53.風山漸(ふうさんぜん) ䷴

易経
この記事は約6分で読めます。

風山漸(ふうさんぜん) すすむ

序卦伝

物不可以終止。故受之以漸。漸者進也。
物は以て終に止まるべからず。故にこれを受くるに漸を以てす。漸とは進むなり。
ものはもってついにとまるべからず。ゆえにこれをうくるにぜんをもってす。ぜんとはすすむなり。

物はすべて最後まで止まっているわけにはいかない。だから、艮の卦を漸の卦で受ける。漸とは進むという意味である。

漸、女歸吉。利貞。

漸、女歸吉。利貞。
漸は、女の帰ぐに吉なり。貞しきに利ろし。
ぜんは、じょのとつぐにきちなり。ただしきによろし。

娘が嫁ぐのによろしい。男女ともに正しければ、利があるであろう。

彖曰、漸之進也。女歸吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛得中也。止而巽、動不窮也。
彖に曰く、漸の進むや、女の帰ぐに吉なり。進んで位を得たり。往けば功有るなり。進むに正を以てす。以て邦を正す可きなり。其の位、剛にして中を得るなり。止まりて巽う。動きて窮まらざるなり。
たんにいわく、ぜんのすすむや、じょのとつぐにきちなり。すすんでくらいをえたり。ゆけばこうあるなり。すすむにせいをもってす。もってくにをただすべきなり。そのくらい、ごうにしてちゅうをうるなり。とどまりてしたがう。うごいてきわまらざるなり。

彖伝によると、漸という卦は「進む」という卦だが、漸進的にそろそろとした進み方は、娘が嫁ぐ場合にもっとも吉である。陰陽不正の爻が、進んで正しい位を得た。これは前進すれば手柄があるということである。さらに正しい道をもって前進をする。これこそ、国を正すべき道である。この卦の中心になる九五という爻は、陽爻が陽位であって、しかも上半分の真ん中、つまり中庸を得ている。この卦の下半分が止まる、上半分が巽うという意味である。謙遜の徳をもっているがゆえに、動いて窮まることがない。

象伝

象曰、山上有木漸。君子以居賢徳。善[風]俗。
象に曰く、山の上に木あるは漸なり。君子以て賢徳を居き、風俗を善くす。
しょうにいわく、やまのうえにきあるはぜんなり。くんしもってけんとくをおき、ふうぞくをよくす。

この卦は山の上に木がある。木がだんだんと成長するにつれて、山もだんだん高くなるわけである。故に漸と名付ける。君子はこの卦に象って少しずつすぐれた徳を蓄え、それでもってだんだんと風俗を善くする。

風山漸

初六。鴻漸于干。小子厲厲。有言无咎。

初六。鴻漸于干。小子厲。有言无咎。
初六。鴻干に漸む。小子は厲うし。言あれども咎无し。
しょりく。こうみぎわにすすむ。しょうしはあやうし。ことあれどもとがなし。

水鳥が水際に進んだ。無知なる小人はあやうい。上から小言をくらうことがある。しかしながら、小人においてはよくあること、道義において咎はない。

象伝

象曰、小子之、義无咎也。
象に曰く、小子の厲うき、義咎なきなり。
しょうにいわく、しょうしのあやうき、ぎとがなきなり。

初六は漸む卦の一番初め、一番下の爻、下の方で始めて進むものである。初六のおずおずした歩みは、道義的には咎がない。

六二。鴻漸于磐。飲食衎衎。吉。

六二。鴻漸于磐。飲食衎衎。吉。
六二。鴻磐に漸む。飲食衎衎たり。吉。
りくじ。こういわおにすすむ。いんしょくかんかんたり。きち。

水鳥が固い岩のところまで進んだ。君子は和やかに飲食して楽しむ。結果は吉。

象伝

象曰、飲食衎衎、不素飽也。
象に曰く、飲食衎衎たるは、素しく飽かざるなり。
しょうにいわく、いんしょくかんかんたるは、むなしくあかざるなり。

六二は柔順、「中正」、上に九五の「応」がある。故に盤石といい、楽しく飲食するイメージである。五から禄を賜って楽しく飲食するのであるが、二は素餐しているわけではない。

九三。鴻漸于陸。夫征不復、婦孕不育。凶。利禦寇。

九三。鴻漸于陸。夫征不復、婦孕不育。凶。利禦寇。
九三。鴻陸に漸む。夫征きて復らず、婦孕んで育われず。凶。寇を禦ぐに利ろし。
きゅうさん。こうりくにすすむ。おっとゆきてかえらず。ふはらんでやしなわれず。きょう。あだをふせぐによろし。

水鳥が平原のところまで進んだ。夫は出征して帰ってこない。妻は孕んだけれども子どもが育たない。凶。敵を防ぐのに精一杯である。

象伝

象曰、夫征不復、離羣醜也。婦孕不育、失其道也。利用禦寇、順相保也。
象に曰く、夫征きて復らざるは、群醜を離るるなり。婦孕んで育われざるは、その道を失するなり。用て寇を禦ぐに利ろしとは、順んで相い保ればなり。
しょうにいわく、おっとゆきてかえらざるは、ぐんしゅうをはなるるなり。つまはらんでやしなわれざるは、そのみちをしっするなり。もってあだをふせぐによろしとは、つつしんであいまもればなり。

九三は上に「応」がない。そこで道ならぬ相手、六四の陰と親しむ。夫は三を指す。六四と親しめば、内卦の同類すなわち初と二を離れることになる。婦が孕んで子を取り上げないのは、不義によって産んだ子だから。寇を禦ぐに利ろしとは、戒慎してとりでを作って守ればふせげること。

六四。鴻漸于木。或得其桷。无咎。

六四。鴻漸于木。或得其桷。无咎。
六四。鴻木に漸む。あるいはその桷を得。咎无し。
りくし。こうきにすすむ。あるいはそのすみきをう。とがなし。

水鳥が木まで進んだ。横枝に止まることもできる。それならば咎はない。

象伝

象曰、或得其桷、順以巽也。
象に曰く、あるいはその桷を得、順にして以て巽なればなり。
しょうにいわく、あるいはそのたるきをう、じゅんにしてもってそんなればなり。

順以て巽、六四は陰で柔順、そして、巽の一部、巽は従う。おとなしく人に従う徳があるからこそ、桷を得ることもある。

九五。鴻漸于陵。婦三歳不孕。終莫之勝。吉。

九五。鴻漸于陵。婦三歳不孕。終莫之勝。吉。
九五。鴻陵に漸む。婦三歳まで孕まず。終に之に勝つこと莫し。吉。
きゅうご。こうりょうにすすむ。ふさんさいまではらまず。ついにこれにかつことなし。きち。

水鳥が高い丘に進んだ。妻は三年経っても孕まない。つまり夫婦の間を邪魔する者がおる。しかし、邪魔する者もついに勝つことはできない。最後は吉。

象伝

象曰、終莫之勝吉。得所願也。
象に曰く、終にこれに勝つなく、吉なるは、願うところを得るなり。
しょうにいわく、ついにこれにかつなくきちなるは、ねがうところをうるなり。

九五の「応」は六二である。しかし、中間に九三と六四が邪魔をしている。しかし五と二はともに「中正」で正当の配偶である。邪は正に勝たない。三と四はついに五に打ち勝つことはない。五は素願を果たして二と合うことを得よう。

上九。鴻漸于陸、其羽可用爲儀。吉。

上九。鴻漸于(陸)[逵]、其羽可用爲儀。吉。
上九。鴻逵に漸む。其の羽をもって儀と爲す可し。吉。
じょうきゅう。こうきにすすむ。そのはねをもってぎとなすべし。きち。

水鳥が、天上の雲の通い路まで上った。その落とした羽根は、儀式の飾りとするに足る。結果は吉。

象伝

象曰、其羽可用爲儀吉、不可亂也。
象に曰く、その羽用て儀となすべく吉なるは、乱るべからざるなり。
しょうにいわく、そのはねもってぎとなすべくきちなるは、みだるべからざるなり。

鴻は天空に翔け入って帰ってこないが、その落とした羽は、それでもって儀式の飾りとすることができる。同様に五の志尊の位をも超越し、俗界の外に飛び出した、孤高の隠者は、この社会に全く無用の存在のようだが、その高潔な態度、もって人の儀表とするに足る。その志が乱すべからざるものだということ。

▼▼最幸で豊かな人生を自分にもまわりにも贈ろう!▼▼
メールマガジンご登録【最幸の人生の贈り方】

朝日 一惠 【最幸の人生の贈り方】メールマガジンは、毎朝届きます。
◇────────────────◇ 
「最幸で豊かな人生を自分にもまわりにも贈ろう!」

「誰もがやりがいのある仕事で、生涯現役で働き、
みんなが豊かで幸せになる社会を創る!」  

「子どもたちがわくわくと大人になることを 楽しむ社会にする!」
◇────────────────◇  

2013年1月の発行以来一日も休むことなく配信しています。
無料で購読できます。
配信したメールから解除もできます。

易経
知恵の森
タイトルとURLをコピーしました