THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

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THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
Think Again: The Power of Knowing What You Don’t Know 

アダム・グラント(著), 楠木建(監修, 翻訳)
三笠書房 (2022/4/18)

アダム・グラント Adam Grant
ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授。『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、世界でもっとも重要なビジネス思想家50人(「THINKERS 50」)のうち一人に選ばれるなど、受賞歴多数。「グーグル」「ディズニー・ピクサー」「ゴールドマンサックス」「国際連合」などの一流企業や組織で、コンサルティングおよび講演活動も精力的に行なう。デビュー作『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』は31カ国語で翻訳され、全世界で大ベストセラーに。続く『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(以上、三笠書房)も『ニューヨーク・タイムズ』紙でビジネス書の売上第1位、アマゾンUSでも第1位(企業文化)を獲得している。

楠木建 くすのき・けん
一橋ビジネススクール教授。経営学者。
1964年、東京生まれ。専門は競争戦略。
上記のグラント著の監訳等のほか、本格的な経営書として異例の大ヒットとなった『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)をはじめ、『逆・タイムマシン経営論』(日経BP)、『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。

再考ということをテーマに
いろいろな観点で考えることのできる
とてもよい本でした。

ぜひ本著を読んでみてくださいね。

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

■3つの思考モード

二十年前、私の同僚のフィル・テットロックは、
ある奇妙なことを発見した。

多くの場合、私たちの思考様式は、
考えたり、話をしたりする時、
無意識的に三つの職業の思考モード、
すなわち「牧師」「検察官」「政治家」に
切り替わるというのだ。

信念がぐらついている時は牧師の思考モードになり、
理想を守り確固としたものにするために説教する。

他者の推論に矛盾を感じれば、
検察官の思考モードに切り替わり、
相手の間違いを明らかにするために論拠を並べる。

多くの人を味方につけたい時は政治家モードになり、
支持層の是認を獲得するために
キャンペーンやロビー活動を行なう。

そこには、潜在的な危険性がある。というのも、
それらの思考モードでは、
自分の信念を貫くこと、
他者の過ちを指摘すること、
そして多くの支持を獲得することに
没頭するあまり、
自分の見解が間違っているかもしれないなどと
再考しなくなるからだ。

■「科学者」の思考モード

持つべきは、「科学者」の思考モードだ。

科学者の思考的枠組み、つまり、
説教も不正探しも政治活動も行なわない、
全く異なった思考モードを持つということだ。

真実を追求する時、
私たちは科学者の思考モードに入る。

仮説を検証するために実験を行ない、
新しい知識を発見する。

■バイアス

心理学的に言うと、このパターンを生むバイアスは、
少なくとも二種類ある。

一つは、自分が予期するものを見る
「確証バイアス」(confirmation bias)、
もう一つは自分が見たいものを見る
「望ましさバイアス」(desirability bias)だ。

私のお気に入りは、
〝私は偏見にとらわれていない〟バイアスだ。

自分は他者よりも客観的にものごとを見ることができる、
と信じている人がこのバイアスを持つ。

賢明な人ほど、この種の罠にはまりやすい。

頭のいい人ほど、自分の限界に気づかない傾向が強い。

あなたが考えることを得意とするなら、
あなたの考え直す力は人よりも劣る可能性がある。

■再考サイクルと過信サイクル

【過信サイクル】
自尊心

確信

確証バイアス&望ましさバイアス

是認

(自尊心)

【再考サイクル】
謙虚さ

懐疑

好奇心

発見

(謙虚さ)

THINK AGAIN

アダム・グラントの新著です。

思い込みで生死を分ける例として、
森林火災と闘う消防隊員、
ブラックベリーの成功と衰退、
iPhoneの発売
が紹介されています。

消防隊員は、命を守るために、
消防道具を捨てて、走り、
襲ってくる火から自分を守るために、
自分のまわりの草を燃やして
その場にうずくまった人が
生き残ったというエピソードです。

ブラックベリーは、
キーボードにこだわり、
eメールだけにこだわったがゆえに、
iPhoneに勝てなかったというストーリーです。

iPhoneですら、
スティーブ・ジョブズの思い込みを外したからこそ、
成功したと書かれています。

成功すればするほど、
成功パターンにこだわることは、
誰でもやってしまうことです。

しかし、不確実な時代だからこそ、
「再考」が必要だというのが、著者の主張です。

多肢選択式テストで、一度選択した答えを
変えたほうがいいのか、悪いのか。

私たちは、間違った答えに書き直すことが多い、
と聞いたことがあるかもしれません。

しかし、ある三人の心理学者チームが
33件の研究を対象に包括的レビューを行ったところ、
修正された解答の大半は、誤から正に変えられていたことが
判明したそうです。

また、イリノイ州の学生千五百人を対象とした研究では、
書き直した解答の50%が誤から正で、
正から誤への書き直しは25%だったとのこと。

近年の研究では、点数を伸ばすためのカギは、
解答を修正するか否かよりも、
むしろ修正すべきか検討することにある、
ということです。

ダニエル・カーネマンが言うように、
人間の思考は、ファスト&スローでなりたっていて、
ファストの直感的思考にはとても誤りが多い
ということであれば、
再考は大切なスキルになります。

スローな論理的思考は、労力を伴うので、
私たちはふだんあまり使いたがらないため、
意識的に使うようにする必要があります。

〝私は偏見にとらわれていない〟バイアスは、
本当に気をつけないと。

若くて、もっと正義感に富んでいたころは、
「自分が正しい」という信念に満ち満ちていました。

「牧師」「検察官」「政治家」の思考モードに
ほかなりません。

が、本当は、「自分の視点は、一つの見方にすぎない」、
ということに気づいてからは、
「正義感」の価値観の優先順位をずっと下に下げました。

「正義感」の価値観にとらわれると、
対立を生み出してしまうからです。

あなたが持っている、成功パターンは、どんなものがありますか。

20220424 THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す(1)vol.3388【最幸の人生の贈り方】

不安や自己否定の3つのメリット

■謙虚さ

謙虚さとは、自信を控えめに持つことではない。

「謙虚さ」とは、
しっかりした知識や能力、つまり
自分の過ちや不確実さを認識する力を表わしている。

将来の目標に達するのに十分な能力が
備わっていると自信を持ちながら、
そのための正しい手段は何かと
現在の自分に問う謙虚さを持つことは可能だ。

そう、それが最適な自信レベルである。

■不安や自己を否定する感情の三つのメリット

不安や自己を否定する感情は
三つのメリットをもたらすと思われる。

第一に、自分はインポスターだと感じることで、
人はさらに努力する傾向にある。

第二に、インポスターであるような劣等感は、
能率的に仕事をこなそうというモチベーションを
生むことができる。

第三に、インポスターであるような感情は、
学習能力を高める傾向にある。

THINK AGAIN

文章中、ダニング・クルーガー効果について、
書かれていましたが、
以前、ブログにまとめたので、
今回は引用箇所に含めていません。

また、著者は、自信と謙虚さの均衡を見つけるための
「ゴルディロックスの原理」については、
誤ったアプローチだと、否定しています。

「ゴルディロックスの原理」を用いて、
自分自身についての確信と、
自分のやり方についての確信について、
ほどほどのレベルを最適なレベルだと考えるアプローチです。

そうではなくて、
将来の目標に達するのに十分な能力が備わっていると自信を持ちながら、
そのための正しい手段は何かと現在の自分に問う謙虚さを持つこと

最適な自信レベルであると著者は述べています。

また、初心者は、傲慢さを持ちようがないですが、
学習していくうちに、
学習速度を自信が上回るようになり、
このときに傲慢さが生まれるとのことです。

つまり、素人からアマチュアに移行する過程で、
自分のスキルについて
過信するようになってしまうのです。

専門的技術を身につけたと錯覚し、
自分の無能さに気づかなくなるとのこと。

これは、誰もがやってしまう過ちの一つだと
考えます。

ビギナーズラックもこれにあたるのかもしれません。

が、通常は、どこかで自分の無能さに気づくと
思うので、また学習すればいいだけのことです。

著書で紹介されていたのは、この無知の傲慢さのまま、
アイスランドを金融危機の陥れた、
アイスランドの首相の事例でした。

イエスマンの取り巻き連中で、
自尊心や傲慢さがつのり、
批判を受け付けなかったとのです。

まあ、この首相に限らず、
誰もが陥りそうなことでもあります。

年をとることの効用の一つは、
自分がばかげた失敗をしたことがある、
と知っていることだと考えます。

自分が正しいと思っていることが、
いつでも正しいとは限らないと考えることが
できるようになることを、
経験や歴史から学べるからです。

「自分は絶対できる」
「自分はできないとおかしい」
と、絶大な自信をもつよりも、

「自分にできてもおかしくない、だったらやってみよう」
くらいの、肩に力が入っていないほうが、
自分を追い込まなくてもいいし、
プロセスを楽しめるのではないかと
私は考えています。

あなたは、自分のやり方にどれくらいの自信をもっていますか。

20220425 不安や自己否定の3つのメリット_THINK AGAIN(2)vol.3389【最幸の人生の贈り方】

「自分の間違い」を発見する喜び

■2種類の切り離し

私は調べるうちに、二種類のデタッチメントが
とりわけ有益だとわかった。

一つは、現在の自分を過去の自分から分離すること。

もう一つは、自分の意見や考えを
自分のアイデンティティから分離することだ。

まずは一つ目のデタッチメント、
「過去の自分と現在の自分を分離させること」
から見てみよう。

ある研究によると、
過去の自分が別人のように思えた人は、
その後の一年間、憂うつになることが
少なかったという。

人は、人生の転機を察する時、
変わりゆく自分を実感する時、
過去の愚かな考えに背を向けやすくなるものだ。

私の場合、過去の自分は、
知ったかぶりやのミスター・ファクトだ。

そして、現在の自分は、
知らないことを見つけたがる、知りたがりや。

二つ目のデタッチメントは、
「自分の意見や考えを
自分のアイデンティティから分離すること」

自分は誰なのか、アイデンティティを問う時、
あなたの信念ではなく、価値観に基づいて
自分を定義するべきだ。

価値観とは、人生の中核となる原理である。

それは優秀で寛容であることかもしれないし、
自由で公正であることかもしれない。

THINK AGAIN

「現在の自分を過去の自分から分離すること」

「自分の意見や考えを
自分のアイデンティティから分離すること」

の2つを行うことで、自己否定することなく、
自分の間違いを潔く認め、
他の人に共有することができるようになると
考えます。

自分自身を否定するのは、
誰にとってもつらいことです。

しかし、「所詮、過去の自分は過去の自分」
と切り離してしまえば、
過去の自分の間違いを
現在の自分が認めることができるようになります。

「自分の意見や考えを
自分のアイデンティティから分離すること」のコツは、
いろいろな視点や価値観があることを
知っておくことが大切かなと思います。

この見方を身につけるために、
私が使っているのが、易経であり、占いです。

占いを占うために使うのではなく、
いろいろな見方を知るために使うのです。

例えば、西洋占星術では、
12星座を2区分、3区分、
4区分に分けます。

2区分は、男性星座、女性星座。
3区分は、活動宮、固定宮、柔軟宮。
4区分は、火、土、風、水。

それぞれ、物事を判断するときに、
大切にするものが違うし、
判断した結果の行動も違います。

どれが正しい、というわけではなく、
どんな価値観を大切にするかということです。

春夏秋冬理論でも、生まれの季節によって、
眺め方が変わります。

冬の季節(実際の季節ではなく、
春夏秋冬理論の季節)に生まれたならば、
見通しのよい大地が広がっている、
先を見通すことができる季節に生まれたので、
先を見通すことができて当たり前だという
感覚をもっていてもおかしくないでしょう。

春に生まれたならば、
どんどん草木が生長していく季節です。
しかし、ほったらかしにしておくと、
うまく育ちません。

水を与え、肥料を与え、間引きをし、
雑草を引っこ抜く。

そんなふうに目配りをする
コミュニケーション力にすぐれた人に
なる可能性が高いです。

夏に生まれたならば、
どんどん繁る草木に、
タイムリーに対処する必要があります。

とすると、実行力が大切です。

秋に生まれたならば、
何もしなくても、果実が目の前にあります。

あくせくする必要があるでしょうか。
それよりもじっくりと目の前のことを
味わうほうが大切です。

どれが正しいってことではないと思います。

易経は、場のパターンが64種類。
さらに、その中での立場が6種類。

同じ場にあったとしても、
立場によって、とるべき行動は変わってきます。

このようなものの見方を知っていると、
自分の見方にこだわることが
あまり意味がないことのように思えます。

それよりも、全体としてよい結果を
引き出すためには、
どうしたらよいかという視点を
もつことができるようになると
考えています。

そうなると、自分が思ってもみなかった視点を
見つけたときに、おもしろがることができます。

俄然、人生や世の中が楽しくなりますね。

あなたは、どんなばかげた過去の体験をもっていますか。

20220426 「自分の間違い」を発見する喜び_THINK AGAIN(3)vol.3390【最幸の人生の贈り方】

「一流の交渉人」の交渉術の5つのポイント

■「相手を圧倒する」よりはるかに大事なこと

他者の考え方を変えたい時、
自分の考え方を変えることを拒否していては、
一歩も先に進まない。

まずはこちらがオープンな姿勢を示し、
自分の主張の問題点や相手の主張の一部を
認めてみよう。

そして、相手はどの点を
考え直す意思があるのか尋ねてみれば、
こちらが食わせ者でないことを
わかってもらえるだろう。

他者に再考を促すには、
説得力ある議論をするだけではなく、
議論するための正しい動機があることを
明確に示さなくてはならない。

THINK AGAIN

私は、優れた交渉人ではないので、
交渉について、反省することは多々あります。

こういう表現がよかったのではないか。
こんな根拠をあげてもよかったのではないか。
こんな条件をつければよかったのではないか。

まあ、起こったことは取り戻せないので、
別の機会に生かすしかないのですが。

今回の内容は、とても勉強になりました。

まずは、落とし所をきちんと決めておき、
そこに至るステップを考えておくこと。

論拠は、強固なものだけ少数に絞り込むこと。

攻撃や反撃はしないこと。

交渉相手への関心を示し、
質問を投げかけること。

状況やプロセスについての自分の感情を伝え、
相手の感情をよりよく理解するために
問いを発すること。

これらの交渉術はとても有効ですね。

論拠が多ければいいというのは、
素人考えでしたね。

強固な論拠のみで議論したほうが、
よいということです。

大切なのは、常に全体観をもっているということですね。

これは、訓練あるのみ、でしょうか。

あなたは、交渉するときに、どんな準備をしていますか。

20220427 「一流の交渉人」の交渉術の5つのポイント_THINK AGAIN(4)vol.3391【最幸の人生の贈り方】

「白」と「黒」とそれ以外

■「バイナリー・バイアス」(二元バイアス)

バイナリー・バイアスとは、
複雑に連関した事象を
二つのカテゴリーに分けることで単純化し、
明確性、認知的閉鎖(問題に対して確固たる答えを求め、
曖昧さを嫌う欲求)を手に入れようとする
人間の基本的な傾向である。

バイナリー・バイアスのこうした
好ましくない傾向への対処法は、
「複雑化」である。

つまり、何かのテーマについて検討する際には、
多種多様な観点を提示するのだ。

人は、強い関心を集める論争点について、
黒か白かの両極端の議論をしている時に、
話し合いは進歩していると思い込みがちだ。

しかし実際のところ、
人はさまざまなプリズムを通して
そうした論題を検討する時に、
もう少し再考してみようという気になるものだ。

建設的な討論を行ない、
理に適った解決法を見出すカギは、
単純化や分極化する傾向を抑えることである。

THINK AGAIN

あまりに多くの判断軸があると、
複雑すぎて、思考が停止しまう傾向にあります。

ですので、コンサルタントが常用するのは、
適当な判断軸を2つほど選んで、
その軸で白か黒を決めて、
全体として4象限で、分類して、
対応策を決めていく思考法です。

これはこれで、わかりやすくてよいのですが、
実際のところ、物事はそう単純ではない
ということを忘れないのがよいかと思います。

でないと、いつも思考が白か黒かの二分法に
なってしまいます。

本当は、純白から漆黒の間には、
薄い灰色から濃い灰色まであるものですし、
赤みがかっていたり、青みがかっていたり、
あるいは点滅していたり、
色がくるくる変わっていることもあります。

それをばさっと、白か黒で
判断することが難しいことのほうが
実際は多いと思うのですが、
あいまいさを嫌うがゆえに、
人間の特性として、バイナリー・バイアスが
あるということです。

これが、分断を生み出す原因だと考えます。

記事の見出しとしては、
どちらかに寄せたほうが、キャッチーです。

キャッチーな見出しのほうが、拡散します。

それがゆえに入ってくる情報が増えるほど、
複雑な視点が形成されるのではなく、
偏った見方に収束していくというのは、
ありそうなことです。

そして、一度起こった感情にしがみつくのではなく、
自己の感情を「下書き」や「たたき台」のように
処理するというのは、大切な習慣かもしれません。

あなたが行動するためによく用いる、判断の軸はどんなものがありますか。

20220428 「白」と「黒」とそれ以外_THINK AGAIN(5)vol.3392【最幸の人生の贈り方】

よい教育者と偉大な教育者

■自分を評価する vs 自分の作品を評価する

●自分を評価する

アイディアが浮かぶ

僕はすごいぞ

草案をつくる

僕は文章を書くのが世界一下手だ

諦めよう

草案を捨てる

●自分の作品を評価する

アイディアが浮かぶ

これはすごいぞ

草案をつくる

この草案は世界で一番下手だ

書き直そう

草案はよくなった

■よい教育者と偉大な教育者

よい教育者とは「新たな思想、見解」を
教えてくれる人であるが、
偉大な教育者とは「新しい考え方」を
教えてくれる人だと私は信じている。

教師から得た知識があれば、
その日の課題を解決できるかもしれない。

だが、教師の思考法を理解すれば、
人生の苦難を乗り切るための知恵が備わる。

つまるところ、知識を頭の中に詰め込むだけが、
教育ではない。

教育というのは、私たちが生涯にわたり
草案を何度も描き直す習慣を築くこと、
そして生涯にわたり学び続ける能力を培うことなのだ。

THINK AGAIN

引用箇所に含めなかったのですが、
講義形式とアクティブ・ラーニング形式の
教授法を比較している実験が紹介されていました。

著者の予想と異なり、
学生から評価されるのは、講義形式のほうだとのこと。

一方、成績が良いのは、
アクティブ・ラーニング形式のほうだそうです。

また、学校で優秀な成績を収めた人ほど、
古い思考方法をマスターする必要があるため、
社会に出てからは、既成システムの一部になり、
正しさにこだわり、
保守的な考えや慣行を再考しない、
ということも書かれていました。

成功パターンで成功している間は、
変えるためのモチベーションは出ないものです。

今までのやり方ではうまくいかない、
と思うからこそ、
新しいパターンに挑戦する意欲がでてきます。

あなたは、知識をどのように、書き直していますか。

20220429 よい教育者と偉大な教育者_THINK AGAIN(6)vol.3393【最幸の人生の贈り方】

「学びの文化」をもつ組織に必要な2つのこと

■組織で学びの文化を醸成するために

私はNASAとゲイツ財団で研究を行ない、
組織変革のアドバイザーを務めてから、
学びの文化を醸成するには、
「心理的安全性」(不安を感じることなく
問題や自分の意思を伝えられる状態)と
「アカウンタビリティ」(説明責任)
という組み合わせが必要である、
ということに気づいた。

■「プロセス・アカウンタビリティ」と「心理的安全性」

「プロセス・アカウンタビリティ」と「心理的安全性」は
対極にあるかのように思えるが、
実際は独立して共存している。

エイミー・エドモンドソンによれば、
心理的安全性があっても説明責任がない場合、
人はコンフォートゾーン(ストレスや不安のない状態、
安全地帯)に留まりがちだという。

一方で、説明責任があっても心理的安全性がない場合、
人は不安ゾーンの中で口を閉ざしたままになりやすい。

これら二つが共存する場合、
学習ゾーンが形成される。

こうすると人は、躊躇することなく
新しいことを試すようになるし、
改善を図るための建設的な批判を
お互いに行なえるようにもなる。

「挑戦的なネットワーク」ができるのだ。

学びを止めない文化では、
人々はスコアをつけることをやめない。

つまり、常に評価を下している。

「決断の結果」だけでなく
「決断のプロセス」についても考慮に入れて評価する。

「確証があれば、やる」という姿勢は進化を妨げる。

だからこそ、アマゾンのような企業が
「Disagree and Commit」(異議は唱えるが、
決定がなされたら全面的にコミットする)ことを
原則にしている。

THINK AGAIN

私は長年、成果主義の組織にいましたし、
システムエンジニアという職種は、
ベストプラクティスをシステムに落とし込むのが
仕事でした。

お客様の業務を分析して、
ベストプラクティスが滞りなく行われるように
システムを設計することが求められます。

ですので、自分自身の仕事も、
まずはベストプラクティスを作り出し、
その後それを型として、
いかに楽に確実に進めらるようにするか、
意識しています。

そして、自分自身のコントロールの下にあるものは、
自分の判断で、どんどん改善していけます。

そう考えると、ベストプラクティスよりも
ベタープラクティスという言葉のほうが
しっくりきます。
いい言葉ですね。

そして、もうそれ以上、改善できなくなったものが、
ベストプラクティスです。

こうなると、その仕事が自分の手元にあるよりも、
他人の手元にあったほうが、
改善の可能性があがります。

ですので、私は、そういった仕事は、
積極的に手放すことにしています。

もっとこうしたほうがよいというアイデアを出せる人と
仕事がセットのほうが、
スムーズにいくからです。

そして、手放すことによって、
私は、自分の力で改善できる新しい仕事に
取り組めることになります。

これが、私と仕事にとって、
幸せなサイクルではないかと思います。

組織で行っているときは、
自分たちの力だけでは、改善できなくなったら、
新しいメンバーに入ってもらうか、
専門家のアドバイスをいれるか、
が手っ取り早いですね。

あなたの組織は、学びの文化をもっていますか。

20220430 「学びの文化」をもつ組織に必要な2つのこと_THINK AGAIN(7)vol.3394【最幸の人生の贈り方】

「大きくなったら何になりたいか」と子どもに尋ねない

■立場固定バイアスとグリット

一つの目標のために全力で打ち込んでいるが、
それがうまく進まない時、
私たちは直感的に「考え直さない」ことが多い。

そのかわりに倍賭けし、
より多くの資金や労力を投入する傾向にある。

このパターンは「立場固定」といわれ、
心理的バイアスの一つだ。

そうなる要因は、一つには埋没コストがあるが、
最大の要因は経済的なものではなく、
心理的なものである。

立場固定に陥るのは、
人間というものがなんでも合理化しようとする
生き物だからだ。

人は絶えず自分の信念を正当化する理由を探す。

回避可能である失敗を回避できないのは、
立場固定バイアスによるところが大きい。

だが、もう一つ大きな原因がある。

それは皮肉にも、
私たちが成功の原動力と崇めている資質――
「根性(グリット〈GRIT〉)」だ。

根性は情熱と忍耐の掛け合わせであり、
人を長期的な目標に向かって突き動かす
エンジンの一部であることは、
研究でも明らかになっている。

ところが、再考という観点から見ると、
根性はマイナスの資質になりかねない。

「英雄的な粘り強さ」と「愚かな頑固さ」は、紙一重だ。

時として、最も価値ある根性とは、
歯を食いしばって撤退することである。

■アイデンティティ・フォークロージャー
(アイデンティティの早期完了)

心理学ではフォークロージャーとは、
若年期に十分な知識や経験がないままに自己感を確立し、
その他のアイデンティティについて
考えようとしなくなる状態をいう。

職業の選択において、
アイデンティティ・フォークロージャーは、
「大きくなったら何になる?」という、
大人が子どもに投げかける質問が
きっかけになることが多い。

この質問を浴びせられることによって、
将来の職業はこうだ、
自分はこうなるべきだといった
固定的なマインドセットを生む。

「これは大人が子どもに問いかける中でも
最も無益な質問だ」とミシェル・オバマは記している。

「大人になったら何になる?
まるで成長することには限りがあるかのように聞こえる。
まるで、何かになることが最終目的だとでも言っているよう」

「職業を選ぶ」のは、
「ソウルメイト(魂の伴侶)を見つける」こととは違う。

理想の仕事はまだ、
創造されていない可能性だってあるのだ。

THINK AGAIN

私は、親子フューチャーマッピングや、
ユメカキノートで、多くの子供たちに、
どんな未来をつくりたいか、
質問してきました。

また、自分の子どもにも、
「大きくなったら何になりたいか」
という質問を投げかけてきました。

それがよかったのか、悪かったのか。

活躍しているスポーツ選手の
小学校の作文を見ると、
「大リーグの選手になる!」
と宣言していることも多く、
それはそれで素晴らしいと思います。

しかし、そのかげには、
同じように宣言したものの、
夢を叶えられなかった人はそれ以上に多いでしょうし、
さっさと夢を変えた人も多いでしょう。

どうなんでしょう?

私が3歳のときに聞かれて書いた将来の夢は、
「お嫁さん」と「ピアノの先生」だったかと。

一つの夢は25年後に叶えて、
一つの夢は10年後に放棄されました。

小学校のときになりたかった職業は、
弁護士だったかと。

これは、早々と放棄しました。

そのあとは、物理学者でしょうか。

これも大学時代に放棄。
論文を書くことに、
楽しさを見出せなかったからです。

そして、実際に選んだのは、システムエンジニア。

実は、就職活動を始めてから、知ったこの職種。

何をする仕事かわからないので、
就職活動のときに、どんな仕事をするのか、
聞いてまわりました。

結果、自分にはそこそこ合っていたようで、
楽しく仕事をさせていただきました。

しかし、同時に、その職種で一流になっている自分も
想像できず、キャリアパスを考えるたびに
悩んでいたようにも思います。

管理職をやってみたり、
スタッフをやってみたり、
営業をやってみたり、
いろいろ挑戦させてくれる会社は
ありがたかったですね。

最終的は人事を選びましたが、
3年やらないと一人前にはなれないと言われ、
3年やったところで、会社人生をやめました。

独立してからも、いろいろなことをやってみました。

「今、何をやっているのか?」と聞かれても、
一言で説明することはできません。

やっていることを対価で評価するのか、
労力で評価するのか、
価値で評価するのか、
やりがいで評価するのか、、、

私は、「大きくなったら何になりたいか」と
子どもに聞いてもいいと思います。

夢がころころ変わっても、
2歳から変わらなくても、いいと思います。

二十歳で確信をもって、
三十歳で後悔してもいいではないですか。

私のように、48歳で考え直すことも
アリだと思います。

定年退職を迎えてから、
新しい人生を始めてもよいと思います。

何か違うなあと思ったときに、
その違和感を自分で拾い上げることが
大切だと考えています。

あなたは、大きくなったらどんな大人になりたいと考えていましたか。

20220501 「大きくなったら何になりたいか」と子どもに尋ねない_THINK AGAIN(8)vol.3395【最幸の人生の贈り方】

幸福を最重要視する人は、うつ病になりやすい

■幸福の追求

人は自分の人生のあり方を考える時、
幸福になることを最優先させるだろう。

しかし、幸福を追求すると、
下手をすると不幸を招きかねない。

心理学者によると、人は多くの場合、
幸せを重視すればするほど、
今の生活にいっそう不満を覚えるという。

この傾向は、
ふだんから幸せを重視する人たちにおいても、
無作為に選ばれて「幸せがなぜ重要なのか」と
考えさせられた人たちにおいても見られた。

さらには、幸福を最重要視する人は、
うつ病になりやすいことが研究で
明らかになっている。

一つの可能性として考えられるのは、
人は幸せを探し求める時、
人生を評価することばかりに気を取られて、
人生を味わっていないことだ。

一瞬一瞬の喜びを噛みしめるかわりに、
なぜ自分の人生はもっと楽しくならないのかと
思いあぐねる。

二つ目の要因は、おそらく、
「最高の幸せ」を目指して努力することに
時間を使いすぎていることにあるだろう。

そのため、ポジティブな感情を
「どれだけ強く感じるか」ではなく、
「どれだけ頻繁に感じるか」に幸せの度合いは比例する、
という事実を見落としているのだ。

そして三つ目の考え得る要因は、
人は幸福を追求する時、
「目的意識」をなおざりにして
「喜び」を過度に重視することだ。

研究から得られたデータによると、
目的意識を持つことは、
幸せを追い求めるよりも健全であるという。

そして、仕事に意味や意義を探す人は、
仕事に成功や満足を求める人よりも、
情熱的に働くことができ、
仕事を辞めることが少ないという。

仕事における楽しみや喜びは、
その時々で増減するものだが、
意味や意義はずっと続くものだ。

そして四つ目の説は、
幸福は個人レベルの感情であるという欧米の概念が、
孤独感を生み出す可能性を示しているというものだ。

集団主義である東洋文化では、
これとは逆のパターンが見られる。

東洋では幸福の追求はウェルビーイング、
すなわち心身と社会的な健康をもたらすとされる。

人々は個人的な活動よりも
社会的な関わりを優先するからだ。

THINK AGAIN

「人は多くの場合、幸せを重視すればするほど、
今の生活にいっそう不満を覚えるという。」
という研究はこちら。

Iris B. Mauss et al., “Can Seeking Happiness Make People Unhappy? Paradoxical Effects of Valuing Happiness,” Emotion 11 (2011): 807–15.

幸福は、幸福の重要な要素である。
したがって、幸福を重視することが有益な結果をもたらすと期待するのは妥当なことである。しかし、我々は、必ずしもそうではないことを主張する。
なぜなら、幸福を大切にすればするほど、人々は失望を感じる可能性が高くなるからである。このことは、特に、人々が幸せになる理由が十分にあるようなポジティブな状況において当てはまるはずである。
この仮説は、2つの研究によって裏付けられている。
研究1では、女性参加者は、幸福を高く評価する人(低く評価する人)ほど、人生のストレスが低くても高くなくても幸福度が低いことが報告された。
研究2では、対照群と比較して、実験的に幸福を重視するように誘導された女性参加者は、悲しい感情誘導ではなく、嬉しい感情誘導に対して、あまりポジティブな反応を示さなかった。
この効果は、参加者の自分自身の感情に対する失望感によって媒介された。
したがって、逆説的ではあるが、幸福を重視することは、幸福に手が届きそうなときに、幸福感を低下させることにつながるかもしれない。

「幸福を最重要視する人は、うつ病になりやすい」
という研究はこちら。

Brett Q. Ford et al., “Desperately Seeking Happiness: Valuing Happiness Is Associated with Symptoms and Diagnosis of Depression,” Journal of Social and Clinical Psychology 33 (2014): 890–905.

文化は、人々が感じたり、感じたいと思ったりする感情を形作ります。
西洋文化では、幸福は多くの人が感じたいと思う感情です。
幸福を経験することは幸福感や心理的健康の増加と関連するが、最近の証拠によれば、極度に幸福を感じたいと思うこと、すなわち幸福を高く評価することは、幸福感の低下をもたらすとされている。
このような幸福の価値付けの効果が臨床的なアウトカムに及ぶかどうかを検討するために、我々は、うつ病が幸福の価値付けと関連しているという仮説を検証した。
そのために、2つの米国人サンプルにおいて、幸福感の重視とうつ病の関係を検討した。
仮説の通り、大うつ病性障害(MDD)が寛解したコミュニティサンプルでは、社会的望ましさと神経症でコントロールしても、幸せを大切にすることが抑うつ症状の増加と関連していた(研究1)。
さらに、現在の抑うつ症状、一般的な感情の評価、極端な目標追求を制御した場合でも、幸福を大切にすることは、寛解したMDDサンプル(対健常対照者)において上昇した(研究2)。
これらの知見を総合すると、文化的に広く浸透している幸福の達成に対する価値観が、うつ病の症状や診断の危険因子となり得ることが示唆される。
さらに言えば、文化的アプローチによって臨床現象の理解を深めることができることを示唆している。

いずれもアメリカ人を対象にしていて、
著者も文化的要素が大きいと書いているので、
これらの研究の結果が、日本人にそのまま
あてはまるかどうかは、わかりませんが、
備忘録として、載せておきました。

さて、
ポジティブな感情を
「どれだけ強く感じるか」ではなく、
「どれだけ頻繁に感じるか」に幸せの度合いは比例する、
という記述はそのとおりだと思います。

大きな幸せを人生で1回だけ味わうよりも、
毎日ちょこちょこと小さな幸せを味わうほうが
ずっと幸せな人生を送ることができます。

だから、小さな幸せをちょこちょこ味わえるように
人生を設計してしまえばいいのです。

この方法を私は、アンソニー・ロビンズに教わり、
先日の勉強会でも共有しました。

自分が大切にしたい価値観を洗い出して、
優先順位をつけ、最も大切な価値観から順に、
どんなことをしたら、
その価値観が味わえるか、
自分でルールを設定し、
日常に適用するだけのことです。

反対に、避けたい価値観も洗い出して、
こちらは逆にどんなひどい状況ではないと
この価値観を味わえないと、
同じくルールを設定するとともに、
救出方法も定義しておきます。

これで、自分が味わいたい感情を
頻繁に味わえるようになるのです。

庭があったら、野菜を植えることができて、
幸せになるのになあ、、、

ではなくて、樺沢先生いわく、
100円の豆苗を栽培するだけで、
何度もお金をかけることなく、楽しめるのです。

◯◯がないと幸せになれない、
ではなく、
今ここに生きていることそのものが幸せ
にしてしまえばいいのです。

環境を変えることなく、
自分の考え方を変えるだけで、
今すぐ幸せになることができます。

あなたは、どんなことが起きれば、幸せを感じることができますか。

20220502 幸福を最重要視する人は、うつ病になりやすい_THINK AGAIN(9)vol.3396【最幸の人生の贈り方】

この記事は、メルマガ記事から一部抜粋し、構成しています。

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