して、食べ物、宿泊所、
さらには花の外で分泌する蜜というフリードリンクまで
提供する。

かわりにアリは、
アカシアに害を与える恐れがある動物や植物──
それがどんなに攻撃的な相手でも──
から宿主を守りぬく。

アリがゾウやキリンのような巨大な草食動物に嚙みついて、
木に近づくのを思いとどまるまで
けっして離そうとしないのも珍しいことではない。

アカシアから数メートルの範囲内に生えた植物は、
無慈悲にもアリにぼろぼろにされる。

以前からずっと、
花外蜜腺から分泌される蜜にアリが集まるのは、
その蜜にふくまれる糖分を求めているのだと
考えられてきた。

しかし、蜜は糖だけでできているわけではない。

ほかのさまざまな化学物質、たとえばアルカロイド、
γ‐アミノ酪酸(GABA)のような非タンパク性アミノ酸、
タウリン、β‐アラニンなどもふくまれている。

こうした物質には、
動物の神経系を制御する重要な作用があり、
神経の興奮をコントロールして行動を支配する。

たとえばGABAは、脊椎動物にとっても
アリのような無脊椎動物にとっても、
基本的な抑制性の神経伝達物質だ。

さらに蜜にふくまれているアルカロイドは、
同じアルカロイドの仲間(あるいは類似物質)である
カフェイン、ニコチン、ほかの多くの物質のように、
アリ(または、蜜を摂取して花粉を運ぶ他の昆虫)の認知能力に
影響を及ぼすだけでなく、蜜への依存を引き起こす。

植物は〈未来〉を知っている

アカシアとアリの共生について、知らなかったので、
調べてみました。

「アカシア、樹液でアリを奴隷に変える」

アカシア、樹液でアリを奴隷に変える
互いに利益を得ながら進化してきたアカシアとアリだが、その相利共生の関係(共進化)には、一方を依存状態に追い込む巧妙な戦略が潜んでいたことがわかった。

さらに、仕組みは解明されていないものの、
アカシアの樹液は、
アリのショ糖を分解する酵素を不活性化して、
かわりにその酵素を樹液中に分泌することで、
アカシア以外の糖がとれないようにしているようです。

「好蟻性」という言葉も知らなかったので、
調べてみると、普通は、アリの巣に同居する昆虫などの
生物を指すことのほうが多いようです。

著者は、人間が操られている例として、
トウガラシのカプサイシンをとりあげていました。

私のまわりにはいないですが、
「トウガラシ食らい」という人たちがいて、
食事のときに、ひと口ごとに、
トウガラシをひとかじりしながら、
食べるそうです。

唐辛子の世界生産量の推移のグラフを見つけました。
「唐辛子の世界生産量の推移」
https://urahyoji.com/crops-pepper-w/#toc3

伸びがすごいですね。

世界の唐辛子生産量の41%がインドです。

まあ、長い人類の歴史で見れば、
農耕文化の始まり自体が、
人類が植物の奴隷になった始まりともいえます。

私の場合は、ミニトマトとナスのために、
せっせと手入れをしています。

これは、喜んでやっているので、
今のところ、問題ないと判断しています。

私は今、小麦の奴隷化から逃げようと、
4ヶ月ほど、小麦断ちをしています。

もともと、パンやパスタが大好きだったので、
パンが近くにあると、
いくらでも食べられたのですが、
これは、さすがにおかしい食習慣だろうと
気がつきました。

共生するのは、よいことだと思いますが、
奴隷化されるのは、いやですよね〜〜〜

あなたは、食べずにいられない食べ物、飲まずにいられない飲み物は、ありますか。

20220826 動物を操る植物_植物は〈未来〉を知っている(5)vol.3512【最幸の人生の贈り方】

逃げられない植物の対応策

■植物と動物の構造

植物と動物の構造は、どこがどうちがうのだろう?

もっとも大きなちがいは、
植物は生物の基本的な機能をになう
単一もしくは一対の臓器をもたないという点だ。

地中に根を張った植物にとっては、
捕食者の攻撃を生き延びることが大きな課題となる。

動物とちがい、
〝逃げる〟という行動ができないからだ。

そのため、生き延びる唯一の方法は、
捕食者に対して抵抗すること、つまり、
捕食に屈しないこと。

植物が生きていくには、
明らかな弱点をもたないことが大切だ。

臓器は弱点になる。

一般に植物は、
動物が特定の臓器に集中させている機能を
体じゅうに分散させている。

植物のモットーは、この〝分散化〟にある。

すでに、植物が体じゅうで呼吸して、
体じゅうで見て、
体じゅうで感じて、
体じゅうで計算しているということはわかっている。

どんな機能もできるかぎり分散させること。

それが捕食者の攻撃から生き延びる
唯一の方法なのである。

植物はそのことをとてもよく知っている。

たとえ体の大部分を切りとられても、
身体機能が失われることはなく、
その状態に耐える。

指令センターをもたない分散型のモジュール構造をもち、
各モジュールが協力し合って、
くり返される捕食にも完璧に耐えることができる。

トップダウンで指令を出すのではなく、
〝分散型〟だという点で、
植物はきわめて現代的であるといえよう。

“集中〟は動物のシステムならではの特徴で、
決定のプロセスをよりスピーディーにしてくれる。

多くの場合、動物にとってはスピーディーに
タイミングよく対応することが、
何かと得になる。

植物にとってほんとうに大事なのは、
急いで対応することではなく、
問題が解決できるようにしっかりと対応することだ。

植物は〈未来〉を知っている

この世界で一番堅牢な情報システムは、
インターネットシステムです。

中枢をもたないからです。

世界中にネットワークが広がり、
サーバーの数は、数え切れません。

自分が仕事も含めて、
日常的に管理しているサーバーだけでも6個ですし、
そのサーバーで立ち上げている
インターネットプロセスは、もっともっと多いです。

分散化と拡張が非常にうまくいっている事例といえます。

サーバーも逃げることはできないので、
守る機能は大切です。

常時アクセスを監視していて、
異常なアクセスがあれば、検知できます。

こう考えると、
インターネットシステムは、
とても植物的とも考えられます。

自分視点でものごとを考えるときには、
動物として「逃げる」は、とてもよい対応策です。

一方、地球視点でものごとを考えるときは、
現時点では「逃げる」という選択肢を
とることはできません。

となると、植物に学ぶところが多いのではないかと
改めて思います。

あなたは、どんなところに分散の考え方を活用しますか。

20220827 逃げられない植物の対応策_植物は〈未来〉を知っている(6)vol.3513【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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