伏羲八卦次序
太極
太極が易の本体である。易がまだ動かない前の本体である。大きくいえば、天地開闢以前から天地が滅亡してしまった後までも、厳然として存在しておるところの宇宙の本体である。不生不滅無始無終の絶地唯一の大元気である。陽でもなく陰でもなく、積極でもなく消極でもなく、善でもなく悪でもなく、有でもなく、無でもない。広大無辺なる宇宙から草木昆虫などに至るまでに、易の理は備わっているはずである。これが易の本体であり、これからいろいろな変化が出てくる。これを「易に太極あり」というのである。
陰陽
太極は、天地の開闢以前から天地の滅亡の後まで、一瞬もじっとしておることなく、時々刻々に霊妙に活動している。それが活動すれば、すぐに陰陽の両儀がでてくるのである。陰と陽は別の物ではなく、二つ同時に出てくるのである。陰と陽は表と裏のようなものである。一方へ進むことは、他の一方からいえば退くことになる。太極が動いて陽と陰ができることを、「是れ両儀を生ず」というのである。
四象
世の中のあらゆる現象を二つに分類するとれば、陰と陽の二つに分類することができるのであり、大雑把に分ければそれでもよかろうということになるが、しかし純粋の陽なるもの、純粋の陰なるもののほかに、陰にして陽を含んでおるものもあり、陽にして陰を含んでいるものもある。陽と陰が互いに入り組むことをあらわすために、陰と陽の算木を一本増やし、すなわち二本の算木を用いるときは、四つの変化になるのであり、それを「両儀、四象を生ず」というのである。四つの変化に太陽・少陰・少陽・太陰と名付けてあるが、これは周易の本文にはない。後世につけた名であるので、名の付け方には異説がある。
八卦
四象にもう一つ陰陽の算木を付け加え、すなわち三本の算木を用いると、八つの変化になるのであり、それを、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤といっておる。これが八卦である。それを「四象、八卦を生ず」というのである。
乾☰ けん
乾の卦は天に配当する。乾は純粋の陽である。
「乾は健なり」というのは、乾は純粋の陽であり、極めて剛強であり、常に活動して、息むことなく、疲れることがないので、その性能を健というのである。
坤☷
地は純粋の陰なるものとして坤の卦に配当する。
「坤は順なり」というのは、坤は純粋の陰であり、極めて柔順にして、すべて陽に順うのである。柔順なることが坤の性能である。
艮☶
艮の卦は、下に陰爻が二つ重なっていて、上に陽爻がある。山はだいたいは地であり陰でもって、その表面に陽気を受けて草木などが成長するのであって、艮の卦の形に似ている。そこで山を艮の卦に配当する。
「艮は止まるなり」というのは、艮は一本の陽爻が二本の陰爻の上に止まっているのである。一本の陽爻が頂上まで登ってそこに止まっている形であり、艮の卦の性質はある場所にとどまって動かぬことである。
兌☱
兌の卦は、下に陽爻が二つあって充実しており、上に陰爻が一つあって空虚になっている。沢は下に充実したる土があり、上に穴があって空虚であり、兌の卦の形と似ている。そこで沢を兌の卦に配当する。
艮の山の卦と兌の沢の卦とは、卦の形において正反対であり、表と裏になっている。高い山が一方にできると、必ず他の一方に低い沢ができる。
「兌は説ぶなり」というのは、説は古の悦の字であり、説くなりではなく、説ぶなりであり、兌の卦は一本の陰爻が高く二本の陽爻の上に登って悦んでいるのである。
離☲
離の卦は下と上とが陽で、真ん中に陰がある。陽は明るいのであり、陰は暗いのである。離の卦を火に配当する。日は外部が明るくて、内部に燃えない暗いところがある。
「離は麗くなり」というのは、麗くはつくと読むのであり、離の卦は一本の陰爻が上下二つの陽爻の間にくっついている。離はあるものがある他の物にくっついている意味の卦である。
坎の卦は、比較的善いものが悪いものの中に陥っているのであり、この離の卦は比較的悪いものが善いものの間にくっついているのである。弱いものが強いものの間にくっついているのである。
坎☵
坎の卦は下と上とが陰であり、中が陽である。坎の卦を水に配当する。水は外面は冷ややかであるけれども、内部には熱くなるべきものを持っているところをみたのである。
「坎は陥るなり」というのは、坎の卦は一本の陽爻が上下二つの陰爻の間に陥っているのである。穴の中に陥っている意味である。坎の卦の意味は、川の中とか、穴の中とか、あるいは危険困難なる境遇の中に落ち込んでいるのである。
震☳
震の卦は、二つの陰爻の下に陽爻が一つあって、それが盛んなる勢いで動いて上に昇ろうとするのであり、これを雷に配当する。春のはじめ、あるいはじめじめして鬱陶しい気候の時に、雷が轟いて、陰鬱なる気分を一掃するのである。
「震は動くなり」というのは、震の卦二つの陰爻の下に陽爻が一つあり、この陽爻が盛んに活動して上に昇ろうとするのである。活動することが震の卦の性能である。
巽☴
巽の卦は、上に二つの陽爻があってその下に一つの陰爻が入っている形であり、これを風に配当する。陽は堅く充実しているものであるが、どんな堅く充実したものの中へでも、少しの隙間があれば、風は入り込んで行くのである。
「巽は入るなり」というのは、入ることが巽の卦の性能である。
説卦伝
☱ 兌 | ☶ 艮 | ☲ 離 | ☵ 坎 | ☴ 巽 | ☳ 震 | ☷ 坤 | ☰ 乾 |
沢 | 山 | 火(日) | 水(雨) | 風(木) | 雷 | 地 | 天 |
説 | 止 | 烜 | 潤 | 散 | 動 | 藏 | 君 |
西 | 東北 | 南 | 北 | 東南 | 東 | 西南 | 西北 |
説 | 止 | 麗 | 陥 | 入 | 動 | 順 | 健 |
羊 | 狗 | 雉 | 豕 | 鷄 | 竜 | 牛 | 馬 |
口 | 手 | 目 | 耳 | 股 | 足 | 腹 | 首 |
少女 | 少男 | 中女 | 中男 | 長女 | 長男 | 母 | 父 |
雷以動之。風以散之。雨以潤之。日以烜之。艮以止之。兌以説之。乾以君之。坤以藏之。
乾健也。坤順也。震動也。巽入也。坎陷也。離麗也。艮止也。兌説也。
乾爲馬。坤爲牛。震爲龍。巽爲鷄。坎爲豕。離爲雉。艮爲狗。兌爲羊。
乾爲首。坤爲腹。震爲足。巽爲股。坎爲耳。離爲目。艮爲手。兌爲口。
説卦伝