「正義と悪」という幻想
天外伺朗(著)
内外出版社 (2022/7/30)
天外伺朗 てんげ・しろう
工学博士(東北大学)、名誉博士(エジンバラ大学)。
1964年、東京工業大学電子工学科卒業後、42年間ソニーに勤務。上席常務を経て、ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス 研究所(株)所長兼社長などを歴任。
現在、「ホロトロピック・ネットワーク」を主宰、医療改革や教育改革に携わり、瞑想や断食を指導。
また「天外塾」という企業経営者のためのセミナーを開いている。
さらに2014年より「社員の幸せ、働きがい、社会貢献を大切にする企業」を発掘し、表彰するための「ホワイト企業大賞」も主宰している。
著書に『「ティール時代」の子育ての秘密』『「人類の目覚め」へのガイドブック』『実存的変容』『ザ・メンタルモデル』(由佐美加子・共著)『自然経営』(武井浩三・共著)『幸福学×経営学』(小森谷浩志・前野隆司・共著)『人間性尊重型 大家族主義経営』(西泰宏・共著)『無分別智医療の時代へ』『「自己否定感」』『「融和力」』(いずれも小社刊)など多数。
2021年の夏、これからの生き方や在り方、暮らし方をみんなで学ぶオンラインサロン「salon de TENGE」をスタートした。
この本では、3つの詩が紹介されています。
5音+12音x30行の365音=1年で構成された詩です。
5音と7音は、日本人にとって、
耳になじんだリズムであり、
とても優しく感じます。
「正義と悪」
「武力行使」
「平和への祈り」
これくらい、やさしく語りかけることが
平和につながると私は感じました。
「正義と悪」という幻想
■「正義と悪」のパターンにはまる
本書では、何が真実かという判断は
一切保留し、議論いたしません。人類はとても長いあいだ、
「武力行使」が当たり前な社会を営んできました。人類の集合的無意識が「宇宙の流れ」を
つくっています。いまの社会ではたして「武力行使」が通用するか、
「宇宙の流れ」がサポートするか、
という一点に絞って筆を進めます。■モンスターとペルソナ
何らかの理由で「こうあってはいけない」と
表にだせない要素を心理学では「シャドー」と呼び、
抑圧すると巨大化することから、
本書では「モンスター」と呼ぶことにします。それに対して、私たちは「こうあるべきだ」
というポジティブな要素も必ず抱えています。心理学では「こうあるべきだ」という自分のイメージを
「ペルソナ(仮面)」と呼んでいます。ほとんどの人は心のなかに
「こうあるべきだ」というポジティブ・フィルターと、
「こうあってはいけない」というネガティブ・フィルターを
両方抱えており、
それを通してしか外界は見えません。■幻想と生身の人間
「正義と悪」のパターン化は
モンスターとペルソナが投影された幻想です。プーチンは、のっぴきならない理由で
「武力行使」に走ったわけで、
私とは価値観や倫理観が違いますが
「悪の権化」ではなく、生身の人間です。ゼレンスキーは、亡命の誘いを断って踏みとどまり、
各国の議会で演説そして国際世論を喚起するなど、
「侵略防衛の英雄」かもしれませんが、
「正義のヒーロー」ではなく、
ましてや「悪の権化」でもない、
生身の人間でしょう。■人生の推進力:「戦う力」と「融和力」
「戦う力」というのは、
文字通り敵に戦いを挑む力だけでなく、
頑張る力、努力する力、向上する意欲などを表します。それに対して「融和力」というのは、
その人がいるおかげで、
意見・信念・好みなどが違う様々な人たちが、
いがみ合うことなく、仲良く、
共に過ごすことができる、
などの状況を示す表現です。2022年2月24日にロシアが突然ウクライナに侵攻して、
世界中の人々がびっくりしましたが、
第二次世界大戦以前なら、
これほどはびっくりしなかったんじゃないですかね?その間、人類社会は進化しており、
全般的には武力行使が人々のあいだで
是認されなくなってきたのでしょう。その社会の進化を支えているのが、
「平和の守り手」の人数の増加です。つまり、個人として「戦士」から
「平和の守り手」へと変容していくのが
進化の方向性だし、
それが社会の進化を支えています。■「武力行使」は「正義」の仮面をつけて
ドロドロした現実のなかで、
言い訳として使える「正義の旗」は容易に見つかります。相手の「悪」の要素を暴き立て、
自分たちはその「悪」を殲滅する「正義のヒーロー」だ、
というストーリーを捏造すればいいだけです。ロシア側は、スターリン時代の血も凍るような施策のために、
ソ連傘下だった多くの国の国民の気持ちが
反ロシアに傾いてしまったことは
口をつぐんで言わないし、
ウクライナ側はウクライナ・ナチス時代に
多くのユダヤ人・ロシア人を虐殺してしまったこと、
その実行犯たちの伝統を引き継ぐネオナチを
2014年のクーデターで利用してしまったことは言いません。■「融和力」を発揮する「平和の守り手」
人類のなかで
「平和の守り手」の比率が増えてくると、
「武力行使」が宇宙にサポートされなくなる、
人類の意識の進化により、
「宇宙の流れ」が変わってくる、
ということです。人々の意識の成長・発達、あるいは人類全体の意識の進化に関しては、
ケン・ウイルバー、ロバート・キーガン、クレア・グレイブス、
フレデリック・ラルーなどが深く探求してきました。それぞれの説は多少の食い違いはありますが、
「正義と悪」という幻想
本書で「実存的変容」と呼んでいるステップの重要性に関しては、
皆さん一致しております。
人々の意識の成長・発達については、
以下のブログ記事でまとめています。
ケン・ウイルバーの「インテグラル心理学」
https://forestofwisdom.net/integral-psycology/
「人間の発達の八つの段階」(スパイラル・ダイナミクス)
https://forestofwisdom.net/8-spiral-dynamics/
「人間の発達の八つの段階を成長していく方法」
https://forestofwisdom.net/growing-8-stages-of-spiral-dynamics/
「アブラハム・マズロー Abraham Maslow 超まとめ」
https://forestofwisdom.net/abraham-maslow/
この本は、ウクライナの戦乱に対して、
祈るかわりに、まとめたということです。
長い年月、人類社会は「武力行使」を容認してきたけれども
第二次世界大戦前後では大きく変わったように見受けられる。ベトナム戦争は結果的にアメリカは敗退し、
ベトナムは共産主義国家になったので、
「武力行使」は通用しなかった。400万人以上がなくなり、
フランス軍時代から数えると
20年にわたる悲惨な戦争が続いた。アフガニスタン戦争は、
1978年にソ連が侵攻し、12年後に撤退。アメリカがソ連を追い出すために
トレーニングしたビン・ラーディンが
反米の中心人物になり、
2001年の同時多発テロを受けて、
アフガニスタンに侵攻したが、
2021年に撤退。ソ連もアメリカも「武力行使」が通用しなかった。
社会の進化と共に「武力行使」が宇宙にサポートされなくなるということは、
結果が出るのに要する時間がどんどん短くなる、という意味である。「武力行使が」通用しないということは、
ロシアにとって不本意な結果に終わる、という予想であり、
それが何年かかるかが社会の進化を占うひとつの指標になる。西側の肩をもっている、とは誤解しないでほしい。
「武力行使」という物理的な現象に対して、
客観的に、中立敵に、それが宇宙に受け入れられるか、どうか、
ということを論じているだけです。
というのが、著者の見方です。
この対立が20年も続くのは、
国際社会の誰もが望んでいないように思うのですが、
どうなんでしょうか。
いずれもゆたかな農産物や鉱物を算出する土地であり、
戦争の地から離れた、世界各地で大きな影響を受けています。
「正しい」「悪い」を論じていると、
いつまでも収束しないのは、明らかです。
もちろん、歴史的経緯をひもとくと、
お互いに納得できない状況があるのも事実です。
とはいえ、外部から戦うための武器を
供給するのもいかがなものかなあと思うわけです。
戦争を応援しつづける限り、
私たちの物価にも跳ね返ってくるので、
自業自得といえば、そうかもしれません。
この本では、3つの詩が紹介されています。
5音+12音x30行の365音=1年で構成された詩です。
5音と7音は、日本人にとって、
耳になじんだリズムであり、
とても優しく感じます。
「正義と悪」
「武力行使」
「平和への祈り」
これくらい、やさしく語りかけることが
平和につながると私は感じました。
あなたが、「こうあるべきだ」「こうあってはいけない」と信じていることは何ですか。
20220929 「正義と悪」という幻想vol.3546【最幸の人生の贈り方】